1回のRF接続による測定

1回のRF接続による完全なRFコンポーネント特性評価

課題

RFコンポーネントの特性評価には通常、変調精度の測定に加えて、整合や完全なSパラメータ測定が含まれます。変調精度測定では、エラーベクトル振幅(EVM)やビットエラーレート(BER)などの特定のパラメータを用いて、デバイスの伝送性能を評価します。特性評価では、バンド外エミッションや隣接チャネル漏洩電力比(ACLR)といった規制要件にRFコンポーネントが適合しているかどうかも確認します。整合測定では、コンポーネントが設計どおりにシステム内で動作すること、例えば、所定のアンテナインピーダンスで定格電力を伝送できることを確認します。テスト時間は常に重要なパラメータであり、試験速度の向上はコスト削減につながります。

ローデ・シュワルツのソリューション

変調精度の測定では、被試験デバイス(DUT)が実際の用途と同様に動作するよう、完全に変調された信号で励起する必要があります。テストセットアップでは、広帯域ベクトル信号発生器(VSG)がDUTに入力信号を供給します。

EVMやBERなどの現実的な性能指標を測定するには、DUTの用途(規格準拠またはカスタム定義)に対応する測定アプリケーションを備えた広帯域ベクトル・シグナル・アナライザ(VSA)が必要です。EVMは狭帯域測定に基づいて推定することも可能ですが、規格準拠のEVM、BER、または現実的なデジタルプリディストーション(DPD)を取得するには、一般的に対応する測定アプリケーションを搭載した広帯域VSAが必要となります。

ACLRのような規制関連測定では、多くの場合、優れたダイナミックレンジを提供する狭帯域スペクトラム・アナライザのみで十分です。一部のテストシナリオでは、ダイナミックレンジよりも、高速なテスト速度が求められる場合があります。統合型のシグナル・スペクトラム・アナライザは、特定のシナリオで必要とされる速度とダイナミックレンジのまさに最適なトレードオフを提供できます。整合測定およびSパラメータ測定では一般に、規制関連測定と同じく、ダイナミックレンジと速度の間でのトレードオフが求められます。ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)は、まさにこのような柔軟性を提供します。

アプリケーション

前述のように、RFコンポーネントテストには、多くの場合、異なる性能要件をもつ3種類以上の測定機能(EVM、ACLR、Sパラメータ)が必要です。テスト時間は常に重要なパラメータです。RFケーブルの配線変更は時間がかかり、手動操作が必要な場合も多く、測定誤差の一般的な原因となります。

そのため、RF接続の回数を減らすことが、テストコストの大幅な削減につながります。下の図は、これらすべての要件を組み合わせたテストセットアップを示しており、以下の特徴があります。

  • 1回のRF接続
  • 柔軟性に優れた整合測定向けのVNA
  • EVM、DPD、BERを含む実環境測定のための、VSGとVSAの組み合わせ

このセットアップは、2つの既製カップラーによって補完されています。カップラーは、ダイナミックレンジと周波数範囲の要件に応じて選択可能です。

カップラー1はVSGと1つのVNAポートをDUTの入力に接続し、カップラー2はVSAと別のVNAポートをDUTの出力に接続します。カップラーのスルー接続は、変調された広帯域測定に使用されます。これは、この測定がS/N比の影響を受けやすいためです。VNAは、連続波(CW)のスティミュラス信号を用いる場合、フィルター帯域幅を狭めるなどして、低S/N比の影響を補償できます。

VNAの測定と校正は、入力側ではプレーン3/4、出力側ではプレーン5/6を基準とします。ディエンベディング(例えば、外部カップラー用)は、VSGとVSAの両方で利用可能です。

さらに、3つの独立した機器を使用することで、このセットアップの柔軟性を向上させることができます。例えば、VSGとVSAには最大帯域幅と最高性能を備えたハイエンド機器を使用し、VNA測定にはミッドクラス機器のみを使用することができます。あるいは逆に、VNAにハイエンド機器を、VSGとVSAにミッドクラス機器を使用することも可能です。

まとめ

このセットアップはテスト要件に対して非常に柔軟であり、さらにDUTへのRF接続が1回で済むという利点も備えています。

CWとEVMのベクトル補正測定のテストセットアップ
CWとEVMのベクトル補正測定のテストセットアップ
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