二次監視レーダーのデコード

二次監視レーダー(SSR: Secondary Surveillance Radar)は、通信システムと従来のレーダーシステムのギャップを解消します。モバイル通信の性能が飛躍的に向上しているにもかかわらず、SSRは空域監視の主要コンポーネントであり続けています。

モードS応答などの最新技術により、SSRに放送機器のような性能が備わり、遠隔地の空港で、レーダーがない場合でも空域を監視できるようになりました。放送型自動従属監視(ADS-B)のような、さらに高度な技術では、モードS応答トランスポンダーによって提供されるインフラを使用して、地上管制と他の航空機に対し、より多くの情報を提供します。

課題

トランスポンダーの設計者は、規制要件を満たす正しい周波数エミッションだけでなく、実際のデータ伝送も正確であることが求められます。モードSの動作周波数は、インテロゲータには1030 MHzが使用され、トランスポンダーの応答には1090 MHzが使用されます。オシロスコープは、計算されたパルスエンベロープに基づいて送信されたメッセージをデコードできるため、データコンテンツの検証には最適な測定器です。

図1:演算チャネルを経由したレーダーパルスのエンベロープ
図1:演算チャネルを経由したレーダーパルスのエンベロープ
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ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアを使用して測定条件をシミュレートしてモードSデータを生成し、そのデータをR&S®SMW200A ベクトル信号発生器に転送してSSRシステムをシミュレートします。解析にはR&S®RTPハイパフォーマンス・オシロスコープが使用されます。

モードSメッセージは定義されたプリアンブルで始まり、56ビットまたは112ビットのデータに対応する56または112パルスド信号(パルス位置変調)が後に続きます。使用されるデータフォーマット(DF)は、プリアンブルの後に続くデータの最初の5ビットで示されます。この例では、DF17(拡張スキッタ)コードが使用されます。これは、トランスポンダーが重要な飛行情報(固有のICAOアドレスまたは高度)を、定期的な質問 (呼掛け) なしで送信することを意味します。

オシロスコープでの解析では、演算チャネルを使用して無線送信のエンベロープを取得します。このチャネルは、信号の絶対値のローパスフィルターを、適切なカットオフ周波数で使用します。π/2との乗算により、正しい振幅を実現します(図1参照)。詳細については、アプリケーションカード『オシロスコープを使用したRFレーダーパルスの解析』をご覧ください。

 図2:演算(エンベロープ)チャネルのマンチェスターIIデコード
図2:演算(エンベロープ)チャネルのマンチェスターIIデコード
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R&S®RTP-K50 マンチェスターおよびNRZシリアル・トリガ/デコード・ソフトウェア・オプションを使用すれば、より詳細に解析することができます。パルス位置変調は、実際のパルス変化を基準クロック(ここでは1 Mbps)と比較することによりデコードされます。パルスが高い振幅から低い振幅(スイッチオフなど)に変化する場合は、「1」がデコードされます。その逆も同様です。

図3:拡張スキッタメッセージのフォーマットの詳細
図3:拡張スキッタメッセージのフォーマットの詳細
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これはマンチェスターIIエンコードに対応しています。このカスタムデコードのセットアップを図2および3に示します。メッセージのフォーマットが判明することにより、メッセージ内のいくつかのフィールドまたはセルが自動的に識別されます。

図4:モードS応答メッセージ(拡張スキッタ)のデコード
図4:モードS応答メッセージ(拡張スキッタ)のデコード
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フォーマット情報が入力されると、モードSトランスポンダーメッセージのデコードが完了します(図4参照)。

まとめ

レーダーのパルス解析は、変調の解析、統計解析、SSRのデータ解析など、多くの形式および範囲で行うことができます。モードS応答メッセージは、1台の包括的なツールを使用して、オシロスコープで解析できます。最新のオシロスコープは、1090 MHzのキャリア周波数にも対応しています。R&S®RTE、R&S®RTO2000およびR&S®RTP オシロスコープが備える高度な演算機能は、トランスポンダー信号のエンベロープの作成に不可欠です。この用途で最も求められる機能は、これらの信号エンベロープのカスタム・デコード・バス解析です。