DC/DCコンバーターの周波数ドメインにおける安定度解析

ローデ・シュワルツのオシロスコープ

DC/DCコンバーターの周波数ドメインにおける安定度解析 - RTM3004

課題

電源回路の安定度を、エージングや温度変化によって変化するパラメータとして測定する必要があります。周波数応答解析は、回路の設計および検証に重要な手段です。電源電圧変動除去比、コンポーネントインピーダンス、開ループ利得などのさまざまな測定によって、全体的な安定度を判断できます。これらの測定には、一般的に、低周波ベクトル・ネットワーク・アナライザが使用されます。開発部門向けの計測器として使用されているR&S®RTM3004のようなオシロスコープでも、このような測定を実行できます。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®RTx-K36 周波数応答解析(ボード線図)オプションによって、オシロスコープでも容易かつ迅速に周波数応答解析を実行できます。R&S®RTx-K36オプションは、オシロスコープの内蔵波形発生器を使用して、10 Hz25 MHzの入力信号を作成します。オシロスコープは、入力信号とDUTの出力信号の比を各テスト周波数で測定し、利得と位相を対数プロットに表示します。

0 dBmの入力信号をベースとしたR&S®RTx-K36のダイナミックレンジは70 dBcを超え(代表値)、この時の振幅雑音は1 dB未満、位相雑音は5 °未満です。R&S®RTM3000 オシロスコープの10ビットADCでこのようなダイナミックレンジを実現するために、離散フーリエ変換のフィルタリング機能とアベレージング機能を使用して広帯域ノイズを除去しています。

制御ループ測定
制御ループ測定

アプリケーション

下の図は、ボード線図プロットオプションがインストールされているR&S®RTM3004 オシロスコープによる、DC/DC降圧コンバーターの制御ループ測定を示したものです。出力信号は変圧器を介してコンバーターのフィードバックループに注入され、信号の測定は注入位置(CH1)と出力(CH2)で行われます。

DC/DC降圧コンバーターの制御ループ測定
R&S®RTx-K36オプションがインストールされたR&S®RTM3004 オシロスコープによる、DC/DC降圧コンバーターの制御ループ測定

測定結果

次のページの左上のスクリーンショットに表示されているように、開ループ利得(赤い曲線)は、周波数の上昇に伴ってほぼ単調に減少します。開ループ位相(青い曲線)は、単調な特性を示しません。これは、非常に大容量のキャパシタが降圧コンバーターの出力にあるためです。

これまで、周波数応答は、専用の低周波ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)で測定されていました。R&S®RTM3004 オシロスコープの測定結果と比較するために、低周波VNAとR&S®RTM3000シリーズ オシロスコープで同等の測定を実行しました。

下の比較図を見ると、R&S®RTM3004による解析が、低周波ベクトル・ネットワーク・アナライザによる解析と非常によく一致していることがわかります。

まとめ

エンジニアは、電気回路設計の特性評価を行う主要測定ツールとしてオシロスコープを使用します。特に電源アプリケーションでは、開発エンジニアは通常、低周波VNAのような専用機器によって周波数応答を解析します。R&S®RTM3000、R&S®RTB2000、R&S®RTA4000 オシロスコープ用のR&S®RTx-K36 周波数応答解析(ボード線図プロット)オプションにより、低周波VNAと同様の確度で周波数応答解析を実行できます。

低ノイズのフロントエンドと内蔵波形発生器を備えたこれらのオシロスコープは、周波数応答解析の作業要件を適切に満たしながら、専用のスタンドアロン低周波ネットワーク・アナライザに代わるコスト最適化ツールを実現しています。

RTM3004と低周波VNAの比較
R&S®RTM3004と低周波VNAの比較