コネクテッドカーの時代がやってくる

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コネクテッドカーの時代がやってくる

安全に、効率的に、そして快適に目的地に到着

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Updated on 6月 28, 2023 🛈
Originally published on 1月 13, 2022

コネクテッドカーの時代がやってきます。最初は、主に中国のメガシティに。ただし欧州や米国でも、5Gモバイル通信の導入と並行して、そこから派生する車両コネクティビティ向けのC-V2X規格が、間もなく確立される予定です。この分野の主要な企業は、ローデ・シュワルツの電子計測ソリューションを、自動運転車の安全かつ効率的な路上走行を実現するために活用しています。

コネクテッドカーの時代がやってきます。最初は、主に中国のメガシティに。ただし欧州や米国でも、5Gモバイル通信の導入と並行して、そこから派生する車両コネクティビティ向けのC-V2X規格が、間もなく確立される予定です。この分野の主要な企業は、ローデ・シュワルツの電子計測ソリューションを、自動運転車の安全かつ効率的な路上走行を実現するために活用しています。

ラッシュアワーの上海。合流点での譲り合いなど、まず見られません。ここでのモットーは、「警笛を鳴らして、アクセルを踏め」です。ブレーキを踏む側になったら、警笛を鳴らし返す。それだけです。交差点の真ん中でバックして方向転換する車も 見られます。さらに、あらゆる隙間を音もなくすり抜けていく無数の電動スクーターに衝突しないで済むかどうかは、完全に運任せです。電動スクーターだけでなく、電動バンさえも、当然のような顔で歩道を走っていきます。「道路の安全性はあまりにも低すぎます」と語るのは、ミュンヘンの経営コンサルタントで、上海財経大学の卒業生であるJulian Schneider氏です。同氏によると、特に危険なのは、歩行者が車からひっきりなしに警笛を鳴らされながら交差点を渡っている場合、例え歩行者用信号が青であっても安全とは言えないことです。というのは、右折車は信号が赤であっても通れることになっているからです(これは、カナダ、オーストラリア、米国でも同じです)。その結果、 ここでの交通事故による死者数は世界最悪です。そのことは、世界保健機関(WHO)の2018年の最新データを見ればわかります。

中国のメガシティ:自動車革命の活発な実験場

ただし、中国政府はこの状況に対して宣戦を布告しました。その取り組みに関しては、国の技術力の強化に役立つ手法が特に重視されています。例えば、西洋諸国ではまだ図面の上にしか存在しないスマートシティが、中国ではすでに実現し始めています。この概念は、2011年の第12次五カ年計画ですでに言及されていましたが、以後の計画期間中に「新スマートシティ」という呼称の下に大幅に強化されています。2015年に始まった「中国製造2025」政策で、中国は、ロボティクス、人工知能、電気自動車のイノベーション分野で世界のリーダーになることを目指しています。

コネクテッドカーと自動運転による交通は、これらの計画にぴったりとあてはまります。中国のスタートアップ企業は、将来の自動車交通のパイオニアの役割を果たします。中国の大都市の混沌とした状況が、これらの企業にとっては格好の活躍の場なのです。2016年の設立ながら、すでに業界大手となったロボタクシー企業Pony.aiのCEOであるJames Peng氏は、中国での課題は特に難度が高いと考えています。この地域の予測できない状況による経験は、自動運転の先進地である米国での経験よりもさらに価値があり、意味のあるデータが得られると同氏は述べています。Pony.aiは、中国南部ですでに自動運転車による公道上での大規模なフィールドテストを始めています。Baidu、AutoX、DiDi Xungkingといったその他の現地企業も、同様の取り組みを行っています。事情通によれば、2023年から2025年までに、大規模なビジネスへの脱皮が起こりそうです。2030年までには、この世界最大の市場で、何百万台ものロボタクシーが道路を走っているでしょう。この発展にとって有利なのは、中国人の約4人に1人しか運転免許を持っておらず、多くの人は近い将来に自家用車を購入できる見込みがないという事実です。

