自動車用イーサネット:BroadR-Reach®インタフェースの検証

イーサネット通信が車載ネットワークに導入され、後方カメラやオーディオ/ビデオストリーミングなどの高速でコストパフォーマンスの高いデータ通信を実現しています。OPEN Alliance(www.openSIG.org)で、自動車業界は、BroadR-Reach®物理層を車載イーサネット通信規格として標準化しています。この規格は、IEEE 802.3規格の一部になる予定です。BroadR-Reach®では、全二重ツイストペア通信の採用により、100 Mbit/sのデータ転送が可能です。インタフェースの検証については、OPEN Allianceは、BroadR-Reach®コンフォーマンステストと6つテストケースを規定しています。

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課題

BroadR-Reach®では、1000BASE-Tイーサネットと同様の双方向通信を活用して、両方のインタフェースが同じツイストペア・ケーブルを介して同時に通信します。このため、通信相手がいなければ、データの伝送中に一方のインタフェースの電気的テストを行うことはできません。OPEN Allianceは、BroadR-Reach®イーサネットのコンプライアンステストを規定しています。他のイーサネット・コンプライアンステストと同様に、このテストではトランスミッターの品質に重点を置いています。レシーバーは、1つのテストケース(MDIリターンロス測定)だけを使用してテストされます。コンプライアンステストでは、トランスミッターからの特定のテスト信号が必要です。各通信チップセットは、通常はチップのレジスタ設定の1つによってアクティブになるこれらのテスト信号を作成できなければなりません。

電子計測ソリューション

R&S®RTO デジタル・オシロスコープは、優れた信号再現性と自動テスト実行機能を備えているため、BroadR-Reach®コンプライアンステストに最適です。BroadR-Reach®コンプライアンステストをフルに行うには、表に示されているテスト機器が必要です。オシロスコープに加えて、妨害信号による歪み測定には信号発生器が、リターンロス測定にはベクトル・ネットワーク・アナライザが必要です。適切なテストセットアップを実現するには、DUTとテストセットアップの間で定義されている接続用のテストフィクスチャと同様に、適切な差動プローブが必要です。コンプライアンステストのセットアップ、結果の計算、レポートの作成は、R&S®ScopeSuiteテストソフトウェアで自動化されています。

R&S®ScopeSuiteテストウィザード:テストケースの選択。
R&S®ScopeSuiteテストウィザード:テストケースの選択。

アプリケーション

R&S®ScopeSuiteテストソフトウェアを使用した自動測定

R&S®ScopeSuiteを使用すれば、ガイドに従ってテストをセットアップし、下表に示されているOPEN Allianceが指定するテストケースをすべて自動実行できます。このため、コンプライアンステストの実行時間を大幅に短縮でき、信頼性の高い再現性のある結果が得られます。テスト結果はすべて文書化され、テストセットアップ情報を網羅した包括的なレポートが作成されます。R&S®ScopeSuiteは、別のPCまたはデジタル・オシロスコープ上で動作するスタンドアロンアプリケーションです。

テストフィクスチャに正しく接続する方法を説明するテストウィザード。
テストフィクスチャに正しく接続する方法を説明するテストウィザード。

手動リミットエディター

シグナルインテグリティー・テストの品質要件は、製品開発期間中で異なる場合があります。ローデ・シュワルツは、R&S®ScopeSuiteソフトウェアに搭載されている特殊なエディターを使用してテストリミットを手動で変更する機能をサポートしています。指定されている各コンプライアンステストのリミットを手動で調整できるので、お客様のテストニーズに合わせてコンプライアンステストを調整できます。もちろん、これらのリミットは、R&S®ScopeSuiteソフトウェアによって作成されるテストレポートで文書化されます。

R&S®RT-ZF3 周波数コンバーターボードを使用した正確な結果

歪みテストでは、12,000個の一連の信号を正しく伝送する必要があります。OPEN Allianceが指定する歪みテストのアルゴリズムでは、「… 妨害信号とデータ収集クロックは、DUTの送信クロックに周波数ロックされている」と仮定しています。これは、トランスミッターのクロックをデジタル・オシロスコープと信号発生器のマスタークロックとして使用することにより実現できます。指定されている歪みテスト用のテストセットアップを最後の図に示します。このように周波数ロッキングしないと、DUTはほとんどの場合、歪みテストで不合格になります。

BroadR-Reach®トランスミッターのクロックは、66.67 MHzと仕様化されています。テスト機器では通常、10 MHzのクロック信号と同期できます。ローデ・シュワルツは、R&S®RT-ZF3 周波数コンバーターボードを使用したトランスミッターのクロックの同期をサポートしています。RT-ZF3は、BroadR-Reach®トランスミッターの66.67 MHzのクロックを10 MHzのクロック信号に変換します。R&S®RT-ZF3 周波数コンバーターボードを使用することにより、正確なBroadR-Reach®コンプライアンステスト結果が得られます。このため、ローデ・シュワルツのテストソリューションは、OPEN Allianceによって、BroadR-Reach®テスト機器として正式にリストに掲載されています。

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