方向探知デバイスの振幅に基づく簡単なテスト

R&S®パルスシーケンサのレーダー・シミュレーション・ソフトウェアを使用すれば、到来角(AoA)のシミュレーションのためのシナリオをユーザーが容易かつ直感的に作成できます。このソリューションでは、複数のR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を接続して用いると、振幅比較技法や干渉法、到達時間差(TDOA)技法を用いるデバイスなど全種類の方向探知機器の性能を迅速かつ徹底的に特性評価することができます。ここでは、振幅比較技法を用いるデバイスをテストするための当社のテストソリューションについて説明します。

図1:複雑なレーダーシナリオの作成。R&S®パルスシーケンサのレーダー・シミュレーション・ソフトウェアとR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を使用。
図1:複雑なレーダーシナリオの作成。R&S®パルスシーケンサのレーダー・シミュレーション・ソフトウェアとR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を使用。
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課題

レーダー警戒受信機(RWR)は、すべての最新軍用機の自衛用スイートに不可欠な部分です。レーダー警戒受信機の主要なタスクは、レーダー信号を検知し、エミッターを識別し、レーダー信号の到来角(AoA)を判定することです。AoAの判定に一般に用いられる技法は振幅モノパルスです。この技法では、航空機を囲むように搭載された複数のアンテナを用いて方位角を360°カバーします。

RWRの開発とテストでは、受信機の開発サイクル全体で必要なテスト信号をすべて発生できるシミュレータがないと困難になります。

シミュレータには、初期のハードウェア検証用の単純なレーダーパルスから、システムレベルでのテスト用の複雑なマルチエミッターのシナリオまでのすべてを提供できる柔軟性が必要です。できれば、そのシミュレータハードウェアが商用オフザシェルフ(COTS)のソリューションとして得られ、高価で柔軟性のないカスタマイズハードウェアをデザインする必要がないのが理想です。さらに、信号の定義や複雑なシナリオの作成を容易でわかりやすいものにし、追加のシミュレーションソフトウェアを作成するような時間の掛かるタスクを避ける必要があります。

ローデ・シュワルツのソリューション

ローデ・シュワルツでは、到来角をシミュレートするための強力なパッケージを用意しています。このパッケージは、R&S®パルスシーケンサのレーダー・シミュレーション・ソフトウェアと、接続された複数のシングル/デュアルパスR&S®SMW200A ベクトル信号発生器から構成されています。

R&S®SMW200A ベクトル信号発生器では、最大20 GHzの2つのRF経路、または最大44 GHzの1つのRF経路を発生できます。すべてのRF経路を時間同期させるために、内部クロック信号とトリガは発生器間で共有されています。

干渉法を用いる方向探知デバイスのテストなど、RFポート間に専用の位相差が必要な場合には、内蔵の局部発振器(LO)信号をマスター機器からスレーブ機器に発信させるか、R&S®SMA100B アナログ信号発生器などの外部LOを使用することができます。

R&S®SMW200A ベクトル信号発生器では、無限に近い種類の信号を再生することができます。単純な非変調レーダーパルスから、複雑な変調方式やパルス変調(MOP)によるレーダー信号まで、R&S®SMW200Aでは現実的で高密度のRF環境を生成できます。R&S®SMW200Aは周波数アジリティーが優れており、2 GHzもの高い変調帯域幅によって最新レーダーのシミュレーションが可能になります。

R&S®パルス・シーケンサ・ソフトウェアを用いることで、ユーザーはレーダーシナリオを容易に作成し、複数のR&S®SMW200Aを制御/設定することができます。単純なパルスシーケンスから、複数の複雑な移動エミッターによる高度に洗練されたシナリオまで、R&S®パルス・シーケンサ・ソフトウェアはさまざまなテストアプリケーションをカバーします。ユーザーはカスタム波形を作成し、エミッターを詳細に設定することができます。

柔軟なユーザーインタフェースにより、現実的なテストシナリオの作成が簡単になります。ソフトウェアが扱いやすいことでテストケース作成の時間が短縮され、テスト時間を増やせるようになります。計算されたシナリオは、次にR&S®SMW200Aに直接読み込まれます。計算されたデータの形式は、パルス記述子ワード(PDW)またはI/Q波形ファイルに対応しています。速度最適化された計算ルーチンによって、シナリオ計算中の待ち時間が短縮され、ケースデザインを柔軟に繰り返し行えるようになります。

