”鷲の目”を持つ車

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ローデ・シュワルツの測定ソリューションが自動運転バージョンで果たす役割

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Updated on 5月 11, 2023 🛈
Originally published on 1月 09, 2020

ドイツ車は、自律型を目指しています。この取り組みは、ハイテクファンと自動車マニアを沸き立たせています。ローデ・シュワルツの専用ソリューションは、安全な自動運転の実現を支援します。

エレクトロモビリティー、コネクティビティー、自動運転が、この分野のメガトレンドです。自動車業界は、抜本的な改革を推し進めています。これまでも、一部の企業は従来の自動車工学に疑問を呈してきました。例えば、Tesla社の競合であるZoox社は、自動化技術を最初に開発して、それを中心に自動車を開発しています。未来の自動車の新しいメタファー(概念)は、既に生み出されています。例えば、車輪付きスマホ(スマホ化した自動車)、くつろげるテックドリーム(完全自動運転によるリラックス空間)、ローリングマネージャー(ローリング挙動制御型)、モバイル・チルアウトラウンジ(車輪付き安らぎラウンジ)などがあります。

明日のモビリティーの活性化

運転者のいない自動車は、私たちの日常生活を変える未来の技術とデジタル化が進む世界を象徴しています。コネクテッドカーと自動運転の進化により、高い道路安全性と利便性の大幅な向上が約束されます。しかし、自動運転車を信頼することは、多くの人々にとって大きな一歩です。

コネクテッドカーと自動運転の進化により、高い道路安全性と利便性の大幅な向上が約束されます。

ロボットカーまでの道のり

自動運転には、運転支援、部分自動運転、条件付自動運転、高度自動運転、完全自動運転の5つのレベルが定義されています。部分的な運転自動化システム(レベル2)は、すでに存在しています。条件付きの運転自動化システム(レベル3)は、連続生産に備えて開発が進められています。

まさに、カウントダウンは始まっています。世界中の企業が開発に巨額を投じ、リアルでもバーチャルでも数百万kmのテスト運転を実施しています。市場投入が、2025年なのか2030年なのか2035年なのかはわかりませんが、最初のロボットカーの市場投入を目指し、企業は熾烈な競合市場でしのぎを削っています。

ローデ・シュワルツの自動車産業市場担当のVPであるJürgen Meyerは、次のように述べています。「自動運転の時代が到来しますが、一部の人々が思っているほどすぐではありません。信頼できる法的枠組みがまだ整っていません。例えば、一部の機能は米国では許可されていますが欧州ではまだです。解決しなければならない技術課題がまだ多くあります。

自動車業界のあらゆるトレンドに対応するソリューション 自動車に組み込まれるRF規格、レーダー、高速データバスの数が増えるとともに、不要な電子的エミッションが仕様限界内にあり、車が外部の干渉源からの影響を受けないことの確認が、自動車メーカーにとってますます重要な課題になっています。

自動車業界のあらゆるトレンドに対応するソリューション

異なる無線技術(レーダー、Wi-Fi、Bluetooth®、V2X通信、緊急通報など)の複雑な相互作用には、拡張的なテストが必要になります。ローデ・シュワルツは、これらのテストソリューションを提供することで、事故を起こさない自動運転の実現を支援します。「弊社のポートフォリオは、完全に自動車業界のニーズに合わせて構築されています。レーダーセンサ、車載イーサネット規格の準拠、EMIプリコンプライアンス、EMCコンフォーマンス用のソリューションに関して、弊社は市場のリーダーとして位置づけられています」とMeyerは述べています。「弊社は、無線波を放射して通信するあらゆるものをサポートします。こうした支援は、自動車分野で明らかに成長している領域です」。

ライダー、カメラ、超音波のような別のセンサと一緒に、レーダーは、現在の先進運転支援システム(ADAS)で重要な役割を担っています。車載用レーダーは、自動車の目として機能します。それらはすでに数百万も製造されていて、最上位モデルの自動車では標準搭載機器になっています。レーダーは、霧や雪によって妨害されません。姿勢、分離、距離、速度の測定により、クリティカルな状況の予測と、事故の回避が可能になります。

