ローデ・シュワルツのATC音声品質保証

ED-136の要件に基づいて音声品質を保証し、音質劣化を素早く識別

課題

航空機の乗客の安全と航空業務の継続には、音声通信システムが正しく機能することが不可欠です。安全で円滑な航行には状況の明確な把握が鍵となるため、通信品質は重要な役割を果たします。

ANSPは最先端のVoice over IP(VoIP)通信テクノロジーを導入して、可用性、セキュリティー、柔軟性の向上など、IPベース通信の利点を生かしています。

VoIPは、これまでで最も要求の厳しいIPベースサービスの1つです。デジタルネットワークと同様のユーザー体感を確保するために、ED-136とED-137で最低限の要件が規定されており、 MOSは4.00以上、エンドツーエンド遅延は130 ms以下であることが求められます。

こうした要件を満たすには、品質のモニタリングが必要であることが、通信事業者とエンタープライズセクターの経験から判明しています。ローデ・シュワルツは、ATC音声ネットワークの品質測定に通信事業者グレードのVoIPモニタリングシステムを採用しています。

ローデ・シュワルツのソリューション

Rohde & SchwarzAVQA 高機能性音声品質保証システムを使用すると、航空管制サービスプロバイダーと空港運営者(ANSP)は音声サービスの品質を完全に制御できるようになります。市場をリードするモニタリングテクノロジーによって、メディア・プレーン・トラフィックとコントロール・プレーン・トラフィックを詳細に解析できます。強力な解析およびレポート機能とスケーラビリティーの高いシステムアーキテクチャーを兼ね備えたR&S®AVQAは、どのANSPにも不可欠なツールです。

R&S®AVQAの強力な音声モニタリング機能は、ネットワーク性能評価、ED-136準拠のモニタリング、トラブルシューティング、IP相互接続のモニタリングなど、音声品質保証のすべての側面をカバーしています。統計と詳細な品質情報から得られた重要な解析情報が、以下のような多くのANSP関係者に提供されます。

  • 品質管理部門
  • VCSシステムの管理者
  • 管制室の管理者
  • サービスレベル契約(SLA)の管理部門

システム運営の適切さを示す証拠として、地域の民間航空局にED-136準拠レポートを提供することもできます。

ネットワーク性能評価

音声を正しく伝達するには、ベースとなるIPネットワークを正しく運用することが不可欠です。ネットワーク性能指標のモニタリングは、実際のトランスポート品質の確認に役立ちます。R&S®AVQAは、IPベース音声ネットワークの性能モニタリングに関するすべての情報を提供します。トランスポートの性能指標には、ジッタ、パケット到着間隔時間の詳細なヒストグラム、パケット損失、バースト損失データ、損失密度、往復遅延、トランスポート・ポリシー・データ(例:VLANおよびDSCPコードフィールド)などがあります。

これらのパラメータを踏まえ、R&S®AVQAはトランスポートのさまざまな信号劣化の根本原因を自動的に確認し、表示します。その結果、トラブルシューティング時間は大幅に短縮されます。

コントロールプレーンのモニタリング

R&S®AVQAは、コントロールプレーン、つまりSIPベースのシグナリングに関するサービス品質の指標とKPIを豊富に提供しています。セッション確立有効率(SEER:Session Establishment Effectiveness Ratio)など、KPIのほとんどはIETF RFC 6076に基づいています。これは地上-地上間通信の評価だけでなく、航空機-地上間の呼設定における無線可用性の判断にも使用される主要な情報です。

呼が設定可能かどうかは、基本的にシグナリング品質によって決まります。呼が確立された後は、音声品質、つまりRTPフローの品質がユーザー体感を左右します。

音声プレーンのモニタリング

R&S®AVQAは各RTPストリームをリアルタイムに解析し、ストリームの5秒ごとのセグメントに平均オピニオンスコア(MOS)を割り当てます。一定時間でスライスするこの独自の方法は、IPネットワーク内での音声品質の変化を説明するのに適しています。これは、ATC通信の通信コマンドの一般的な長さにも完全に対応しています。呼または接続ごとに平均を求める従来の方法では、情報が大幅に欠落します。

例えば、1日の接続の平均品質を求める方法では、1日の最後の5秒間に重大な信号劣化が発生しても、平均品質は「ほぼ完全」と報告されます。しかし管制官からは、品質の悪さに関する苦情が寄せられます。指標データの平均値では、トラブルシューティングも、そうした問題の確認も行うことができません。

呼の品質を一定時間でスライスする解析方法では、信号劣化の時間を特定し、ネットワーク内でその時間に発生していたイベントを見つけ、ユーザー体感に関する正確な情報を提供することができます。一定の時間単位の品質データを使用することで、ユーザーはサービス品質情報を比較し、集約することができます。

一定の時間単位を使用するR&S®AVQAは、MOS Quality Minutes、つまり1分ごとの品質格付けを提供します。MOS Minutesによって、全体的な音声サービス品質を簡単に表示できます。Bad Minute Indicator(BMI)は、ED-136の要件を満たしていない(MOS<4.00)5秒単位の数を示し、音声ネットワークのステータスに関する詳細な統計情報を提供します。

BMIはANSP音声ネットワークの重要評価指標であり、最低値は0です。

R&S®AVQAテクノロジー

R&S®AVQAテクノロジー

R&S®AVQAは、リアルタイム通信サービスを対象とした受動ミッドポイント・モニタリング・ソリューションです。分散配置されたR&S®AVQAプローブと中央のR&S®AVQAマネージャーで構成されます。R&S®AVQAプローブは、評価対象のネットワークのコピーを、回路に影響を与えないTAPまたはSPANポート経由で受信します。プローブはメディアのストリームおよびシグナリングをリアルタイムに解析し、品質データレコード(QDR)を生成します。QDRは、中央のR&S®AVQAマネージャーに送信されます。中央のR&S®AVQAマネージャーは、ビジネスロジックとデータウェアハウスを提供します。R&S®AVQAマネージャーは、プローブから品質データを取得し、品質データを後処理し、定義されたKPIレポートとアラームを生成します。

平均オピニオンスコア(MOS)

平均オピニオンスコア(MOS)は、呼の品質評価に使用される1(非常に悪い)から5(非常に良い)までのスケールです。MOSは従来、聴き手が「静かな部屋」に座り、通話の品質を自らの感覚に基づいて評価する主観的な測定法です。このテスト手法は、ITU-T勧告P.800で規定されました。しかし主観的なMOS評価の収集には時間とコストがかかるため、受動モニタリングシステムで使用するMOS予測値の品質モデルが規定されました。ITU-T G.107(E-model)がその例です。