WCDMAの5 MHz動作の可能性をフルに活かすため、HSPAベースの無線ネットワークの性能は、スペクトラム効率、ピーク・データ・レート、遅延に関してさらに強化されています。3GPPリリース7で規定されたHSPA+では、ダウンリンクMIMO動作、高次変調(ダウンリンク64QAM、アップリンク16QAM)、ネットワーク内で多数の「常時オン」ユーザーをサポートするためのプロトコル改良が導入されています。ピーク・データ・レートは、ダウンリンクで28 Mbit/s、アップリンクで11.5 Mbit/sに達し、ラウンドトリップ時間は50 ms未満です。
3GPPリリース8では、ダウンリンクのデュアルキャリア動作、MIMOと64QAM変調の組み合わせといった、HSPA+のさらなる改良が規定されています。これらの機能により、ダウンリンクで42.2 Mbit/sの最大データレートが実現されます。また、回線交換型Voice over HSPAにより、HSPAパケット交換型無線アクセスネットワークで、音声サービスの最適化されたサポートが実現されます。さらに、CELL_FACHステートでの共通E-DCHリソースの割り当てと、アップリンクでのレイヤー2機能拡張の適用により、遅延がさらに改善されています。
3GPPリリース9では、引き続き主にデータレートが改善されています。デュアルセルHSUPA機能は、アップリンク方向で2つの搬送波周波数をサポートすることで、アップリンクのデータレートを23 Mbit/sに向上させます。これに加えて、ダウンリンク方向では、デュアルキャリア動作とMIMO機能の組み合わせにより、データレートは最大84.4 Mbit/sに達します。スペクトラムの柔軟性も向上しており、デュアル・バンド・デュアル・セルHSDPA機能により、異なる周波数バンド内の2つの搬送波周波数にリソースを割り当てることができます。最新の3GPPリリース10仕様では、4キャリアHSDPAが導入されています。これは、1台のエンドユーザーデバイス用に4つの搬送波周波数をプールすることで、20 MHzの帯域幅を実現するものです。
UMTS WCDMA/HSPA/HSPA+は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)で規定されています。3GPPリリース99には、最初のWCDMA仕様が含まれています。HSDPAとHSUPAは、それぞれ3GPPリリース5と3GPPリリース6で導入されました。HSPA+は、3GPPリリース7、8、9、10に含まれています。