この土地で無事に走行できる自動運転車なら、世界のどこへ行っても大丈夫でしょう。中国のメガシティは、現地のロボタクシー先進企業にとって、V2Xのワーストケースシナリオを試すテストラボの役割を果たします。これらの先進企業のビジネスアイデアをあらゆる場所で実現するとともに、最も重要な安全性を保証するには、オートモーティブ・テストソリューションが必要です。それを提供しているのが、ローデ・シュワルツです。

パイオニアは米国

もちろん、自動車革命が始まった場所は米国です。2014年に登場したGoogleの丸っこくてかわいい自動運転車が、この分野の未来を示しました。2015年には、公道上で初めてドライバーが運転しない走行が行われています。Googleと、2017年に設立されたその姉妹会社Waymoは、現在でも最も多くのテスト距離数と最も高度なソフトウェアを有し、自動運転に関するベンチマークとみなされています。一方で、十数社の米国企業と、いくつかの中国企業は、有利な規制条件(特にカリフォルニア)を活かして、独自のフィールドテストを行っています。カリフォルニアでは、ロボタクシーの商業利用がすでに法制化されているだけでなく、いくつかの事業者はすでにセーフティドライバーが同乗しない運行の承認を受けています。走行中に発生した問題は、管制センターからのリモート制御によって修正されます。

Googleの姉妹会社であるWaymoは、公道上ですでに自動運転車を走らせている米国と中国の数多くの企業のうちの1つです。最初の商用ロボタクシーの運行が今後数年以内に始まる予定です。

事情が異なる欧州

欧州には、米国や中国のようなスタートアップ企業が見当たりません。欧州での取り組みは、自動車業界自体の開発サービス、大手IT企業との共同ベンチャー、あるいはドイツなどの場合、公共交通のファーストマイル/ラストマイルとして用いられる自動シャトルや自動乗客輸送システムのローカルプロジェクトが主体です。実はドイツは、2021年7月4日に、世界で初めてレベル4までの自動運転を認める全国的な法律を制定した国です。これにより、自動タクシーもドイツの道路を走行できるようになります。レンタカー会社のSixtは、早くも2022年にミュンヘンでロボタクシー事業を始める計画を発表しました。これには、Intelの子会社Mobileyeによるテクノロジーが用いられる予定です。ただし、これにはセーフティドライバーが同乗する必要があります。

Jürgen Meyer
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コネクテッド自動運転というアイデアは、世界中で加速度的に発展しています。これからの車は、”車輪の付いたスマートフォン”にますます近づいていくでしょう。目標は、すべての人にとって道路交通の安全性を向上させることです。ただしそのためには、コネクテッドカー内部の非常に小さい空間に詰め込まれたテクノロジーが、高い信頼性で動作する必要があります。あらゆる時、あらゆる場所でです。それを可能にするのが、革新的な電子計測ソリューションです。車が路上に出るまでに、すべての機能が徹底的にテストされるのです。

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ローデ・シュワルツ、副社長兼自動車産業担当ディレクター、Jürgen Meyer

完全自動運転は必ずしも最適でない

将来の自動車交通に関するあらゆるレポートには、電気自動車や自動運転といった流行語が踊っています。ただし、これらの重要なテクノロジー要素はたまたま同じ時期に発展しているものの、実はそれぞれ独立のテクノロジーです。自動車産業は、これら2つのテクノロジーを同時に開発するための膨大な作業に直面しています。これは最大規模のメーカーにとっても困難な課題です。

Waymo、Argo AI、Baiduといった業界外部からの新規参入者たちが、そのナビゲーションシステムによって従来の自動車メーカーに圧力をかけている中で、自動車メーカーは、従属的立場に陥るのを避けるための対抗策と同時に、電気自動車プラットフォームへの移行作業にも取り組まなければなりません。それに加えて、自動車開発の中で電子技術が占める割合は急速に拡大しつつあります。ますます高度化する運転支援システムによって、安全性と自動運転のレベルが向上しています。一方、完全な自動運転(レベル5)は、いつかは可能になるでしょうが、現実の目標ではありません。その代わりに大きな目標として注目を集めつつあるのが、C-ITS(Cooperative Intelligent Transportation System)と呼ばれるものです。

