Application Notes

タイムサイドローブ測定によるレーダーシステムの性能の最適化

R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザは、タイムサイドローブを測定して解析することにより、圧縮レーダー信号やレーダー・ハードウェア・コンポーネント/システムを最適化できます。レーダーシステムの開発者は、再現性の高い自動測定を使用することにより、デザインの機能を強化し、デザインを短時間で検証することができます。

FSW シグナル・スペクトラム・アナライザによる効率的なパルス圧縮測定
R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザによる効率的なパルス圧縮測定
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課題

レーダーアプリケーションでは、優れたレンジ分解能、高エネルギー、低ピークパワー出力の利点を組み合わせるために、多くの場合、パルス圧縮が使用されます。これを実現するために、時間帯域幅積が1よりはるかに大きいレーダー波形(通常は、パルス周波数信号または位相変調信号)が使用されます。レーダーの受信チャネルの対応する整合フィルターは、レーダーエコー信号を自動的に圧縮し、ピーク値をパルス圧縮比近くまで上げます。パルス圧縮フィルターの出力は、タイムドメインで大きなピーク値を持つ高速パルスになります。

デジタルパルス圧縮フィルターを使用するレーダーシステム
デジタルパルス圧縮フィルターを使用するレーダーシステム
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残念ながら、この手法では、パルス伝送時間が長くなるため、レーダーのブラインドレンジが増加します。また、圧縮フィルターに不整合(ambiguity関数)がある場合はS/N比が低下するため、ドップラー測定に影響が及びます(不確定性関数)。さらに、レンジドップラーカップリングが発生し、エコー信号のドップラーシフトが距離測定の確度に影響を与える可能性があります。展開されたパルスの自己相関関数には、メインピークが含まれるだけでなく、整合フィルターの出力にタイムサイドローブが現れ、より小さいエコー信号を覆い隠してしまったり、間違ってアラームが発生する可能性があります。パルス圧縮性能は、システムのデザインやコンポーネントだけでなく、レーダー波形の影響を受けます。このため、制御可能で再現性が高く、時間の短縮が可能なテスト環境が、最高の性能を実現するための鍵となります。これは特に、優れた検出確率、高い確度、距離分解能、ドップラードメイン分解能を目標とするマルチファンクションレーダーに当てはまります。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザにR&S®FSW-K6 パルス測定オプションとR&S®FSW-K6S タイムサイドローブ測定オプションを搭載すれば、パルスパラメータだけでなく、パルス圧縮も効率的に解析できます。このソリューションを使用すれば、レーダー・デザイン・エンジニアは、再現性の高い自動測定を使用して、レーダー信号、信号処理、コンポーネントを検証し、最適化することができます。さらに、意図的なエコー信号の歪みなどの信号の乱れも、簡単な方法で検証できます。このテストセットアップでは、レーダートランスミッターをR&S®FSWのRF入力に接続します。デジタルI/Q(iq-tar)フォーマットの理想波形がアナライザにロードされ、パルス圧縮フィルターとして動作します。理想波形は、R&S®FSWを使って合成して作成したり、あらかじめ記録しておくことができます。

実際に測定されたレーダーパルス波形は、理想I/Q波形と相互相関が取られます。理想のパルスが測定された場合は、2つの波形は同じで、同じ狭いメインローブ曲線を示します。しかし実際には、I/Q変調の不正確さ、位相雑音、ステージ間のVSWRなどが原因で、2つの波形は異なります。波形が大きく異なれば異なるほど、圧縮比の効果は小さくなり、タイムサイドローブが発生し、レーダーシステムの性能が低下する可能性があります。

測定波形と理想波形に違いがあると、メインローブだけでなく、サイドローブも発生します。相互相関関数は、R&S®FSW上に表示される相関振幅グラフによってクリアに視覚化されるので、効率的に評価できます。

メインローブ幅、サイドローブ抑圧、サイドローブ遅延、メイン/サイドローブ総合パワー、ピーク相関、メインローブの周波数/位相などの主要なパルスパラメータも自動的に測定され、表示されます。

R&S®FSWにパルス測定オプションとタイムサイドローブ測定オプションを搭載すれば、レーダーシステムのデザイナーやエンジニアは、パルス圧縮波形、コンポーネント、システム全体を効率的に最適化、検証、テストできるので、優れたレーダー性能を実現できます。

R&S®FSW
R&S®FSWは、リニア周波数変調波形のパルス圧縮パラメータに加えて、相関振幅/周波数/位相誤差トレースを表示します。
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R&S®FSWは、リニア周波数変調波形のパルス圧縮パラメータに加えて、相関振幅/周波数/位相誤差トレースを表示します。

特長

  • 周波数レンジ:2 Hz~90 GHz、(外部ミキサーの使用により最高500 GHz)
  • 最大8.3 GHzの広い解析帯域幅
  • -140 dBc(1 Hz)の小さい位相雑音(10 kHzオフセット、1 GHz搬送波)

主な利点

  • ユーザー独自の波形の解析に使用可能
  • 設定が簡単で、測定結果を短時間で取得可能
  • パルスおよびパルス圧縮の自動検出、測定、解析