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ハードスイッチング方式ハーフブリッジ構成でのテストカバレッジの拡大

電源コンバーター/インバーターのデザインで高いパワーレベルを実現するには、通常、ハードスイッチング方式のハーフブリッジ構成をベースにします。こうしたセットアップでは、ユーザーは、適切なスイッチング操作によるシュートスルーイベントの防止に、特に注意を払う必要があります。R&S®RTEおよびR&S®RTO オシロスコープを使用して複雑なリアルタイムトリガ条件を設定すると、コンバーター/インバーターシステムのテストカバレッジが拡大し、信頼性が向上します。

R&S®RTO オシロスコープ
R&S®RTO オシロスコープ
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課題

ハーフブリッジ構成でのハードスイッチングは、特に高いパワーレベルで効率的に電力変換するための一般的な方法です。SiCデザインのようなスイッチング速度の向上により、スイッチノードからゲートへの寄生結合がますます重要になっています。これにより、不要なハイ側ゲートのグリッチやハーフブリッジの両方のトランジスタの導通によるターンオン条件が同時に起こります。このようなシュートスルー条件では、トランジスタが破損することがあります。ハイパワーデザインのロバスト性(信頼性)を向上させることは、安全性に関わる重要なテーマです。ハーフブリッジのハイ側ゲートに、重大なグリッチがないことを確認することが重要です。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®RTOおよびR&S®RTE オシロスコープには、高度で使いやすいデジタルのトリガユニットが搭載されています。アナログのトリガユニットとは対照的に、デジタルのトリガユニットでは捕捉経路のサンプリング値を使用し、デジタルドメインでトリガイベントを決定します。従来のオシロスコープで使用されていた独立のアナログトリガ経路の欠点がなくなります。

重大な動作ポイントを識別するためのデジタルトリガの利点
ローデ・シュワルツのソリューションの特長は、以下のとおりです。

  • 完全にリアルタイムのA/B/Rトリガ条件の設定における高い柔軟性
  • 各信号に対するトリガ感度を最適化するための、トリガヒステリシスの個別設定
  • 小さく、不要なグリッチを捕捉するための、全帯域幅における高いトリガ感度
  • 安定したトリガのための非常に低いジッタ値

ハイ側ゲート信号についてトリガ値を最大許容値に調整するとき、ユーザーはこの条件に違反するあらゆるスイッチングイベントを容易に識別することができ、シュートスルーのリスクが低下します。リアルタイムの動作により、重大なイベントを見落とすことがありません。検証テスト中にさまざまな負荷および環境の条件でDUTを動作させることで、重大な条件を識別してシュートスルーのリスクを解消することが可能になります。

測定セットアップ

シュートスルーイベントのリスクを検証するには、ハイ側とロー側のゲートからソースへの電圧を同時に測定する必要があります。ユーザーは、対応するトランジスタが意図せずにオンになるのを防ぐために、ハイ側ゲート信号に所定の電圧レベルを超えるグリッチがないことを確認する必要があります。この作業には、複雑なトリガセットアップと非常に高いトリガ精度が必要で、トリガしきい値を精密に定義する必要があります。

トリガセットアップ:トリガAの負のスロープでのエッジイベント
トリガセットアップ:トリガAの負のスロープでのエッジイベント
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トリガセットアップ:トリガBのグリッチイベント
トリガセットアップ:トリガBのグリッチイベント
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トリガセットアップ:トリガリセットのタイムアウト条件
トリガセットアップ:トリガリセットのタイムアウト条件
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トリガ設定

オシロスコープをDUTに接続したら、ユーザーはオシロスコープのアプリケーションダイアログですべての関連するトリガオプションを設定することができます。

  • 2つのイベントをシーケンスで定義できるトリガシーケンスを選択します
  • 最初のトリガイベント(A)をネガティブ・エッジ・トリガとして定義し、スイッチT2でのゲートからソースの電圧の立ち下がりエッジを捕捉します。この条件に適したトリガレベルを定義します。このトリガイベントでは、ハーフブリッジの連続動作中のロー側スイッチングデバイスのすべてのスイッチオフイベントを捕捉します。
  • シーケンスの2つ目のトリガイベント(B)を定義し、スイッチT1でのゲートからソース端子のグリッチを検出します。このトリガは、最初のトリガイベント(A)が起きた後にのみアクティブになります。グリッチレベル、極性、幅の値を、ワーストケースの状態に応じて定義します。
  • グリッチイベントが発生しなかった場合に指定したタイムアウトが経過したら最初のプレトリガイベントをリセットするためのリセット条件を定義します。ロー側スイッチの最大オンタイムは、トリガ設定でタイムアウト値を定義します
測定セットアップ
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アプリケーション測定結果

シュートスルーの原因になる重大なゲート・タイミング・イベントを自動識別する方法を実演するために、対称のハーフブリッジ回路に基づく500 WのDC/DCコンバーターを使用します。この被試験コンバーターは、入力電圧が36~72 Vで、3.3 Vの出力電圧を発生します。スイッチング周波数は400 kHzです。データシートによると、MOSFETゲートの最低しきい値電圧は2 Vです。

安全マージンを特定するため、ハイ側ゲートのグリッチトリガのトリガレベルを2 Vからトリガイベントが発生するまで引き下げます。1.88 V(緑のボックス)で、測定結果に示すようにトリガイベントが発生しました。これはつまり、安全マージンが120 mVであることを意味します。この値は、実際のアプリケーションによって異なります。コンバーターまたはインバーターのシステムの信頼性としてこれが十分かどうかを決定する必要があります。

トリガ機能に加えて、ユーザーは回路を詳細に解析することができます。例えば、変圧器のリーケージインダクタンスとスイッチの出力キャパシタンスの間の共振周波数(青のボックス)などです。

まとめ

R&S®RTOおよびR&S®RTE オシロスコープのデジタル・トリガ・システムには、リアルタイムのトリガ機能が搭載されています。デジタルトリガは精度が高く、トリガジッタが非常に低いため、高いトリガ感度が全帯域幅で得られます。これらの利点に加え、高いダイナミックレンジや直感的なユーザーインタフェースなどの優れた特長も兼ね備えているため、ブリッジ構成のコンバーターのデザインをデバッグし、解析するための強力なツールとして活用できます。

ハーフブリッジ構成の測定結果
ハーフブリッジ構成の測定結果
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