センサを通して観測する環境

車両1台当たりのレーダーセンサの数は、自動化のレベルに伴って増加します。条件付自動運転には、その要件として厳しい技術的水準が求められます。最新システムはマイクロ波領域で動作して、検出物の距離、速度、相対角度を特定して、1分の移動でも検知します。帯域幅を超える性能は、さらに広い帯域幅しかありません。次世代の車載用レーダーセンサは、4 GHzの信号帯域幅で動作します。Meyerは次のように強調しています。「この領域にはまだ多くの開発する余地があります。高い周波数と広い帯域幅。それがまさしく私たちの強みです」。

例えば、R&S®QAR レドームテスタは、カバー裏に隠れたレーダーセンサの信号品質を解析する独自テストソリューションです。美学的な観点から、レーダーは通常、レドームやバンパーの裏に取り付けられます。R&S®QARは、隠れたレーダーセンサが適正に動作するかどうかをテストします。わずか数秒の測定で、直観的に解釈できるミリ波イメージが提供されます。非常にシンプルなイメージが命を救うことになります。なぜなら、レーダーパワーの減衰が大きいと、レーダーがターゲットを検出できる最大距離が短縮し、これによりエラーと悪影響が生じる可能性があるからです。

QAR innovation award screen
QARの原理を1分で説明

自動運転?間違いなく!

自動運転技術は、身体障がい者や遅い反応時間もサポートします。Jürgen Meyerが述べています。「私の父が良い例です。ある年齢を超えると、いつも後ろを見ないでバック方向に運転していました。超音波センサとリアビューカメラによって、安全を維持できたのです」。

エンジニア、事故研究者、保険数理士が、自動運転により道路安全性が大幅に向上することを保証しています。事故被害者の人数を減らすために、セーフティーシステムの義務化が2022年に開始されます。新しい規制は、無人運転の未来への道を開くことを目的にしています。

それまでの間、一部の革新的な企業がすでに先を見越して、人を運搬する電気ドローン型の自動飛行機を考案しています。最終的に、自動飛行機が自動運転車に置き換わるのでしょうか?

Andreas von Lösecke
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自動運転車に相当の技術を盛り込むほど、環境を正しく認識することがより重要になります。

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Andreas von Lösecke, Product Manager Imaging Products at Rohde & Schwarz

Interview: Andreas von Lösecke, Product Manager Imaging Products at Rohde & Schwarz

R&S®QAR:自動運転による安全性の向上

レーダー技術は、高度な自動運転に欠かせないものです。レーダーは通常、バンパー、デザインエンブレムなどのプラスチック部品の裏に隠れています。デザインは、新しいモデルが市場で好発進を切れるかどうかの決め手になる要素です。デザイン面での考慮に関係なく車載用レーダーセンサが間違いのない結果を検知するには、レーダー信号が、センサをカバーしている部品やレドームの材料を通過できる必要があります。ローデ・シュワルツのイメージング製品のプロダクトマネージャーであるAndreas von Löseckeは、業界における現在の課題、R&S®QAR(レドームテスト用の独自ソリューション)を含む、ローデ・シュワルツのテストソリューションについて次のように述べています。

レドームの適切なテストがそれほどまでに重要な理由

自動車業界では、レドームテストの重要性に対する認識が急速に高まっています。テストでは、レドームとそのカバーが、レーダーの機能を妨害しないことを確認する必要があります。なぜなら、自動運転車に相当の技術を盛り込むほど、環境を正しく認識することがより重要になるからです。これは特に、安全性に関して言えることです。人間の視界と同様に、レーダーは眼鏡のようなもので、特定の事象を観測できるようにします。レドームの品質により、どの程度、眼鏡がクリーンなのか、どの程度クリアに均一に環境を認知できるのかが決まります。

