MXOオシロスコープの高速FFTを用いたEMIデバッグ

高度なFFT機能に加えて優れた感度とダイナミックレンジを兼ね備えたMXOオシロスコープは、電磁波障害(EMI)のデバッグに最適です。RFの時間相関解析により、電気回路や基板から発生するEMIを迅速かつ正確に検出して解析します。MXOオシロスコープの高速性能により、デバッグ技能の向上を図ることができます。

MXOオシロスコープの高速FFTを用いたEMIデバッグ

課題

EMI/EMC規制は、電気/電子機器ユーザーに対して信頼性の高い動作と安全性を保証するために役立っており、設計者は製品を規制の制限内に収めるために多大な時間を費やす必要があります。

設計やプロトタイプ作成の段階では、製品がコンプライアンステストを受ける前に、デバッグ測定を実行してEMI/EMCに関する潜在的な課題を特定し、解決するのが一般的な方法です。こうした積極的なアプローチにより、コンフォーマンス違反のリスクを大幅に軽減することができます。その目的は、さまざまなツールやトラブルシューティング手法を用いて、適合結果に影響する可能性のあるエミッションの発生源を効率的に特定することです。デバッグプロセスを合理化する包括的なソリューションとして、RFの時間相関測定機能を備えたMXOオシロスコープのようなオシロスコープを検討する必要があります。

UIスペクトラム
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ローデ・シュワルツのソリューション

MXOオシロスコープでは、アナログ信号特性、デジタルタイミング、バストランザクション、周波数スペクトラムの同期表示が可能です。これを実現しているのは新しいASICです。ハードウェアでRF測定を処理することで、低速のFFT演算による従来の制限を克服しています。これは、スペクトラム解析で使い慣れた制御(中心周波数、スパン、RBW)を提供するユーザーインタフェースによってさらに強化されています。

  • タイムドメインと周波数ドメインで表示を個別に最適化可能
  • 高速なスペクトラム表示更新速度
  • 信号経路の分岐なしで、波形ビューとスペクトラムビューの両方に信号を表示可能
  • RFトリガ機能と時間トリガ機能により、時間イベントと周波数イベントを容易かつ正確に相関付け可能
  • ピークリストと対数‐対数スケールにより、EMIを容易に比較可能
FFTゲーティング
EMIピーク2

優れたRF性能:広いダイナミックレンジと高い感度

MXOオシロスコープはEMIデバッグ向けに、測定帯域幅全体で広いダイナミックレンジと500 μV/divという入力感度を実現しています。これにより、微弱なエミッションでも検出することができます。12ビットADCと18ビットHDモードにより、垂直軸の精度が向上しています。ハードウェアアクセラレーテッドFFTを使用すると、高速な収集レートや発生頻度に応じたスペクトラム表示のカラーコード化といった機能により、周波数ドメインでの解析が高速になり応答性も向上します。

EMIデバッグ向けの追加機能

  • 超高速FFT解析(>45 000 FFT/sの更新速度)により、スプリアスや発生頻度の低いスペクトラムイベントを捕捉可能
  • 対数表示とdBμVスケール:EMCテストラボの結果との比較や、CISPR規格に基づいたリミットラインを用いた確認が容易
  • 自動ピークリスト測定による高速な結果表示:FFTでマーカーが付加された周波数ピークの自動測定、テーブルでのリスト表示
  • トレースの最大/最小ホールドおよびアベレージング:統計トレースが、スペクトラムエネルギーの最大値、最小値、平均値を記録

ゲーティッドFFT:周波数と時間の容易な相関

オシロスコープのゲーティッドFFT機能では、捕捉したタイムドメイン信号のユーザー定義領域に対してFFT解析を実行できます。この時間ウィンドウを信号全体に移動させることで、タイムドメイン信号のどのセグメントがスペクトラムのどのイベントに対応するかを知ることができます。例えば、スイッチング電源からの不要なエミッションと、スイッチングトランジスタのオーバーシュートを関連付けることも可能です。

