柔軟性が高く強力なレーダーエコー発生器

課題

レーダーシステムのテストは、センサ機能が正常であることを確認するために不可欠です。レーダーの全体的な機能を確認するのに不可欠な要素の1つにターゲットエミュレーションがあります。通常、レーダーエコーをエミュレートする際には、光ファイバーラインを使用して時間遅延を導入します。この時間遅延が、レーダーに対するターゲット距離になります。

追加のI/Q変調器で周波数のドップラーシフトを挿入し、ターゲットの動径速度をエミュレートします。この方法は一般的に用いられていますが、柔軟性がありません。光ファイバーラインの長さが一定であるため、時間遅延を簡単に変更できません。このため、ターゲットが動いている場合の時間とともに変動する距離をエミュレートすることはできません。また、複数のバーチャルターゲットには、長さの異なる複数の光ファイバーが必要になり、テストセットアップが複雑になります。

電子計測ソリューション

ローデ・シュワルツは、レーダーエコーを柔軟かつ容易に発生させるための新しい方法を提供します。距離と周波数のドップラーシフトをシンプルに制御／調整することにより、複数の静止目標と移動目標を含むシナリオを再現することができます。

このソリューションは、市販の2つの測定器で構成されています。R&S^®FSWシグナル・スペクトラム・アナライザでレーダー信号を受信し、RF信号を同相／直交位相データにダウンコンバートします。これにより得られたデジタルI/Q信号をR&S^®SMW200Aベクトル信号発生器に転送します。R&S^®SMW200Aに内蔵されたデジタル・レーダー・エコー発生器で、このレーダー入力信号を変更します。R&S^®SMW-K78オプションを搭載したR&S^®SMW200Aで、時間遅延、周波数のドップラーシフト、減衰量を適用して、目標からのバーチャル・レーダー・エコーをリアルタイムに高い再現性で出力します。

その後、このレーダーエコーを指定のレーダー搬送波周波数（最大40 GHz）にアップコンバートし、テスト対象レーダーに送り返します。このソリューションは、ラボ環境で行うテストと無線によるテストの両方をサポートしています。

このレーダーエコー発生器は160 MHzの帯域幅に対応し、Swerling 0ターゲットのユーザー定義の距離、動径速度、レーダー断面積を使用して（手動かつリモートで）容易に構成できます。距離は2.1 km（アンダーレンジで約1.8 km）～10,000 kmで調整可能です。周波数のドップラーシフトは、0.001 m/sの分解能で最大190 kHzまで対応できます。レーダー・エコー・レベルを定義する方法には、レーダーシナリオとレーダー方程式を使用する方法と、エコーごとに手動で割り当てを行う方法の2つがあります。リアルタイムプレビューで、エコーの予想されるRFパワーレベルと構成したレーダーシナリオがレンジ－ドップラードメインに表示されます。

目標のセットアップは、容易に行うことができます。R&S®SMW200Aは、個別に設定可能な最大24個の目標物をサポートしています。目標物からのエコーはすべて、レーダーの波形や滞留時間に関係なく同時に生成されます。

R&S®SMW200A^およびR&S®FSW^{に基づいた}ローデ・シュワルツのレーダーエコー発生器ソリューションは、各種レーダー・エコー・シナリオを非常に柔軟にエミュレートすることができます。この新しいソリューションは、初期の開発段階から最終的な受入れテストまでに行うテストだけでなく、運用時に継続的に行うテストなど、レーダーシステムのあらゆるテストに役立ちます。

主な利点

• リアルタイムでのエコー発生が可能
• 複数のエコーの同時発生
• スタンドアロンソリューション – レーダーシステムや外部PCとの同期が不要
• R&S^®SMW200Aを介してエコー発生を完全に制御可能
• レーダー波形に依存しないソリューション
• RF信号（妨害信号、LTEなど）の追加が可能