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R&S®Essentials | 電源の基礎

リモートセンスについて理解する

著者:電子計測エキスパート、Paul Denisowski

ここでは、ベンチDC電源でリモートセンスを使用する方法について説明します。

電源のリモートセンスとは?

通常、ベンチ電源を使用する際には、負荷にかける電圧を入力します。しかし、電源のリードケーブルによって負荷での電圧降下が生じます。これはリード線の抵抗がゼロではないためです。この抵抗はリード線が長いほど大きく、リード線が細いほど大きくなります。多くの場合、リード線の抵抗とそれによる電圧降下は無視して問題ありませんが、負荷抵抗が小さい場合や大電流の場合は無視できなくなる可能性があります。

リモートセンシング(4線式センシングともいう)を備えた電源では、これらの電圧降下を補正することができます。これを行うには、フォースラインとは別に1対のセンスラインを使ってDUTに実際にかかる電圧を測定します。この測定値を使って、DUT入力に必要な電圧がかかるように電源の出力電圧を調整します。モデルによりますが、ローデ・シュワルツの電源は各出力チャネルにリモートセンシングを備えています。

フォースラインとセンスラインが接続されたR&S®HMP4040の背面パネル

この問題の最も一般的な解決策は、出力端子ではなく負荷にかかる出力電圧を電源で測定できるようにすることです。この手法は「リモートセンス」と呼ばれます。

リモートセンスの仕組み

リモートセンスでは、1対のセンスリード線を使用して、可能な限り負荷に近い場所で電圧を測定します。これらのリード線は電源内の非常に高いインピーダンスに接続されているため、電流は(ほとんど)流れず、そのため、センスリード線での電圧降下は(ほとんど)生じません。電源でリモートセンス電圧を使用すると、負荷で必要な電圧が得られるように出力を調整することができます。

下の例では、電源で0.3Vの電圧降下を補正し、出力電圧を5.3Vにしています。

内蔵測定機能

ローデ・シュワルツのDC電源には、さまざまな内蔵測定機能が付属しており、多くのアプリケーションで瞬時電力などを測定する場合に外部オシロスコープ´やマルチメータなどの追加の測定器の代わりに使用できます。追加の負荷が電源に接続されないため、追加の負荷電圧を考慮する必要がありません。これは、内蔵測定機能の大きな利点です。また、内蔵測定機能は非常に使いやすく、セットアップも簡素化されます。

ベクトル信号発生器では、パワー、電圧、電流および電力量の最小値/最大値と平均値を含む統計などの、詳細な解析機能が利用できます。

高精度電源(R&S®NGL200R&S®NGM200および R&S®NGU など)では、6½桁の分解能での測定が可能です。また、R&S®NGM200やR&S®NGUのように、電源が高速ADCを備えている場合には、高速過渡信号の検出と測定も可能です。

測定値は、ロギング機能を使って対時間で記録できます。大型ディスプレイを備えた電源の中には、グラフィカルな解析機能を備えているものもあります。

デジタル電圧計機能

一部の電源には、測定器の内蔵測定機能をさらに拡張するオプションの内蔵デジタル電圧計(DVM)を搭載できます。DVMを使用すると、DUT回路の必要なポイントで電圧を測定できます。このため、追加のマルチメータは必要なくなります。

DVMオプションは、R&S®NGM200のすべてのモデルとR&S®NGU201で利用できます。

これは、自動的/動的に行われるプロセスです。センスリード線を接続し、リモートセンスをオンにすると、電源は必要に応じて出力電圧を継続的に自動調整します。

ロギング

測定結果からDUTで測定された実際の電圧、電流、電力の概要がわかりますが、多くのアプリケーションでは、これらの値の変動(つまり、長期にわたるDUTの挙動や、高い時間分解能でのDUTの挙動)をモニターして表示することが望まれます。

標準ロギングと高速ロギング

ほとんどのローデ・シュワルツの電源は標準ロギング機能を備えており、中には高速ロギング機能を搭載しているものもあります。標準ロギング では、電源のすべてのアクティブチャネルからまとめて測定データを収集し、それが1つの共通ファイルに保存されます。そのため、標準ロギングの設定は、DC電源のデバイスメニューで行います。

R&S®NGM200および R&S®NGU 電源では、高速ロギングも利用できます。高速ロギング (FastLog)はサンプリングレートが最大500 kサンプル/秒で、オシロスコープと同じように電圧値と電流値を対時間で収集できます。高速ロギングは、DUTのさまざまな機能ブロックの消費電力を解析し、DUTの回路の不具合を検出するのに役立ちます。

高速ロギングでは、電源の個別のチャネルの測定データを収集し、それぞれのデータを別々のファイルに保存します。そのため、高速ロギングの設定は、チャネル設定メニューで行います。フォトセルやサーミスターなどのアナログセンサを流れる電流の値をロギングすることで、照度や温度などの環境データを特定することができます。

まとめ

  • リード線の抵抗によって負荷で電圧降下が生じることがあります。
  • 多くの場合、これは無視できますが、負荷抵抗が小さい場合や大電流の場合は無視できなくなる可能性があります。
  • リモートセンスでは、追加の1対のリード線を使って負荷にかかる電圧を直接測定します。
  • リモートセンスの測定値に基づいて、電源は電圧を大きくして電源リードでの電圧降下を解消することができます。
  • 通常、このプロセスは自動的/動的に行われるため、設定後にユーザーが追加で操作を行う必要はありません。

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