R&S®QAR50の位相結果を用いた角度誤差推定
最新の測定器は、空間的に分解された伝送位相を提供し、これは位相均一性の評価やしきい値の定義に利用できます。
最新の測定器は、空間的に分解された伝送位相を提供し、これは位相均一性の評価やしきい値の定義に利用できます。
課題
自動運転車においては、物体位置を正確に検出することが非常に重要です。角度推定にわずかな偏差が生じるだけでも、それが後段の意思決定において誤った結論につながる可能性があります。例えば、到来角(AoA)の誤差は、レドームの不均一性によって生じることがあります。レドームとセンサの相互作用は複雑であるため、その正確な挙動を予測することは困難です。後続の工程で適格なレドームのみが確実に使用されるようにするには、エンドオブライン(EOL)テストに適した信頼性の高い測定手法が必要です。
ローデ・シュワルツのソリューション
R&S®QAR50 車載用レドームテスターは、車載用レドームテストのための高速かつ正確なコストパフォーマンスの高いソリューションです。R&S®QAR50にR&S®QAR50-K20 均一性解析(位相マスク)オプションを組み合わせることで、ラボおよび製造現場の双方で角度誤差を導出することができます。
本手法の適用性を検証するため、R&S®QAR50で得られた測定結果および計算結果は、R&S®RadEsT レーダーエッセンシャルテスタによって相互検証されます。R&S®RadEsTは、多様で包括的な車載用レーダーターゲットシミュレータであり、ユーザー定義のレーダーエコーをさまざまな角度で生成できます。
技術的背景
最初のステップでは、レーダー信号処理とAoA推定がどのように取得されるかを確認します。
放射された電磁波は空間中を伝搬し、信号経路上の物体によって反射されます。ここでは送信系は無視し、レーダーの受信側に焦点を当てます。この簡素化されたケースでは、遠方界条件下にある単一の点散乱体を仮定します。すなわち、平面波面が受信機に到達することになります。その点散乱体が視野の中心に正確に位置していると仮定すると、各アンテナ素子(a1 ~ a5)は同じ位相の平面波(φ1=φ2=φ3など)を受信します。(図1参照)。
中央以外に配置された反射体の場合、波のAoAにより各受信素子で異なる位相が生じます。
波面の入射角αは、位相差Δφおよびアンテナ間の物理的距離dを用いて次のように計算されます。

ここで、φ=0°(図1参照)、λ ~ 3.9 mm(77 GHzレーダー)です。
この単純なケースでは、αestimate=0となります。
受信機前面にある不均一または不適切なレドームは波面に影響を与え、各受信アンテナ素子における位相(φ1 ~ φ5)を変化させます。これによりAoA推定に誤差が生じます。
実験的検証のため、信号経路に挿入されたくさび形レドームを考えます。このレドームは周囲の空気とは異なる誘電率をもつため、電磁波の伝搬速度が異なります。くさびの厚さは撮像領域全体で均一ではないため、波を屈折させ、波面を歪ませます。材料特性および誘電率の詳細については、アプリケーションカード「車載アプリケーションのためのポリマー材料特性評価」(PD 3647.5084.92)を参照してください。この現象を図3に示します。
これまで直交して到達していた波面は屈折し、オフセット角Δαを伴って受信アンテナに到達します。このオフセットはΔαで表されますが、この例では実際の入射角αは依然として0 °です。レーダーはAoAを直接測定できません。代わりに、各受信アンテナにおける波面の位相を検出します。
前述の式に従い、レーダーはAoAを0 °ではなく、アンテナ素子間の位相差Δφの関数として誤って計算します。レドームの形状によっては、計算されるAoAは視野角(FoV)内の位置によって異なる場合があります。検出された位相は、実際のAoA αとオフセット角Δαの重ね合わせとして表されます。

R&S®QAR50は、レーダーの構成や信号処理に関する情報をもたないため、AoAへの影響を直接測定することは困難です。しかし、基本的な受信ビームフォーミング処理を前提とすると、不適切なレドームによって生じるAoA誤差は次のように推定できます。

R&S®QAR50 車載用レドームテスター
自動運転車においては、物体位置を正確に検出することが非常に重要です。角度推定にわずかな偏差が生じるだけでも、それが後段の意思決定において誤った結論につながる可能性があります。例えば、到来角(AoA)の誤差は、レドームの不均一性によって生じることがあります。レドームとセンサの相互作用は複雑であるため、その正確な挙動を予測することは困難です。後続の工程で適格なレドームのみが確実に使用されるようにするには、エンドオブライン(EOL)テストに適した信頼性の高い測定手法が必要です。
R&S®QAR50のグリッド評価において、小さなΔαに対する経験則として、Δα ≈ 0.062 Δφradome /cmの偏差を仮定できます。すなわち、OEMが許容可能とみなす角度誤差を1 °と仮定すると、R&S®QAR50で測定される位相差の最大許容値は、

