独自の「スマート」ローノイズアンプの作成

SパラメータとR&S®FSW-K544を使用した外部コンポーネントの補正

独自の「スマート」ローノイズアンプの作成

課題

多くのアプリケーションでは、特定の測定作業に適合させるため、カスタマイズされたコンポーネントが測定機器(シグナル・アナライザなど)に接続されます。代表例としては、ケーブル(離れた場所にあるDUTに接続するための非常に長いケーブル)、フィルター(測定感度を低下させる強い信号成分を阻止するため)、ローノイズアンプ(LNA、測定機器の感度向上のため)などがあります。これらのコンポーネントのほとんどは、高度なシグナル・スペクトラム・アナライザに内蔵されているか、オプションのハードウェア(プリアンプと呼ばれるLNAなど)を注文して統合することができます。

ただし、内蔵コンポーネントには必ずトレードオフがあります。LNAの場合、帯域幅、利得、雑音指数、整合がトレードオフになります。当然のことながら、トレードオフが存在する場合、特定のアプリケーションに完全に適した仕様は実現できません。このため、最先端の増幅器の雑音指数を測定する場合、測定器の感度を上げるため、追加のLNAが必要になる可能性があります。内蔵LNAとの違いは、きわめて高い利得と完全な整合が要求されるのに対して、必要な周波数レンジはごく狭いということです(例:1.5 GHz2 GHz)。これに対して、内蔵コンポーネントは、測定器の周波数レンジ全体(例:2 Hz67 GHzあるいはそれ以上)に対応しているのが普通です。

アプリケーション固有の追加のLNAを使用した雑音指数測定セットアップ
アプリケーション固有の追加のLNAを使用した雑音指数測定セットアップ

ローデ・シュワルツのソリューション

ローデ・シュワルツでは、アプリケーションの必要を完全に満たす外部コンポーネントを見つけて、測定セットアップに追加することを推奨しています。追加コンポーネントを測定に使用する場合、測定結果がコンポーネントでなくDUTの特性を表していることを確認する必要があります。では、この外部コンポーネントの影響(利得や周波数応答)を補正するにはどうすればいいでしょうか。

R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザをはじめとするローデ・シュワルツの多くの測定器とソフトウェアパッケージ(R&S®VSE ベクトル信号解析ソフトウェアなど)には、ユーザー定義周波数応答補正機能が用意されています(R&S®FSWではR&S®FSW-K544 オプション)。このオプションは、与えられた任意の周波数応答(一定の利得または損失を含む)を補正するフィルターを適用します。

外部LNAの例では、このデバイスのSパラメータをベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)で測定し、LNAがリニアレンジで動作していることを確認した後、データをTouchstoneファイルにエクスポートします。Touchstoneファイル(s2pフォーマットなど)をR&S®FSW-K544 オプションにインポートし、補正を適用します。これにより、R&S®FSWなどに表示される測定結果は、外部LNAがR&S®FSWの内蔵コンポーネントである場合と同一になります。

コンポーネントのデイジーチェーン接続も可能です。R&S®FSW-K544 ソフトウェアは、

複数のコンポーネントのSパラメータマトリクスや、必要な場合には測定器とDUTの入力/出力整合も結合します。LNAまたはコンポーネントを測定セットアップに統合して、その周波数応答を完全に補正するには、以下の手順を実行します。

ステップ1:コンポーネントをVNAで測定し、2ポートSパラメータを記録したTouchstoneファイルをエクスポートします。

ステップ2:TouchstoneファイルをR&S®FSW-K544にインポートし、ユーザー定義周波数応答補正をオンにします。

ステップ3:R&S®FSWの測定アプリケーションでDUTを測定すると、コンポーネントは完全に補正されます。

ユーザー定義周波数応答補正を使用すれば、Sパラメータを指定するだけですべてのコンポーネントを「スマート化」することができます。

追加LNAの特性評価と補正
追加LNAの特性評価と補正
測定結果
測定結果