プロダクトマネージャー、Erik Dobberkau
私はR&S®CLIPSTERのプロダクトマネージャーです。このソリューションに関する長年の作業で最も重要だったのは、超高速のイノベーションと品質に対する要求をテクノロジー面でバランスさせることでした。研究開発分野のユーザーは自由に実験できる柔軟な製品を望むのに対して、プロダクション分野のユーザーは製品を全面的に信頼できることを求めます。われわれはこのバランスの実現に全力を注ぎ、ほとんどの場合に成功してきました。
さまざまな分野での活躍
このチームとその開発アイデアについて紹介します。映画や連続ドラマは、魔法のような力を持っています。観客はその中に完全に引き込まれ、身の回りで起きていることを忘れてしまいます。私たちが、これほど引き込まれる理由は何でしょうか。まず、優れた脚本、俳優、演出が必要です。編集や音声も重要な要因です。そして、最後の仕上げとなるのがポストプロダクションです。
撮影や編集に予定より時間がかかったとしても、プレミアを延ばすことはできません。その場合は、ポストプロダクションで遅れを取り返す必要があります。「ホビット」のボーナス映像を見ると、監督であり脚本家でもあるPeter Jackson氏とそのクルーは、ワールドプレミアの数時間前まで音声の作業に取り組んでいます。その音声が実際にプレミアに間に合った理由の1つが、R&S®CLIPSTERマスタリングワークステーションなのです。ハノーバーの開発者の1人Mike Coenenは、次のように語っています。「R&S®CLIPSTERのDolby Atmos™サポートが間に合っていなかったら、レンダリング速度が遅すぎたら、あるいはワークステーションの全体的な信頼性が低かったら、『ホビット』のワールドプレミアには1つ前のサウンドミックスを使わざるを得なかったでしょう」。
デジタル化はこの業界を根本から変えました。デジタルフォーマットがアナログフィルムに取って代わり、画像や音声の編集の柔軟性が大幅に高まり、フィルムのリールや配布用のコピーは過去のものとなり、データをほんの数秒で世界中に送れるようになったのです。R&S®CLIPSTERチームは、この変化をもたらすために貢献しています。開発者Jeremi Horstは次のように語ります。「われわれは、テクノロジーの変革を利用して、R&S®CLIPSTERによってポストプロダクションのワークフローをお客様のニーズに適合させることができました」。現在重要なのは、UHDや3Dオーディオ、多言語バージョン、ロード時間の最小化です。Jeremi Horstとその同僚たちが開発したR&S®CLIPSTERワークステーションは、バージョニングとマスタリングに関する優れたサポートを提供するため、ハリウッドのほとんどの映画やシリーズのプロダクションに使用されています。
ビデオストリーミング業界は、ますます重要性を増しています。国際的に知られているいくつかのスタジオと同様、ビデオ・ストリーミング・サービスでは、映画や連続ドラマのマスタリングとバージョニング用に、IMF(Interoperable Master Format)と呼ばれる異なるフォーマットが用いられています。ハノーバーの開発者たちはこのプロジェクトにも協力しており、R&S®CLIPSTERはIMFパッケージの生成に広く用いられているソリューションです。
Netflixは、IMFを一貫して採用した最初の企業の1つです。R&S®CLIPSTERは、Netflixによって認定され、ストリーミングサービスのコンテンツプロバイダーに対する推奨マスタリングワークステーションに指定されました。アニメーションや漫画や賞を獲得した連続ドラマを配信している他の国際的なストリーミングサービスの多くもIMFを採用しているため、ハノーバーの開発プロジェクトの成果は何億人もの加入者に届けられています。
デジタル化の副作用の1つは、さまざまな音声/ビデオ/データフォーマット、解像度、カラーシステムの存在に伴う混乱です。デジタルシネマの標準を確立するため、米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)は、デジタル・シネマ・パッケージ(DCP)と呼ばれるパッケージフォーマットを定義しました。これには、映画のすべてのメディアおよびバージョン要素が含まれています。Jeremi HorstとMike Coenenが率いるチームは、SMPTEと密接な協力を行い、チームが開発したワークステーションはDCPパッケージ用の標準となりました。
2010年から普及が始まった4K超高解像度映像は、R&S®CLIPSTERによって2005年にすでに現実化されていました。このパイオニア精神に忠実に、開発チームは現在も将来を見据えた仕事を続け、厳選した分野に集中しています。プロダクトマネージャーのErik Dobberkauはこう語ります。「われわれは自分たちのテクノロジーを手動と自動の両面で徹底的にテストして、お客様の観点を完全に理解しようと努めます。お客様が新しい機能を前もって試せるように、ソフトウェアのベータバージョンを提供しています」。お客様は常に、先進的な方法を支持してきました。Mike Coenenは語ります。「複数の製品やプロジェクトを並列に管理するには、作業方法が高度な要求を満たす必要があります。そのために、最初からアジャイルソフトウェア開発の採用が不可欠でした」。