R&S®RadEsT レーダーエッセンシャルテスタ
R&S®QAR50 車載用レドームテスターは、車載用レドームテストのための高速かつ正確なコストパフォーマンスの高いソリューションです。R&S®QAR50にR&S®QAR50-K20 均一性解析(位相マスク)オプションを組み合わせることで、ラボおよび製造現場の双方で角度誤差を導出することができます。
本手法の適用性を検証するため、R&S®QAR50で得られた測定結果および計算結果は、R&S®RadEsT レーダーエッセンシャルテスタによって相互検証されます。R&S®RadEsTは、多様で包括的な車載用レーダーターゲットシミュレータであり、ユーザー定義のレーダーエコーをさまざまな角度で生成できます。
次のように計算されます。ただし、これが適用されるのは基本的な構成および標準的なビームフォーミング処理のみなので、各レーダー/レドームの組み合わせごとに評価する必要があります。
上記で示した理論的偏差は、実験的検証によって相互検証する必要があります。
図4:実験検証用に作製されたくさびの寸法
実験的検証
実験的検証のため、図4に示す寸法のポリオキシメチレン(POM)製くさびを作製します。
POMの誘電率は、複数の方法によりεr=2.93であることが確認されています。
波面の屈折に関する計算結果は次のようになります。

図1:遠方界条件において中央に配置された点散乱体の方向推定
最初のステップでは、レーダー信号処理とAoA推定がどのように取得されるかを確認します。
放射された電磁波は空間中を伝搬し、信号経路上の物体によって反射されます。ここでは送信系は無視し、レーダーの受信側に焦点を当てます。この簡素化されたケースでは、遠方界条件下にある単一の点散乱体を仮定します。すなわち、平面波面が受信機に到達することになります。その点散乱体が視野の中心に正確に位置していると仮定すると、各アンテナ素子(a1 ~ a5)は同じ位相の平面波(φ1=φ2=φ3など)を受信します。(図1参照)。
中央以外に配置された反射体の場合、波のAoAにより各受信素子で異なる位相が生じます。
波面の入射角αは、位相差Δφおよびアンテナ間の物理的距離dを用いて次のように計算されます。
図5:実験検証用に作製されたくさびの位相マスク画像
まず、理論的に算出された位相差を、実験用POMプレートについてR&S®QAR50を用いて検証します。得られた位相マスクを図5に示します。
グリッドモードを有効にすると、R&S®QAR50は各グリッドセルの平均位相を自動的に出力します。一貫性を確保するため、グリッドサイズは10 mm × 10 mmとしています。各セル間の位相差は以下のように求められます。

図6:車載用レーダーセンサ、くさび形レドーム、およびR&S®RadEsTを用いた実験セットアップ
これにより、平均差は66.6 °/cmとなり、計算値65.3 °/cmと非常に近い値になります。両者の差は製造公差および測定誤差に起因します。
最終検証には、第5世代レーダーセンサとR&S®RadEsT レーダーエッセンシャルテスタを用いたラボセットアップを使用します。テストセットアップの確度を向上させ、すべての測定を適切な遠方界条件下で実行するために、オプションのシールドを使用します。
R&S®RadEsT シミュレータは、レーダーのFoV中心に正確に配置された距離40 mの単一ターゲットを提供するように設定されます。3つのテストを実行します。くさびなしの基準測定と、くさびを反転させて行う2回の測定です。図6に測定セットアップを示します。
前述の経験則に基づき、レーダーは約±4.1 °の誤差を伴うAoAを出力すると仮定します。この誤差の符号は、くさびの向きによって決まります。
以下の表は、上記の経験則によるAoAの予測偏差と、実験セットアップで測定されたAoAの概要を示しています。
| レドームなし | 正の誤差 | 負の誤差 | |
|---|---|---|---|
| 予測値 | 0° | 4.1° | -4.1° |
| 実測値 | 0° | 4.2° | -3.8° |
ここでも同様に、偏差の原因を確実に特定することはできません。これらの偏差は、材料または製造上の欠陥に起因する可能性があるほか、使用した測定器およびセンサの測定の不確かさによる可能性もあります。
まとめ
不完全なレドームによって生じる角度誤差は直接測定することはできませんが、R&S®QAR50-K20 均一性解析(位相マスク)オプションの結果を用いてラボ環境で求められます。
誘電率(εr=2.93)およびくさびの厚さから導出される理論的位相差は65.3 °/cmです。この結果は、R&S®QAR50-K20 均一性解析(位相マスク)オプションで測定された位相差66.6 °/cmとほぼ一致しています。
理論的なAoA誤差(Δαで表記)である4.0 °と、R&S®QAR50-K20オプションを用いて推定されたAoAオフセット4.1 °は、想定される不確かさの範囲内で良好に一致しています。
R&S®RadEsT レーダーエッセンシャルテスタでシミュレートされた第5世代レーダーセンサを用いてこれら2つの値を実験的に検証することで、理論および実験の結果を実環境でも再現できることが示されました。