図2:4チャネルのテストセットアップによる到来角(AoA)のシミュレーション。このセットアップはエミッターの到来角(AoA)のシミュレーションに適しており、デュアルパスR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を2台接続します。R&S®パルス・シーケンサ・ソフトウェアが自動的に各RFポート間の相対遅延値や相対位相値、相対振幅値を計算します。
図2:4チャネルのテストセットアップによる到来角(AoA)のシミュレーション。このセットアップはエミッターの到来角(AoA)のシミュレーションに適しており、デュアルパスR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を2台接続します。R&S®パルス・シーケンサ・ソフトウェアが自動的に各RFポート間の相対遅延値や相対位相値、相対振幅値を計算します。
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4チャネルRWRのテスト

4チャネルRWR用のテストセットアップは2台のデュアルパスR&S®SMW200Aから構成され、レーダーのシミュレート信号を発生させます(図2)。1台をマスター機器として設定し、もう1台はスレーブ機器として設定することで、完全に同期してレーダーパルスを再生することができます。図3にR&S®パルス・シーケンサ・ソフトウェアで作成したシナリオの例を示しています。航空機が円形軌道に沿って飛行しています。航空機の左には地上のスタティックレーダーがあり、その円形のアンテナスキャンが330°の初期相対方位に位置しています。航空機はその翼端に4つの指向性アンテナを搭載しており、図4のアンテナレイアウトに示すようにそれぞれが異なる方向に向いています。

図3:RWRテスト用のシナリオ例。航空機の軌跡と、レーダースキャンが航空機に当たる位置を示すシナリオマップ。
図3:RWRテスト用のシナリオ例。航空機の軌跡と、レーダースキャンが航空機に当たる位置を示すシナリオマップ。
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各アンテナについてシミュレートされた受信機信号が、4つのRF経路のうちの1つにマッピングされます。次に、各RF経路はすべてRWRの対応するRF入力に接続されます。

航空機はその軌跡に沿って移動し、位置1~7においてレーダースキャンに複数回当たります。各位置ではエミッター信号のAoAが変化するため、4つのアンテナにおいて異なるパワーレベルが記録されます。各アンテナポートでのパワーレベルを図4のグラフに示しました。図中の番号はシナリオマップの位置1~7に対応しています。

エミッターへの方位を得るには、モノパルス方式を用います。レーダーパルスを検知した場合には、パワーレベルの高い隣接する2つのアンテナを比較します。それらのアンテナ間のちょうど中央にエミッターがある場合、双方で受信されるパワーレベルは等しくなります。エミッターが中央から外れていれば、片方のアンテナでより高いパワーレベルが受信されます。受信されるパワーレベルの比を用いて、エミッターへの正確な方位が求められます。

図4:4つのRWR入力ポートにおいて受信される信号の例。時間ごとに各アンテナポートで検知されるレーダーパルス。アンテナは図示されるように航空機の翼端に搭載されています。
図4:4つのRWR入力ポートにおいて受信される信号の例。時間ごとに各アンテナポートで検知されるレーダーパルス。アンテナは図示されるように航空機の翼端に搭載されています。
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時間ごとにシミュレートされるパルス・パワー・レベル

図4の下部には、4つのRWR入力によって位置4で記録されたレーダーパルスの1つが示されています。この位置では、左前と左後のアンテナがレーダーの方を向いているため、最も高いパワーレベルを受信しています。オレンジと緑の信号の間のモノパルス比を計算すると、約250°のエミッター方位が得られます。

パイロットのディスプレイに測定結果をマッピング

航空機の動作中、識別されたエミッターがコックピット内のパイロットに表示されます。エミッターの方位はコンピューターで計算され、RWRディスプレイ上でパイロットに表示されます。下の図は、ここで説明したシナリオで航空機が位置4にあるとき、エミッターがRWRオペレーターやパイロットにどのように表示されるかを示しています。RWRによって判定された方位がシミュレートされた方位と一致すれば、テストが成功したと見なされます。

利点

  • マルチチャネル信号発生器のスケーラブルでコンパクトなセットアップ
  • 複数のエミッター/干渉源による迅速で柔軟なシナリオ作成
  • 2 GHzの変調帯域幅による高い信号確度
  • 6自由度(DoF)移動のシミュレーション
図5:位置4における航空機内でのRWR表示。航空機の8時の位置に検知されたエミッターを表示するRWR脅威表示。図中の番号はエミッターの種類を示し、ダイアモンドは最大の脅威を示します。
図5:位置4における航空機内でのRWR表示。航空機の8時の位置に検知されたエミッターを表示するRWR脅威表示。図中の番号はエミッターの種類を示し、ダイアモンドは最大の脅威を示します。

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