組み込み電源の安全なデバッグ

組み込み電源は、複数のセンサ、処理/制御ロジック、デジタル通信インタフェースを従来の電源コンポーネントに組み合わせています。デバッグ用のテスト機器には、人体に危険な電圧も測定できるためにの、アイソレートされた入力チャネルが必要となります。追加のデジタルチャネルはデジタル信号の解析をサポートしますが、シリアルプロトコルベースの通信インタフェースの時間相関モニタリングには、トリガ/デコード機能が不可欠です。

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課題

2台のプログラマブルコンバーターで構成される組み込みAC/DC電源の動作を評価します。電源をオンにして、プロトコルベースのプログラミング/制御インタフェースと時間相関させて、コンバーターの入力信号と出力信号をモニターします。

電子計測ソリューション

R&S®Scope Rider ハンドヘルド・デジタル・オシロスコープは、絶縁されたハンドヘルドオシロスコープの利点と、これまでは最新のラボクラスのオシロスコープだけに備わっていた機能を兼ね備えています。

ガルバニック絶縁された各入力チャネルは、最大500 MHzの帯域幅を備え、CAT IV 600 V/CAT III 1000 Vまでの環境で測定が可能です。

R&S®Scope Riderには、ロジック・アナライザ機能とプロトコル・アナライザ機能も備わっています。これらの機能は、8つのデジタルチャネル(MSO)と各種プロトコルトリガ/デコードオプション(I2CまたはUARTなど)によって実現されています。

加えて、最大5 GSa/sの高いサンプリングレートを備えているので、高速遷移などの信号の詳細を高い分解能で解析できます。更新レートは50,000波形/秒と高速で、発生頻度の低い信号イベントもすばやく捕捉できます。また、静電容量式タッチスクリーンベースの操作で、測定器を直感的に使用できます。

アプリケーション

組み込み電源

より効率的な電源の需要が増加しています。これは、バッテリーの節約が重要なモバイルアプリケーションや、電源要件の変更にすばやく対処する必要があり、高い信頼性を確保する必要のある大電力機器業界やデータ・ストレージ・アプリケーションなど増加に起因します。

組み込み電源には、従来のAC/DCまたはDC/DCコンバーターだけでなく、デジタルモニタリング/処理/通信コンポーネントも含まれています。メインシステムは、組み込まれた電源と通信してパラメータを設定/調整したり、温度や過負荷状態などの重要な特性をモニターしなければいけません。

組み込み電源の一般的な通信インタフェースは、2線式I2C通信インタフェースの物理層に基づいたPMBusです。

組み込みAC/DC電源の評価

以下の例では、2つの高性能500 W AC/DCコンバーターモジュールが1つの電源に組み込まれています。どちらのモジュールも、独立したデジタル制御システムを備え、通信インタフェースとして標準のI2Cバスを経由してPMBusプロトコルを使用します。どちらのモジュールも個別のI2Cアドレスを持っているので、専用のPMBusコマンドを各モジュールに送信できます。入力/出力電圧、電流共有、最大出力パワーなど、コンバーターモジュールのリモート設定が可能です。電源ユニット全体の詳細なモニタリングも可能です。

最初の評価段階では、電源のスイッチオン動作が解析されます。I2Cのデータ値80 hによって、電源はオンになります。評価では、230 V ACのコンバーター入力、+5.0 Vと+12.0 Vの2つの出力ライン、パワーグッド信号を、I2Cプログラミングコマンドと時間相関させてモニターする必要があります。

R&S®Scope Riderを使用した測定セットアップ

この測定では、R&S®Scope Riderの入力チャネルは電源の入力/出力ラインとパワーグッド信号に接続されています。AC/DCコンバーターの1次側で測定する際に、ユーザーを危険な主電源電圧から保護するためには、R&S®Scope Riderの絶縁されたチャネルが重要になります。R&S®Scope RiderのMSOオプションの2つのデジタルチャネルは、I2Cクロック信号とデータ信号(I2C_SCLとI2C_SDA)に接続され、構成されています。

次に、I2Cプロトコルデコードが2つのデジタルチャネルに対して設定されます。

実際の測定では、I2Cメッセージのトリガイベント “Start” が選択されます。R&S®Scope Riderは、「シングル」トリガモードを使用して、ユーザーが送信したI2Cコマンドに応答し、電源の起動シーケンスを捕捉します(以下のスクリーンショットを参照)。

スクリーンショットからは、2つの出力電圧とパワーグッド信号が立ち上がっていることがわかります。これは、電源が動作可能な状態であることを示しています。I2Cコマンドに対する個々の出力の立ち上がりの時間遅延などの他の特性を、カーソルや自動測定を使って検証することができます。

まとめ

R&S®Scope Rider ハンドヘルド・デジタル・オシロスコープは、最高の安全規格で優れた性能を発揮し、MSOオプションやプロトコルのトリガ/デコードオプションなどのラボ測定器の機能を兼ね備えています。

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PMBus/I2Cコマンドによってプログラムされた、組み込みAC/DCコンバーターのランプアップ(C1:230 V AC入力;C2:12 V DC出力;C3:5 V DC出力;C4:パワーグッド;D1:I2C_SCL;D0:I2C_SDA;B:I2Cバスデコード)。