高調波ロードプル測定によるパワーアンプの効率の最大化

高調波ロードプル測定では、潜在的なデバイスの効率性を調査して、最適な設計トポロジーを見つけます。

ロードプルのアプリケーションにより、パワーアンプの特性評価や最適化を改善できます。高効率のアンプは、大量の高調波電力を発生させる飽和状態に近い非線形領域で使用されます。パワーアンプ(PA)の効率を最適化するためには、これらの高調波信号には、高調波周波数用に最適化されたインピーダンスが必要です。

R&S®ZNA ベクトル・ネットワーク・アナライザを核とするロードプルのセットアップ。
R&S®ZNA ベクトル・ネットワーク・アナライザを核とするロードプルのセットアップ。
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課題

RFパワーアンプの開発者は、サポートされている帯域幅全体にわたる完全にフラットなリニアリティー、EVMおよびACLRに加えて、利得、出力パワー、周波数カバレッジなど、必要不可欠な仕様に重点を置いています。市場の他のサプライヤーと差別化を図るために、高効率化に力を入れています。アンプは、飽和状態に近い状態で動作した場合、高調波成分を生成します。クラスAやクラスBなどのさまざまな動作モードを使用して、リニアリティーと効率の間を最適化します。トランジスタに適用される電流曲線と電圧曲線は調整されるため、これらのクラスは波形エンジニアリングと呼ばれます。クラスAとBがバイアス電圧によって調整されるのに対して、クラスEとFは高調波抑制によって効率を最適化します。高調波ロードプルシステムでは、EモードとFモードを詳細に把握し、DUT(アンプ)の最も効率的な動作モードを調べることができます。デバイスおよびその動作モードに応じて、10 %~20 %の範囲での効率改善は現実的です。

パッシブベクトルレシーバー・ロードプルの基本的なセットアップ
図1:パッシブベクトルレシーバー・ロードプルの基本的なセットアップ
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ローデ・シュワルツとMaury Microwaveがターンキー高調波ロードプルシステムで協力

従来、ロードプルシステムは、パッシブシステムにメカニカルチューナーを使用して、さまざまなインピーダンスレベルをトランジスタに適用していました(図1を参照)。
アクティブロードプルシステムは異なる方法を使用し、アクティブフィードバックシステムがチューナーに代わって、信号に対して定義されたレベルおよび位相の信号をアンプの出力に送信します。この方法では、パッシブチューナーの損失がなくなり、より多くの電力を供給してチューニングレンジを拡大することができるため、スミスチャート全体にわたる広いチューニングレンジを実現できます。混合方法(ハイブリッドロードプル)も使用できます。

高調波ベクトルレシーバー・ロードプルのセットアップ
図2:高調波ベクトルレシーバー・ロードプルのセットアップ
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高調波周波数をチューニングする場合、同様のコンセプトが適用されます。パッシブチューニングでは、第1(f0)、第2(2f0)、および第3(3f0)高調波に対して多重化方式採用のメカニカルチューナーを使用します。
これらのチューナーは、トリプレクサー、または高調波用の3つの内部キャリッジを備えたカスケード接続対応のメカニカルチューナーを介して結合されます。制御されている高調波周波数の信号をDUTに送るアクティブシステムでは、チューニングレンジの拡大と柔軟性の向上を実現できます。

一般的な方法では、はるかに高いパワーレベルをサポートする基本波周波数の信号用のパッシブチューナーと、第2高調波と第3高調波のアクティブ信号を組み合わせて使用します(図2を参照)。

Maury Microwave、AMCAD Engineering、ローデ・シュワルツは、システム全体を校正/実行できるソフトウェアを搭載したターンキーシステムを共同開発しました。このソリューションは、R&S®ZNA固有の4つの独立した調整可能な同期された信号源を使用し、入力用に基本波周波数の信号を生成したり、アクティブ高調波ロードプル用に位相と振幅を制御して第2および第3高調波を生成することができます。

R&S®ZNAの信号源を使用するアクティブ高調波ベクトルレシーバー・ロードプルのセットアップ
図3:R&S®ZNAの信号源を使用するアクティブ高調波ベクトルレシーバー・ロードプルのセットアップ
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別の方法として、ロード側のメカニカルチューナーを第4 R&S®ZNA信号源に置き換えることもできます。この場合、アクティブなf0信号を使用します。
この方法は、出力パワーが小さいデバイスには妥当です。そうでなければ、DUTの出力に過剰なf0の信号を送る必要があります。メカニカルチューナーとDUTへのアクティブ信号を用いるハイブリッド法は、最も柔軟性の高いソリューションです。

R&S®ZNAは、4つの信号源を内蔵しているため、非常にコンパクトで、高速かつ安定したセットアップを実現でき、外部信号源や高調波チューナーにかかるコストを節約できます。

アプリケーション

測定を利用した方法では、さまざまな条件を用いてDUTの特性を評価し、総合的なソリューションを探し求め、効率を最大化することができます。DUTまで完全に校正済みのシステムを使用するマルチステップ法が一般的です。代表的なステップを以下に示します(図4を参照)。

ステップ1:f0インピーダンスがPAの最高効率を求めるために掃引され、2f0と3f0が50 Ω終端に設定されます。

ステップ2:2f0インピーダンスが掃引され、f0が最高効率を求めるためにステップ1で得られたインピーダンスに固定されます。3f0は50 Ωを維持します。

ステップ3:3f0インピーダンスが掃引され、f0インピーダンスと2f0インピーダンスが最高効率を求めるためにステップ1と2で得られたインピーダンスに固定されます。

ステップ4:f0インピーダンスの微調整:f0インピーダンスが再度掃引され、2f0と3f0インピーダンスが最高効率を求めるためにステップ2と3で得られたインピーダンスに固定されます。

最適化経路に沿った効率曲線
図4:最適化経路に沿った効率曲線
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この方式では、最高のアンプ効率を実現するために、さまざまな高調波におけるインピーダンスマッチングを選択するためのデータが提供されます。これらのプロットでは通常、各種インピーダンスレベルの複数の曲線によって出力パワー全体の効率が示されるため、P1dBまたはP3dB圧縮ポイントを最大出力パワーを得るために最適なポイントとして選択することができます。または、3 dBより大きなバックオフを使用することにより、リニアリティーにより優れたポイントを選択できます。

最適化経路に沿った効率曲線(図4)
プロットは、トランジスタの出力に供給される出力パワー全体の電力付加効率(PAE)を示しています。インピーダンス変動の範囲も各ステップのスミスチャートに示されています。Y軸スケーリングは、最高効率を達成するためにインピーダンスが変更された場合に、より大きなPAE値に対応できるように変更されます。

まとめ

Maury Microwave、AMCAD Engineering、ローデ・シュワルツのR&S®ZNAの共同ソリューションは、最新のアンプを開発する場合の高調波ロードプル測定特有のコンパクトな方法です。

クラスFやJなどの上級のアンプクラスは最新の無線通信システムで一般的に使用されるため、消費電力をできるだけ低く抑えるためには、最高の効率と高調波終端を備えていることが重要です。