小信号の正確な測定

10 mV/div以下の測定設定では、オシロスコープは通常、トレースノイズをできるだけ低く抑えるために、測定帯域幅を狭くします。R&S®RTOは違います。最も感度の高い設定の場合でも、フル帯域幅を実現します。また、有効ビット数が7ビット以上のA/Dコンバーター(ENOB)により信号がデジタイズされます。

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課題

モバイルデバイスは小型化が進み、機能もますます増えていますが、ユーザーがモバイルデバイスに求めているのは、長いバッテリー寿命です。消費電力の最適化は、これらのデバイスを設計する際の最も難しい側面の1つです。高速データレートで送信する場合の消費電力を最小限に抑えるためには、供給電圧をできるだけ低く抑える必要があります。低電圧差動信号(LVDS)規格に準拠した低振幅信号が用いられます。低振幅の信号は、D/Aコンバーターやアンプなどのアナログ/ミックスドシグナル回路でも一般的で、前述の理由から、非常に小さな電圧が使用されます。従来のオシロスコープでは、このような信号の全帯域幅を高い垂直軸感度で表示することはできません。信号を高い忠実度で測定することは非常に困難または不可能ですが、R&S®RTOを使用することによって簡単に解決できます(図1を参照)。

電子計測ソリューション

高周波信号の測定に使用されるアクティブプローブの電圧ディバイダーの分圧比は10:1で、ただでさえ小さい信号の振幅を信号源の1/10にします。350 mVの電圧スイングでLVDS信号を測定した場合、オシロスコープの入力に到達するのはわずか35 mVです。この信号の表示を最適化するには、垂直軸スケールを40 mV/divまたは4 mV/divに設定する必要があります(図2を参照)。R&S®RTO オシロスコープは、入力アンプをオンにし、A/Dコンバーターのダイナミックレンジをフル活用することにより、最小1 mV/divまでの感度に対応します。他のオシロスコープは、ソフトウェアを使用して信号振幅を画面全体に表示するだけなので、A/Dコンバーターのごく一部のレンジしか使用していません。さらに、R&S®RTO オシロスコープ固有の雑音は非常に小さいので、入力帯域幅を狭くしてさらに雑音を低減する必要はありません。フル帯域幅を使用することにより、すべての感度範囲で正確な測定を実現することができます。

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シングルコアA/Dコンバーターによる高いダイナミックレンジ

信号デジタイズの真の確度の指標は、A/Dコンバーターの有効ビット数(ENOB)です。特に、高速デジタルバスの小信号振幅により、ダイナミックレンジの要件は厳しくなっています。広帯域デジタルオシロスコープでは、通常、8ビットA/Dコンバーターが使用されています。これらのコンバーターは、低速のタイムインターリーブ方式のコンバーターを複数接続することによって構成されています。ただし、個々のコンバーターの動作は一様ではないため、接続されているコンバーターの数が多いほど、誤差は大きくなります。R&S®RTO オシロスコープには、そうした制限はありません。R&S®RTOの10 GS/sコンバーターの実装には、シングルコアアーキテクチャーが採用されています。すなわち、1つのコンバーターコアによって、サンプリングされたアナログ信号が8ビットのデジタルワードに変換されます。シングルコアアーキテクチャーは、信号の歪みを最小限に抑え、7ビット以上の有効ビット数を実現します(図3を参照)。測定信号の表示精度は、オシロスコープの帯域幅対信号周波数およびフロントエンド固有の雑音にも依存します。このために、R&S®RTO オシロスコープの開発段階で、要求の厳しいデザイン要件が一貫して実装されました。この実装により、このオシロスコープ固有の雑音は、このクラスの測定器では最小で、最も感度の高い設定でも正確で安定した結果が得られます(図4を参照)。

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