このビジョンは、より高い立場から交通について考えることで、交通安全(「ビジョンゼロ」、すなわち2050年に交通事故死をほぼ0にするという目標)と交通の効率性の両方を、技術的手段によって最大化するというものです。ただしそのためには、自動車同士だけでなく、自動車と周囲のインフラや交通管制センターとの間の通信が必要になります。5Gモバイル通信はその基盤となります。

モバイルエコシステムの要素としての自動車

テクノロジーに関する話題の通例として、自動車の通信に関しては、きらびやかなキーワードが飛び交っています。V2X(Vehicle-to-Everything)は、V2V(Vehicle-to-Vehicle)、V2I(Vehicle-to-Infrastructure)、V2N(Vehicle-to-Network)、V2P(Vehicle-to-Pedestrian)のすべてを統合する上位概念です。将来の自動車は、A地点からB地点までできるかぎり安全、迅速、快適に移動するために、これらの相手と常に通信し合うことになります。この仕組みが実現するまでには、まだ開発/調整作業や投資が必要です。ただし、適切な無線システムという最も重要な前提条件はすでに満たされています。それが5Gです。今必要なのは、このテクノロジーを自動車に組み込むことです。

V2X animation

ビデオ

スマートシティに不可欠な要素:無線でネットワークにつながれた車が、インフラや他の道路利用者と通信します。自動運転モードでは、すべての信号が自動的に処理されます。ローデ・シュワルツのモバイル無線ネットワークシミュレーターを使えば、自動車が実世界に出るよりずっと前に、テストフィールド内でこのようなV2Xシナリオを体験させることができます。

よりよいドライバー

交通の複雑性と予測不可能性を考えれば、人間はかなり優れたドライバーであると言えます。ただし、いくつかの領域ではすでにテクノロジーが人間を超えつつあります。将来の自動車は、カメラ/レーダー/ライダーセンサであらゆる方向を監視し、道路に関する知識を持ち、高い応答性を備え、常に油断せず、疲れを感じずに運転できるようになります。これに無線通信が加われば、離れた場所の状況に関する情報を、自動車のガイダンスで考慮できるようになります。人間のドライバーは、支援なしではこのような情報を得られません。

すべてが実現した世界:モデルドライブ

夜の間に私たちの車はモバイル通信によって最新のソフトウェアにアップデートされ、新しい機能を搭載して次の走行へと出発できます。自動運転のモデルドライブは、目的地を車のコンピューターに入力することから始まります。すると、最新の地図と交通情報がネットワークから取得されます。先ほど事故が発生したため、Beethoven通りは通行止めになっています。これは事故の当事車両から自動的に報告された情報です。このため、この通りは迂回します。市の中心部を通る交通は、大きな渋滞なしに流れています。これは、管制センターが交通状況全体を把握して、信号の切り替えを最適化しているからです。信号が赤から青になったときの再発進は、リモートで調整されます。信号機(「路側機」)が、青への切り替わりを無線で通知します。

先頭の自動車(「ホスト車両」)が制御を引き継ぎ、停止中の車列に添ってV2V無線チェーンを開始することで、車列内の車の加速が制御されます。2本先の通りで、重大事故が発生します。歩行者が突然車道に侵入したため、車が自動緊急ブレーキをかけたのです。同時に、この車から後ろの車列にV2V信号が送信され、数ミリ秒以内にすべての場所で同じ反応が起こります。これにより、この事故は交通に悪影響を及ぼしません。私たちの車は、オンランプを通って混雑した幹線道路に入ります。車のコンピューターが後ろの車に合流することを伝え、開けられた車間へと入り込みます。そのすぐ後に、緊急車両が近づいてきたため、緊急レーンが魔法のように出現します。これは、交通管制センターがモバイル通信経由でルート上のすべての車両に警告したからです。

目的地に着いたら、空いている駐車スペースを探す必要がありますが、この手順はすべて駐車場管理システムによって行われ、車は次の空きスペースまでガイドされて自動的に駐車します。帰りには、呼び出し信号を送れば車が出口までやってきます。