ローデ・シュワルツのテストソリューションがレドームの品質を確認する原理

R&S®QARは、空間分解されたレーダー反射とレドーム透過度のミリ波イメージを作成して、材料の不均一性を可視化します。R&S®QARによる測定は、わずか数秒しかかかりません。そして、非常に正確です。伝統的な量産テスト方法とは異なり、この測定はゴールデン・レーダー・デバイスから独立しており、必要なスペースも、複数のアングルリフレクターを使用する従来のセットアップと比べてはるかに小さくて済みます。

先の眼鏡にたとえると、あらゆる場所で透過度が等しい必要があります。R&S®QARの目的は、これを保証することです。この均一性が実現されないと、歪みが発生して、レーダーは何も存在しない場所でも物体を検出してしまいます。その結果、ダウンストリーム機能が誤ってトリガされ、例えば、必要のない緊急ブレーキが車両で作動する可能性があります。R&S®QARにより、メーカーはこのような状況を回避できます。

出力結果

弊社のレドームテストの結果は、反射に関するデータと伝送に関するデータに分かれます。反射は空間分解されています。これは、R&S®QAR独自の機能です。これにより、レドームに関して何らかの異常がある位置を容易に把握できます。原因を直接表示することはできませんが、多く場合、レドームメーカーは、製造中に限界による問題が発生した時にこの情報を活用できます。

既に製造中のものについて、R&S®QARはすべてのレーダーの適切な取り付け、校正、動作を確認できます。さらに弊社は、メーカーから入手した車両のCADデータを評価できるように、測定器のイメージング機能を拡張しました。これにより、R&S®QARで取得した画像(実際のデータ)と、CAD図面の公称データを比較できます。その後、レーダーが適正な位置に取り付けられているかどうか、また、損傷しているものがあるかどうかを確認できます。製造において、これを自動車修理工場と同じ方法で使用できます。

R&S®QPS セキュリティースキャナーの技術に基づくR&S®QAR技術。R&S®QARとR&S®QPSの相違点

明らかに、セキュリティースキャナーのアプリケーションはまったく異なります。その技術は、未知の衣類を身につけた未知の人間のスキャン済みイメージで未知の潜在的危険性がある物体(武器、爆発物など)を探索するニューラルネットワークに基づいています。一方、R&S®QARの目的は、反射と均一性の定性的評価を行うことです。これは、レドームテストに関する課題が異なることを意味します。しかし、当然ながら、セキュリティースキャナーで集積した経験から得られたベネフィットを多く活用しています。

自動運転の多くの領域で採用されているR&S®QAR。未来の市場の予測について。

当初、本技術は、高価になる見込みで、物流分野やモビリティー・サービス・プロバイダーと強い関連を持つだろうと予測されていました。自動運転が民間部門で確立される状況を注視しながら、さらに調整を進める必要があります。弊社では、多くの自動運転が使用されるほど、多くのセンサ(すなわち多くのレーダーやレドーム)が必要になるものと考えています。実際、10~15個のレーダーが高度に自動化された車両には搭載され、その多くは、レドーム、バンパー、フロント/リアエプロンの裏に隠れています。このようなデバイスとカバーのすべてを製造でテストする必要があります。

完全に機能するレーダーを実現するために必要なその他のテスト

弊社は、レーダー開発プロセスのあらゆる段階をサポートしています。レーダーチップ開発から、レーダーとレドーム間の干渉イミュニティー特性評価まで、弊社は、R&S®FSW(スペクトラム・アナライザ)、R&S®RTP(オシロスコープ)、信号発生器を含む、さまざまなテストソリューションをご用意しています。例えば、最近、間接遠方界測定用の革新的なテストチャンバーを発売しました。これは、車載用レーダーセンサのテストに対応するものです。さらに、あらゆる可能性をテストして実現可能な最高のレーダーをバンパー裏に取り付けて、これを本来の形でテストすることもできます。ローデ・シュワルツは、あらゆるケースで最適な測定手法を提供できます。

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