Application Notes

オシロスコープを用いた電流-電圧特性

課題

電流-電圧特性を解析すれば、短時間で異常なコンポーネントを特定できます。コンポーネントテスタは、このような目的に非常に有用です。テスタを使用すれば、キャパシタ、抵抗、トランジスタ、サイリスタ、インダクタ、ツェナーダイオードなどのダイオードや、これらのコンポーネントで構成された整流器のような回路を短時間でテストできます。しかし、多くの場合、コンポーネントテスタは入手が容易ではありません。

電子計測ソリューション

R&S®RTC1000オシロスコープには、コンポーネントテスタが内蔵されています。テスタ内部の信号発生器は、50 Hzまたは 200 Hzの正弦波を指定された振幅(最大9 V)で電流(最大10 mA)を制限した状態でDUTに印加します。このモードでは、オシロスコープはA/Dコンバーターを使用してコンポーネントの影響を受けた信号をデジタイズし、それらを電流対電圧信号として表示します。

動作原理

動作原理は、線形パッシブコンポーネントを例にすることで簡単に説明できます。図1は、2.1 kΩ抵抗をコンポーネントテスタに接続した時のI/V特性です。コンポーネントの線形動作がはっきりと表示されており、 電流は、電圧の増加に伴って線形に増加しています。例えば、電圧が4 Vの時の電流は約2 mAです。オームの法則により、抵抗値は約2 kΩです。

次に別の抵抗を使用して、電流と電圧の線形関係と実際の抵抗値を確認します。図2は、別の抵抗をコンポーネントテスタに接続した時のI/V特性です。特性の傾きが急峻になっているので、抵抗が2.1 kΩの時よりも多くの電流が同じ電圧で流れているはずです。オームの法則により、2つ目のコンポーネントの方が抵抗が低いことがわかります。0.9 Vの時の電流は、約8 mAです。よって抵抗値は、約110 Ωです。R&S®RTC1000 オシロスコープのコンポーネントテスタでは、キャパシタのような非線形パッシブコンポーネントの特性も表示できます。図3は、0.1 μFのキャパシタをテスタに接続して50 Hzの信号で最初にシミュレートした時の結果です。結果の曲線が楕円形になっていることから、非線形特性を容易に把握できます。

I/V特性の周波数依存は、スティミュラス周波数を200 Hzに変更するだけで表示できます。キャパシタの抵抗は、以下の式で計算されます。

この式により、キャパシタンスが一定の時、周波数が上昇すると抵抗が低下することがわかります。図4の曲線は、0.1 μFのキャパシタを200 Hzの信号でシミュレートした結果です。キャパシタのリアクタンスを計算する式のとおり、明らかに楕円形が小さくなっています。

また、コンポーネントテスタでは、ダイオードのようなアクティブコンポーネントの準静的特性も表示できます。静的条件下で単純なシリコンダイオードの場合、約0.4 Vで順方向に電流が流れ始めます。図5は、このような通常の動作を示しています。電流は約0.5 Vの電圧を超えたところで、急激に増加しています。

R&S®RTC1000のコンポーネントテスタを使用すれば、ツェナーダイオードのような複雑なコンポーネントの電流-電圧特性も、容易に表示/解析できます(図6)。

図1:2.1 kΩ2.1 kΩ抵抗のI/V特性

図2:110 Ω抵抗のI/V特性

図3:0.1 μFキャパシタのI/V特性(50 Hzのスティミュラス信号)

図4:図3と同じ0.1 μFキャパシタのI/V特性(ただし200 Hzのスティミュラス信号)

図5:シリコンダイオードのI/V特性評価

図6:ブレークダウン電圧が約5 Vのツェナーダイオードの特性

まとめ

コンポーネントテスタを使用すれば、開発者や学生を含むさまざまなユーザーがアクティブ/パッシブコンポーネントの信号特性を容易に解析できるようになります。開発者は短時間でコンポーネントの特性を確認でき、学生は理論的な知識を実際に適用して確認できます。

コンポーネントテスタを内蔵したR&S®RTC1000オシロスコープは、どのような開発/教育環境でもご利用いただけます。本機は、8個のフル機能デジタル入力、最大5種類のシリアルバスに対応できるオプションのトリガ/デコード機能、拡張測定機能、高性能FFT機能を搭載できます。