5G RFフロントエンドの迅速な特性評価

周波数帯域が増え、ダイナミックレンジが広がるにつれて、最新のRFフロントエンド(RFFE)の特性評価と製造に必要なテストポイントの数も多くなります。そのため、品質を維持しながらテスト時間およびコストの削減に積極的に取り組むことが、これまで以上に重要になってきています。

SBTテストシステムの概略図
R&S®SBT テストシステムの概略図
ライトボックスを開く

課題

5G対応に向けたインフラとユーザー機器のアップデートは、現在の通信テクノロジー業界で最もホットなトピックの1つです。無線接続に不可欠なRFフロントエンドなどの競争の激しい分野において、 成功の鍵となるのは、市場投入までの時間の短縮と生産コストの最適化を実現できるテスト設計です。技術的条件やコスト面での制約を考慮しながら、製品をより迅速に特性評価および製造する方法に取り組む必要があります。そこで求められるのがテスト速度の向上です。特性評価のテストスループットを向上させて製品サイクルを短くする新しいアイデアも必要になってきます。

ローデ・シュワルツのソリューション

高速のRF機器と、当社のR&S®SBT サーバーベース・テストルーチンに基づくマルチスレッド化および最適化された信号処理を併用してテストジョブを並列実行すれば、実行速度テストとスケーラブルテストの両方で測定器の使用率を高めることができます。

ステップごとに検証

従来の特性評価および製造ルーチンでは、各テストステップを順番に実行します。これは1つのステップが完了しないと次のステップに移れません。テスト時間を短縮すると、しばしばテストの深度や精度が低下するため、後続の動作で故障率が上がってしまう可能性があります。
精度を犠牲にせずに必要な品質レベルを維持するために、すべてのステップまたはサブタスクには最小タイムタグがあります。RF測定では、通常、ダイナミックレンジの広さと掃引時間の速さはトレードオフの関係にあり、測定精度対テスト速度の構図にならざるを得ません。
また、振幅と周波数の通常の特性評価では、各ステップで同じテストが逐一実行されます。各サブタスクの時間を調べて、どこで時間をロスしているかを検証することで、取り組むべき課題も見えてきます。

シーケンシャルプロセス
シーケンシャルプロセス
ライトボックスを開く

周波数と振幅のEVMパフォーマンスマップ作成の具体的な例

振幅ごと、および周波数ポイントごとの結果を取得するには、さまざまなサブタスクが要求されます。捕捉デバイスを使用する場合、最高のパフォーマンスを得るためにRF入力を調整してから信号を記録する必要があります。記録された信号は、EVMを計算するために後処理されます。5Gの場合、複雑な信号構造であるため、計算に時間を要することがあります。
EVMを計算している間は通常、RFシステムはアイドル状態になります。
各サブタスクを順番に実行させる代わりに、並列実行させられないか、その可能性を探る価値は十分にあります。この例では、RF測定器によるデータ捕捉とI/Qデータの評価を理想的にデカップリングし、EVMを取得します。
実際には、捕捉デバイスはRFデータを自動的にレベリングしてサンプリングします(サブタスク1および2)。捕捉されたI/Qファイルはサーバーに転送され、さらなる処理が行われます。一方、測定器は周波数と振幅の特性評価の次のステップに進むことができます。

並列化

これにより、測定器の使用率が大幅に向上し、投資の有効活用とテスト時間の短縮が実現します。
EVM計算を実行する複数のコアを持つ強力なサーバーでは、1つのジョブだけでなく複数のジョブが同時に実行されることが想定されます。データパケットの処理とジョブのスケジューリングは、R&S®SBT サーバーベース・テストアプリケーションによって自動的に実行されます。

並列化と複数の記録デバイス
並列化と複数の記録デバイス
ライトボックスを開く

5Gフロントエンドには、大規模MIMOおよびビームフォーミング用途向けに、1つだけでなく複数のRF出力が含まれる場合があります。高度に統合されたデバイスは、4つ以上のRFチャネルを提供することで、そのニーズに対応します。テスト速度を向上させるためには、複数のRF捕捉デバイスが複数のDUTポートで同時にデータを記録する、さらなる並列化が理想的です。各捕捉デバイスは、捕捉したデータをEVM評価のためにサーバーに送信します。R&S®SBTが残りを処理し、結果として高速化が実現します。

異なるアプローチの比較
異なるアプローチの比較
ライトボックスを開く

実際のテストの実施結果
59の振幅ポイントをカバーする5G RFFEの評価を見てみましょう。各ポイントについて、フルロードの5G 100 MHz帯域幅フレーム(10 ms)に基づいてACLR、EVM、およびSEMを計算します。ここでは、ミッドレンジの測定器であるR&S®SMBV100B ベクトル信号発生器とR&S®FSVA3000 シグナル・スペクトラム・アナライザを使用しています。すべてのサブタスクが順番に実行される従来のアプローチは、どうしても時間がかかります。RF記録とデータ評価を分離することで、処理速度が向上します。PCまたはサーバーの能力に基づいて、結果を計算するジョブが並行して実行されます。その効果は、使用可能なCPUの性能とコア数に応じて大きくなります。この測定結果では、3倍から5倍以上の改善成果が示され、被試験デバイスで実行される特性評価の時間が5分の1以上短縮されています。

まとめ

R&S®SBT サーバーベース・テストと高速のRF測定器を組み合わせることにより、感度、テストカバレッジ、精度、再現性を犠牲にすることなく、特性評価の時間を大幅に短縮し、製造テストを高速化して、機器の使用率向上とコスト削減につなげることができます。その結果、製造スループットの向上と特性評価時間の最小化が実現します。

関連ソリューション