MXO5とHZ-15プローブ
MXO5とHZ-15プローブ
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E/H近磁界測定用のプローブセット

伝導性エミッション測定では通常、電源インピーダンス安定化回路(LISN)からの出力ノイズを測定します。しかし、これには被試験デバイス(DUT)のすべての伝導性ノイズが含まれています。DUT内部のエミッション発生源を特定するには、近接した磁界と電界を検出するために近磁界プローブが有効です。

R&S®HZ-15 近磁界プローブは、30 MHz~3 GHzの周波数範囲に対応しています。R&S®HZ-16 アンプを使用すれば、低周波を最小9 kHzまで拡張可能です。近磁界プローブセットには、電気的にシールドされた各種プローブチップが付属しており、これらはさまざまな測定向けに設計された特殊な形状をしています。

高速なFFTが重要な理由

多くの最新オシロスコープは、波形に関するスペクトラム情報を提供する手段としてFFTをサポートしていますが、演算が必要なため、多くの場合、収集速度が低下してしまいます。ほとんどのオシロスコープは、1 FFT/s~100 FFT/s程度まで遅くなる可能性があります。このように速度性能が低下すると、測定器のブラインドタイムが長くなり、波形収集と次の収集の間の重要なスペクトラムイベントが欠落してしまいます。近磁界プローブでスペクトラムエミッションを特定する際には、発生する可能性のあるノイズを検出するためにユーザーが数秒間プローブを当て続ける必要があるため、ブラインドタイムがフラストレーションの原因になる場合があります。
MXOオシロスコープは、FFT処理のハードウェア実装を可能にするパワフルなASICを搭載しています。これにより、45 000 FFT/sを上回る超高速な演算が可能になります。ブラインドタイムが最小限に抑えられ、高い応答性により、近磁界プローブによるエミッションの検出が簡単になります。ユーザーは、プローブでDUTをスキャンして、どこでいつノイズが問題になる可能性があるのかを把握することができます。

何から始めるのか

EMI問題の原因を特定するには、エネルギーの発生源を特定して、そのエネルギーがどのように放射されているのかを理解する必要があります。EMI問題の一般的な原因には、以下のようなものがあります。

  • LCDエミッション
  • グランドインピーダンス
  • コンポーネントの寄生成分
  • ケーブルのシールド不良
  • 電源フィルター
  • スイッチング電源(DC/DCコンバーター)
  • 内部結合の問題
  • 不適切な信号反射
  • 金属製筐体内のESD

まず、H近磁界プローブを使用して、エネルギーの発生源を特定することから始めます。ループ面を通過する磁束の方向を特定できるようにプローブ位置を調整します。導体の周辺でH近磁界プローブを動かすことで、エネルギーの発生源を特定できます。次に、より径の小さいプローブを使用してさらに狭い範囲を集中的に探索します。
EMI問題と電気的イベントの一致を検証することは、EMI診断において間違いなく最も時間のかかるプロセスです。MXOの高速FFTでは、スペクトラムイベントと時間イベントを容易に関連付けることができます。MXO 5シリーズ オシロスコープでは複数の各FFTに対して独自のRF設定を行うことができるので、DUTの位置が異なるスペクトラムイベントを比較しながらさらにデバッグすることができます。

まとめ

EMIは捕捉が難しく、EMC規格に適合できないと製品開発が遅れる可能性があります。EMIデバッグを開発の早い段階で行えば、早い段階で問題を検出して回路の性能を修正することができます。

パワフルなFFT信号処理、高い入力感度、豊富な収集/解析機能を備えたMXOオシロスコープは、開発者が電気回路のEMIデバッグを行うための有効なツールです。オシロスコープのハードウェアアクセラレーテッドFFTとカラーコード化されたスペクトラム表示を使用すれば、収集された信号におけるスペクトラム成分の発生頻度について全体像を把握することができ、EMIの発生源を短時間で特定することができます。FFT機能はスペクトラム・アナライザと同様の方法で制御できるので、ユーザーは、タイムドメインの設定を気にすることなく、周波数ドメインを容易に探索することができます。