衛星の出力マルチプレクサーおよびサーキュレーターの実環境下での測定

R&S®ZNA ベクトル・ネットワーク・アナライザは、きわめて優れたダイナミックレンジを実現します。これにより、これまでベクトル・ネットワーク・アナライザでは対処できなかった用途での利用が可能になります。

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課題

通信衛星ペイロードで使用される出力マルチプレクサー(OMUX)は、フィルタリングされた各種チャネルを共通のアンテナフィードとして結合するように設計されています。これらの導波管ベースのデバイスは、関連するチャネルバンドごとに必要なフィルターを備えており、一般的にKuおよびKa(ダウンリンク)周波数バンド内で最大300 Wの出力に対応しています。多くの場合、チャネルフィルターには温度補正技術が採用されており、従来のインバーに基づくコンセプトと比較してフットプリントや質量の改善が図られています。温度補正はチャネルの性能の鍵となりますが、これは補正ユニット周辺の温度に大きく左右されます。

この温度は、解析による予測が困難なことで知られています。

同様に、KuおよびKa(ダウンリンク)バンドのハイパワー300 Wサーキュレーターの性能も、フェライト内の局所温度に大きく左右されます。この温度も、解析によって信頼できる形で予測することは困難です。

これらのデバイスでは、一般に周波数間における高速切り替えを行うのに適していない進行波管増幅器(TWTA)が用いられるため、高出力でテストして真の周波数応答を明らかにすることができませんでした。そのため、通常は、ベクトル・ネットワーク・アナライザを使用して低い出力レベルでこれらのデバイスをテストし、OMUXまたはサーキュレーターを計算上の有効温度まで加熱して、デバイス内での電力損失の影響を再現します。

この方法で問題になるのは、特に温度補正されたOMUXチャネルフィルターやサーキュレーターで、均一な有効温度を計算するのが難しいことです。実際の用途では、熱はデバイス全体で均一に放散される訳ではありません。構造内のいくつかの場所にホットスポットが生じて不均一にパワーが放散され、電気的挙動に影響を与えます。これを再現するのは、容易なことではありません。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®ZNA ネットワーク・アナライザは、ネットワーク・アナライザとして業界最大のダイナミックレンジを実現しています。

このダイナミックレンジにより、結合係数の高いハイパワーカップラーを介して実際のSパラメータ測定を行うことが可能になります。

以下のセットアップでは、TWTAを使用して必要な周波数でハイパワーCW信号をOMUXに提供し、目的の加熱効果を実現しています。Sパラメータ測定は、ハイパワー導波管カップラーを介して結合されます。これらのデバイスの結合係数は、50 dB~60 dBの範囲です。これにより、ネットワーク・アナライザのポートは大電力による損傷から保護されます。しかし、レシーバーで送信信号と反射信号を確認するには高いS/N比(ダイナミックレンジ)が必要であるため、測定機器にって課題となります。

Ku(ダウンリンク)周波数バンドで達成可能なダイナミックレンジ(1 Hzの測定帯域幅を使用)
Ku(ダウンリンク)周波数バンドで達成可能なダイナミックレンジ(1 Hzの測定帯域幅を使用)

まとめ

R&S®ZNA ベクトル・ネットワーク・アナライザの優れたダイナミックレンジにより、ハイパワー導波管デバイスのテストで新しい測定方法の利用が可能になります。これにより、初めて、実際の動作条件下でこの種のデバイスをテストし、周波数に対する温度補正の影響を詳細に把握することが可能になります。

R&S®ZNA 4ポート・ベクトル・ネットワーク・アナライザを使用したハイパワーOMUXテストのセットアップ
R&S®ZNA 4ポート・ベクトル・ネットワーク・アナライザを使用したハイパワーOMUXテストのセットアップ