ボード線図プロットについて

ご興味がございましたらお気軽に!

R&S®Essentials | デジタルオシロスコープとプローブの基礎

ボード線図プロットについて

ボード線図プロットとは?

ボード線図プロットはもともとHenrik Wayne Bode博士によって、博士が1930年代にベル研究所で働いていたときに考案されました。ボード線図プロットは主に制御システムの安定性を解析するために用いられ、例えば電源のフィードバックループの設計と解析の際に使用されます。ボード線図プロットを使用する利点は、わかりやすく共通な方法で線形時不変システムの周波数応答を説明できるということです

ボード線図プロットを読むには?

ボード線図プロットでは周波数応答、つまり、振幅と位相の変化を周波数の関数として見ることができます。

これは、2つの半対数スケールのプロットで行います。上のプロットは一般に振幅、または「ゲイン」がdBで示されます。下のプロットは位相で、一般に度単位で示されます。

位相マージンとゲインマージン

ボード線図プロットの情報を用いると、位相マージンとゲインマージンを用いてフィードバックシステムの安定性を定量化することができます。

位相マージンは、ゲインが0 dBに等しい周波数で測定されます。これは一般に「交差周波数」と呼ばれます。位相マージンは、測定された位相から-180°の位相シフトまでの距離の測定値です。言い換えると、-180°に達するまでに減らすべき位相の角度です。

ゲインマージンは、一方で、位相シフトが-180°に等しい周波数で測定されます。ゲインマージンは、測定されたゲインから0 dBのゲインまでの距離をdBで表します。0 dBと-180°の値が一致するとシステムが不安定になるため、これらの値は重要です。

ゲインマージンと位相マージンは、不安定点からの距離を表します。距離またはマージンは大きいほど良く、ゲインマージンや位相マージンが大きいほど安定性が高くなります。ゲインマージンがゼロ以下のループは条件付き安定であり、ゲインが変化すると容易に不安定になってしまいます。位相マージンの一般的な目標は45度以上で、よりクリティカルなアプリケーションではより大きいマージンが求められます。

ボード線図プロットから決定される値は、安全性の検討に加えて、性能にも影響します。例えば、交差周波数が0 dBを超える場合は通常、負荷変動への応答速度が高いことを意味します。高周波数でゲインが低い場合、ノイズイミュニティーが良いか、出力リップルが低いことを意味します。

安定な閉ループシステムと不安定な閉ループシステム

0 dBで測定された位相が-135°なので、位相マージンは45°です。-180°でのゲインが-9 dBなので、ゲインマージンは9 dBです。位相マージンが正の値なので、このシステムは安定です。

位相が-180°のときに測定されたゲインが+13 dBなので、ゲインマージンは-13 dBです。0 dBのゲインにおいて測定された位相が-215°なので、ゲイン交差点における位相マージンは-35°です。このシステムは不安定です。

ボード線図プロットと負荷過渡テストおよびステップ応答テスト

電源の安定性を定量化または測定する一般的な方法は他に、負荷過渡テストまたは ステップ応答テストなどがあります。この方法は良く知られており、広く用いられていますが、特に電源ユニットと負荷ステップ生成器との間にインダクタンスがある場合には高速負荷ステップを生成するための回路の構築が難しくなることがあります。

ボード線図プロットには、この方法にはない重要な利点がいくつもあります。

  • ステップ応答では大きいスケールの挙動しか見られませんが、ボード線図プロットでは小さいスケールの挙動も見られます。
  • ボード線図プロットはさまざまな負荷レベルや動作点で容易に作成することもできます。ループ安定性は動作点に依存することが多いため、これは重要です。電源は安定なように見えても、異なる負荷条件下では不安定に近づくことがあります。

ボード線図プロットと負荷過渡テストおよびステップ応答テスト

ボード線図プロットで閉ループ安定性を測定

ボード線図プロットのアプリケーションをより詳しく説明するために、閉ループ応答を測定することによってDC/DC電源の閉ループ安定性を測定しました。これは、電圧注入法でもテストすることができます。この方法では、通常は10 Ω程度の非常に小さい抵抗をフィードバックループに追加します。フィードバックループの方向のインピーダンスが、反対方向のインピーダンスよりも十分に大きくなるようにポイントを選択します。小さい妨害信号を抵抗器の両端に注入します。通常、これは注入トランスと呼ばれるものを用いて行い、ループに影響しないようにします。その後、応答を測定し、ボード線図プロットを作成します。

閉ループ応答を測定する測定器

閉ループ応答の測定では、2種類の測定器を使用します。1つ目は、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)です。VNAは通常、ダイナミックレンジが非常に高く、インピーダンス測定を非常に高精度に行うことができます。コストと複雑性以外でVNAを使用する短所の1つが、VNAが最も適しているのは50 Ωのコンポーネントの特性評価だということです。オシロスコープは、一方で、すでに電源の開発で一般的に使用されており、ノイズおよび出力リップルの特性評価を直接行うことができます。今ではオシロスコープでも、ゲインマージンと位相マージン、電源電圧変動除去比、ステップ応答などの安定性測定を行うことができます。

テスト構成:オシロスコープで制御ループ応答を測定する方法

DC-DC電源のループ応答を測定するには、ループに妨害信号を注入する必要があります。したがって、ループの方向のインピーダンスが反対方向のインピーダンスよりも十分に大きくなるようにポイントを選択します。注入点に小さい抵抗を配置し、広帯域注入トランスを使用して注入抵抗に対して並列に妨害電圧を印加します。妨害信号は、オシロスコープの内部発生器で作成します。オシロスコープの2つのチャネルを注入点の両端に接続します。測定値に基づいて、オシロスコープがボード線図プロットを生成し、表示します。

閉ループ応答を測定する場合、正しいプローブを使用することが重要です。測定点におけるピーク・ツー・ピーク振幅は、あるテスト周波数で非常に低くなることがあります。この理由から、1xのパッシブプローブがより一般的な10xプローブよりも推奨されます。信号をS/N比まで増大させると、周波数応答測定のダイナミックレンジも改善されます。また、スイッチングのピックアップノイズとグランドループのインダクタンスを低減するために、グランドスプリングまたは非常に短いグランドリードを使用することが重要です。

テスト構成:オシロスコープで制御ループ応答を測定する方法

まとめ

ボード線図プロットは、例えば電源の制御ループ応答など、線形時不変システム(LTIシステム)によって加わる振幅と位相の変化を解析するうえで便利です。

ボード線図プロットにより、位相マージンとゲインマージンを容易に決定することができます。位相マージンとゲインマージンはシステム安定性の判定において重要です(マージンは大きい方が安定性が高いです)。

オシロスコープで閉ループ応答をテストする:

  • ループに妨害電圧を注入する
  • 抵抗の両端の電圧を測定する
  • オシロスコープ上でボード線図プロットを生成し表示する

測定ニーズに最適なオシロスコープの選択を、 弊社のエキスパートがお答えします。

テストの基本について理解を深めたいと思いませんか?

ニュースレターを購読する