車載TVアンテナの効率的なテスト

課題

今日の自動車には、複数のアンテナが搭載されています。最近では、デジタルTV用のUHFアンテナが追加されました。自動車のアンテナはルーフの中心に垂直に立てるのが機能的には最適ですが、自動車のデザインでこれは通常許されません。デザインと機能とをうまく両立させる必要があります。

このため、実際の運用状況でのUHFデジタルTVアンテナの受信レベルのテストが一層重要になります。これまで、ドライブテストは受信状況がわかっているエリアで実施する必要がありました。通常、受信レベルは、プログラムの品質を主観的に評価することにより、間接的に評価されました。この方法は時間がかかり、不正確で再現が困難です。

必要なのは、ドライブテストの回数を最小限に抑えるテスト手法です。受信に問題が発生した場合は、その問題がテスト対象のアンテナに起因しているのか、ネットワークカバレッジが十分でないことに起因しているのかを特定できる必要があります。車載アンテナの受信レベルと基準アンテナの受信レベルの差が、測定ごとに表示される必要があります。

電子計測ソリューション

車載アンテナの受信レベルは、品質が既知の基準アンテナの受信レベルに対して測定されます。基準アンテナは、受信状況が最適になるように設置されます。多くの国では、垂直偏波の放送信号が送信されています。これに対する最適なアンテナ位置は、自動車のルーフの中央に垂直に立てる方法です。測定には、2台のR&S^®ETLまたは2台のR&S^®ETC TVアナライザを使用します。一方のアナライザ（スレーブ）でテスト対象のアンテナの受信レベルを測定し、もう一方（マスター）で基準アンテナの受信レベルを測定します。

自動車の位置を継続的に記録できるように、マスターアナライザにはオプションのGPS受信機を接続します。自動車の電気系統からアナライザにAC電源を供給する場合は、外部電源インバーターを使用します。R&S^®ETLは、内蔵電源または12 V DC入力のDC電源を使用することもできます。

測定は、R&S^®BCDRIVEブロードキャスト・ドライブテスト・ソフトウェアで制御されます。このソフトウェアは、2つのアナライザを同期し、GPS受信機から提供される車両位置データを記録し、すべての測定データ（タイムスタンプを含む）を1秒間隔で保存します。100 MBの空きメモリ容量があるため、何時間もの測定に十分に対応できます。2台のR&S^®ETLを使用する場合、ソフトウェアはマスター上で直接実行できます。制御用のPCは必要ありません。

結果の表示

ドライブテスト後、R&S^®BCDRIVEブロードキャスト・ドライブテスト・ソフトウェアから測定データがエクスポートされ、KMZ形式に変換されてGoogle Earthに表示されます。受信状況の悪いエリアを簡単に見つけることができます。

基準アンテナと車載アンテナの受信レベルを比較することで、以下のように受信の問題の原因が明らかになります。

• 車載アンテナの受信レベルが悪く、基準アンテナの受信レベルが強い場合は、問題の原因は車載アンテナにあります。
• 両方のアンテナの受信状況の悪い場合は、受信場の強度が不十分で、車載アンテナは正常に機能しています。

R&S^®BCDRIVEブロードキャスト・ドライブテスト・ソフトウェアでは、CSV形式で測定データをエクスポートして、Excelなどのプログラムで測定データを処理することもできます。

R&S^®ETL TVアナライザのオプションは、次の放送規格で使用できます。DVB-T、DVB-T2、ISDB-T、T-DMB、DTMB、ATSCおよびATSC-M/H、DAB、およびVHFラジオ放送。R&S^®ETCコンパクトTVアナライザは、DVB-T、DVB-T2、およびISDB-T規格をサポートしています。そのため、このアプリケーションは世界各地のほとんどの国で使用できます。

R&S®BCDRIVE ブロードキャスト・ドライブテスト・ソフトウェアは、車載アンテナと基準アンテナの受信特性をGoogle Earthで明確に比較できるように、測定結果を処理します。上のスクリーンショットでは、テストポイントが円で示されています。円の内部は基準アンテナの受信レベルを表し、外縁は車載アンテナの受信レベルを表します。凡例に示すように、レベルは色で示されます。この例では、基準アンテナの受信レベルは、車載アンテナの受信レベルより約15 dB高くなっています。