背景となるテクノロジー

モデルドライブから明らかになるのは、無線ネットワークと自動運転に基づくモビリティシステム(C-ITS:Cooperative Intelligent Transport System)には、さまざまな交通状況(ユースケース)に対応する自動メカニズムが必要だということです。そのために、メーカーに依存しない標準化が必要です。これについては、5G Automotive Association(5GAA)のような組織が取り組んでいます。5GAAには、Rohde & Schwarzを含む自動車業界と通信業界のすべての主要企業が参加しています。名前からわかるように、この団体は5Gモバイル通信を対象としています。

自動車業界は、自身の関心事項を考慮してもらうために、5Gの規格化プロセスに早くから関わってきました。高い伝送レート、可用性、信頼性、短い信号伝搬時間(レイテンシー)といった5Gの本質的特性は、当初から交通ネットワーク用の候補として最適でした。ただし、セルラーモバイル通信(基地局の切り替えによる無線トラフィック)では、必要な通信の一部にしか対応できません。デッドスポットや特別な状況では、自動車同士が直接通信できる必要があります。この目的には、5Gに先立つLTEですでにサイドリンクインタフェース(「PC5」)が提供されており、これは5Gにも組み込まれています。使用状況に応じて、通信はネットワーク(セルラーVTX、C-VTX、Uu)またはPC5サイドリンク経由で行われます。

無線LAN(802.11p)に基づくもう1つのサイドリンクテクノロジーは、米国および中国という主要市場と、特に欧州のすべてのメーカーが5G-PC5の採用を表明したため、現在は下火になっています。

これからが本番

これまで述べた壮大な計画を実現するため、これからの世代の自動車は5Gに対応する必要があります。一般的なモバイル通信機能は、すでに何年も前から標準になっています。これは、eCall緊急通報システムの搭載がすべての新車に義務付けられたからです。一方5Gは、将来の交通シナリオにおけるその中心的役割を考えると、過去の規格よりはるかに厳しい条件を満たす必要があります。安全に不可欠なリアルタイムアプリケーションにとって、接続の失敗は許されないからです。このため、自動車通信用テレマティクスユニットのメーカーだけでなく、自動車メーカー自体にとっても、ローデ・シュワルツのようなモバイル通信専門企業のサポートが必要です。

さまざまな種類の専用テスト機器を使用することで、開発者やシステムインテグレーターは、あらゆる種類の無線システムを効率的に統合できます。これには、モバイル通信だけでなく、Bluetooth、無線LAN、GNSSも含まれます。R&S®CMW500やR&S®CMX500のようなモバイル無線テスターは、モバイル通信ネットワークのすべての機能についてシミュレーションを実行し、接続されたデバイスの性能を測定/評価することで、自動運転を含むすべての5Gアプリケーションのラボテストを可能にします。自動車のエアインタフェースであるアンテナにも、特別な注意が払われています。ターンキー測定システムを使えば、必要なテストを自動化できるので、メーカーは、車両全体のアンテナテスト(FVAT)のような、特別な専門知識を必要とする、時間のかかるエラーの起きやすい手順から解放されます。

ローデ・シュワルツは、(モバイル)無線テスト機器に加えて、電気/電子自動車コンポーネントの開発とテストを行う自動車メーカーやサプライヤに必要なすべてのテスト機器を提供します。対象となるコンポーネントは、eCall、マルチメディア機器、自動車データバス、レーダーセンサ、電気駆動装置などです。さらに、EMCテスト用の機器も用意されています。このように、ローデ・シュワルツのテスト/測定機器は、未来の車を実現するために役立っています。

R&S®CMW500およびR&S®CMX500のようなモバイル無線テスターは、モバイル通信ネットワーク全体をシミュレートします。車載テレマティクスユニットや自動車全体など、接続されたデバイスに対して、現実の路上にまだ存在しない、考え得るあらゆるシナリオをラボ条件下で提示できます。

アンテナテストは無線で行われるので、大規模なテスト施設が必要です。車がターンテーブルに載せられると、テストが自動的に始まります。ターンテーブルとスイベルアームの協調した動きにより、測定アンテナの先端を、車の上の仮想的半球上の任意の点に向けることができます。これより、空間内のすべての方向に対するシームレスな測定結果が得られます。

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