電源制御ループ応答測定(ボード線図プロット)

ローデ・シュワルツのオシロスコープ

MXO4

課題

電圧レギュレーターやスイッチング電源(多相降圧コンバーターなど)の安定性を保証するには、制御ループの動作を測定して評価する必要があります。適切な補正能力を持つ電圧コントローラーは、出力電圧を安定させ、負荷変動や供給電圧の変動による影響を減らす効果があります。この制御回路の品質によって、DC/DCコンバーター全体の安定度と動的応答が決まります。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®MXOx-K36 周波数応答解析(ボード線図)オプションによって、既存のオシロスコープで容易かつ迅速に低周波応答を解析できます。パッシブフィルターや増幅回路など、さまざまな電子デバイスの周波数応答を評価できます。スイッチング電源の制御ループ応答や電源電圧変動除去比も測定できます。R&S®MXOx-K36 周波数応答解析(ボード線図プロット)オプションは、オシロスコープの内蔵波形発生器を使用して、10 mHz100 MHzの周波数の入力信号を作成します。オシロスコープは、DUTの入力信号と出力信号の比を各テスト周波数で測定し、利得を対数グラフに、位相を線形グラフにプロットします。

R&S®MXOx-K36 周波数応答解析(ボード線図)オプションを使用すれば、スイッチング電源やリニアレギュレーターの利得と位相マージンを短時間で判定できます。これらの測定は、制御ループの安定度を判定するために役立ちます。

R&S®MXOx-K36 周波数応答解析(ボード線図)オプションは、供給電圧の変化や負荷電流の変化といった動作条件の変化に対するシステムの応答を表示します。

正しい注入ポイントの選択
正しい注入ポイントの選択
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測定セットアップ

電源制御ループは、基準電圧(Vref)とフィードバック電圧(Vfeedback)を比較し、負のフィードバックを発生することで、安定した出力電圧を維持します。

制御ループ応答のテストでは、ある範囲の周波数の誤差信号を、制御ループのフィードバック経路に注入する必要があります。誤差信号を注入するには、小さい抵抗をフィードバックループに挿入することが必要です。5 Ωの注入抵抗が、次のページの「正しい注入ポイントの選択」の図に示されています。この抵抗は、直列抵抗のR1とR2に比べれば微小です。ユーザーによっては、この小さい値の注入抵抗(Rinjection)をテスト用にデザインの一部として組み込んでおく場合もあります。PicotestのJ2100Aのような注入変圧器によって、AC歪み信号が分離され、DCバイアスが除去されます。

注入ポイントとプロービング

電圧フィードバックループのループ利得を測定するには、ループを適切なポイントで分割する必要があります。このポイントに歪み信号が注入されます。歪み信号は、ループ回路に供給されます。ループ利得に応じて、注入された歪み信号は増幅または減衰され、位相がシフトされます。R&S®MXOx-K36 オプションを使用する場合、歪み信号はオシロスコープのジェネレーターから発生します。オシロスコープは、ループの伝達関数を測定します。

測定されたループ利得が実際のループ利得と一致するように、適切なポイントを選ぶ必要があります。

  • ループが単一経路に限定され、並列のシグナルフローが存在しないポイントを見つける必要があります。
  • ループの方向のインピーダンスが、このポイントでの逆方向のインピーダンスよりもはるかに大きいことが必要です。逆方向のインピーダンスはコンバーターの出力インピーダンスに一致し、数mΩ程度のきわめて小さい値です。ループの方向のインピーダンスは、コンペンセーターと電圧ディバイダーによって生じるもので、値は数kΩ程度です。
ボード線図プロット
グランドスプリングを使用すれば、電源電圧変動除去比測定に最適なS/N比を実現できます。
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制御ループ応答の特性評価を正確に行うには、正しいプロービングが必要です。VinとVoutのp-p振幅は、テスト周波数によってはきわめて小さくなることがあります。これらの値は、オシロスコープのノイズフロアやDUT自体のスイッチングノイズに埋もれてしまう可能性があります。このため、測定のS/N比を上げることで、周波数応答測定のダイナミックレンジを大幅に改善できます。ほとんどのオシロスコープには、通常10:1のパッシブプローブが付属していますが、これはノイズが多いという問題があります。低ノイズの1:1パッシブプローブを使用すれば、測定ノイズを減らしてS/N比を改善できます。ローデ・シュワルツは、本アプリケーション向けに、38 MHzの帯域幅を備えたR&S®RT‑ZP1X 1:1パッシブプローブを推奨しています。

プローブのグランド接続の長さを短くすると、誘導性のグランドループを最小化できます。プローブの標準グランドリードがアンテナとして動作して、これにより、不要なスイッチングノイズが増幅する場合があります。VinおよびVoutテストポイントの近くにあるグランドポストを見つけます。

R&S®RT-ZP1Xに付属するグランドスプリングを使用すれば、グランド接続を短くできます。これにより、測定に適した低ノイズグランドを構成できます。

ボード線図プロット
DC/DCコンバーターの安定度の測定(青トレース:利得、赤トレース:位相)。右側の表には、振幅プロファイルと、マーカー測定およびマージン測定の結果が表示されています。
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デバイス設定
オシロスコープを被試験回路に接続したら、アプリケーションを開始します。

  • 10 mHz100 MHzの間でスタート周波数とストップ周波数を設定して、ジェネレーターの出力レベルを決定します。
  • ディケードごとのポイント数を選択すれば、収集の分解能を改善/変更できます。オシロスコープは、ディケードあたり最大500ポイントをサポートします。
  • ジェネレーター出力の振幅をプロファイル(最大100ステップ)して、被試験回路のノイズの挙動を抑制します。
  • RUNを押して測定を開始します。測定結果は、利得/位相対周波数としてプロットされます。マーカーを必要なポイントに設定します。

測定結果
ボード線図は回路の伝達関数を表すもので、入力周波数に対する振幅動作(dB)と位相(°)の特性が表示されます。これは、システム安定度の検証に役立ちます。個々のマーカーを、プロットされたトレースの必要な位置に直接配置でき、凡例に、マーカーの座標が表示されます。クロスオーバー周波数を判定するには、1つのマーカーを0 dBに、もう1つのマーカーを-180 °の位相シフトに設定します。位相およびゲインマージンを容易に判定できます。

測定結果の表には、各測定ポイントの周波数、利得、位相シフトの詳細情報が表示されます。マーカーを使用すると、結果の表で関連した列が強調表示されます。レポート作成用に、スクリーンショット、表の結果、またはその両方をUSBドライブに簡単に保存できます。

まとめ

オシロスコープは、今日、エンジニアが電源の設計を試験/評価するための主要な測定ツールです。R&S®MXOx-K36 周波数応答解析(ボード線図)オプションは、低周波ネットワーク・アナライザまたは専用のスタンドアロン周波数アナライザに代わる低予算向けのツールです。

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