DC-DC電源のプリコンプライアンス伝導性エミッションテストのための自作LISN

電源のプリコンプライアンス測定では、電源インピーダンス安定化回路(LISN)を使用し、結果をリミット値と比較する必要があります。LISNはプリコンプライアンスラボでは標準的ですが、早期の研究開発テストではLISNが使用できないことも多くあります。精度の高い測定を目的としておらず、デバッグのためのシンプルなツールを必要としているような場合は、独自のLISNを作成することができます。ローデ・シュワルツのオシロスコープには高度なFFT解析機能があり、開発中のEMIフィルターの最適化や不要エミッションのデバッグに理想的です。

R&S®RTO2064 オシロスコープとDC LISN
R&S®RTO2064 オシロスコープとDC LISN

課題

デザインプロセスにおいてCE測定の実施が遅すぎると、多くの場合で製品を部分的にデザイン変更することになります。伝導性エミッションテストを開発サイクルのより早い段階で実施することにより、デザイン変更のリスクを大幅に低減することができます。伝導性エミッションのデバッグには、十分な感度でスペクトラムを測定できる柔軟性の高い測定器が必要です。

またLISNは、外部電源から被試験デバイス(DUT)を切り離し、DUT入力のために定義されたインピーダンスを有する必要があります。これにより、再現性の高い測定結果が得られます。コンプライアンステストのための専用のDC-LISNは、さまざまなメーカーから提供されています。しかし、高性能なLISNはCEデバッグには必要ありません。伝導性エミッションのデバッグには、自作LISNを使用することができます。

ローデ・シュワルツとWürth Elektronik eiSosは、アプリケーション関連の作業で協力しています。
ローデ・シュワルツとWürth Elektronik eiSosは、アプリケーション関連の作業で協力しています。

ローデ・シュワルツのソリューション

ローデ・シュワルツのオシロスコープは、パワーエレクトロニクスのデザイン用に選ばれている測定器であり、デザイナーにとって必要な感度と柔軟性が得られます。ローデ・シュワルツのオシロスコープは、周波数成分の振幅を測定できる高度で使いやすいFFT機能を備えています。同時に、タイムドメイン信号を見ることもでき、不要スペクトラムエミッションとタイムドメインのイベントの相関を確認することもできます。

オシロスコープに自作DC-LISNを組み合わせると、早期に実施するパワーエレクトロニクスデザインの伝導性エミッションテストのための強力な測定セットアップになり、高価な機器を追加で購入する必要がなくなります。これは特に、研究開発ラボにEMIレシーバーなどの専用機器がない場合に役立ちます。Würth Elektronik eiSosによる自作DC-LISNは、正負の電源ラインのための非常に柔軟なデュアルDC-LISNソリューションです。

このソリューションのメインアイデアは、プリコンプライアンス測定をサポートするために整えられたセットアップです。オシロスコープを自作LISNと一緒に使用すると、単純なセットアップを保ち、低コストなまま、デザインフェーズの最初期においてEMI問題を解析するために十分な性能の専用のプリコンプライアンス測定ツールになります。

自作DC-LISNを用いたプリコンプライアンス測定セットアップ
自作DC-LISNを用いたプリコンプライアンス測定セットアップ
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デバイス設定

電源の伝導性エミッションを測定するには、LISNを被試験デバイスと外部電源の間に接続する必要があります。整合を適切にするために、LISNの同軸出力を入力インピーダンスが50 Ωの同軸ケーブルでオシロスコープに接続し、オシロスコープで起動する必要があります。スペクトラムを測定するには、オシロスコープで次のステップを実施する必要があります。

  • FFT機能をオンにして、最小周波数、最大周波数、分解能帯域幅を設定します。
  • タイムドメインウィンドウで垂直感度を調整して、被試験デバイスの電源がオンになった時に入力チャネルがオーバードライブされないようにします。
  • DUTの電源をオフにして基準測定を行います。これにより、DUTから来ている以外の、セットアップのノイズフロアが明らかになります。
  • 電源を再度オンにして、測定を行います。電源の導線の双方について、DUTの既知の伝導性エミッションのリミットを基準にして検証します。LISNによる減衰を考慮します。

ケーススタディー - 自作DC-LISNの性能

以下の2つのスクリーンショットでは、規格に準拠した市販のLISN、およびWürth Elektronik eiSos GmbH & Co. KG(ウルトエレクトロニクス社)によってデザインされた自作LISNと共にR&S®RTO2064 オシロスコープを使用した伝導性エミッション測定を示しています。

チャネル1とチャネル2は、LISNの正端子と負端子で測定したタイムドメイン信号を示しています。LISNにより、信号は10 dBだけ減衰しています。エミッションリミットと比較する際には、これを考慮する必要があります。チャネル演算M3とM4は、DUTの入力端子におけるスペクトラムをdBμVで示しています。DC-DCコンバーターの入力で生じるノイズスペクトラムがはっきりと表示されています。

WürthのLISNによる伝導性エミッションの測定では、入力ラインにおける最大ホールドスペクトラムが周波数スペクトラム全体にわたって市販のLISNによる結果に非常に近いことが示されています。

まとめ

高速で効率的なFFT機能をもつローデ・シュワルツのオシロスコープと、Würthの自作DC-LISNの組み合わせは、EMIデバッグにとても良く、パワーエレクトロニクスのデザインフェーズのための低コストなソリューションです。早期のEMI評価において時間とコストを大幅に節約することができます。コンプライアンステストには、専用のDC-LISNは必要ありません。これによりEMIコンプライアンスがより確実になり、製品に不具合が生じてから行われる基礎部分のデザイン変更が必要なくなります。

以下も参照してください。
www.rohde-schwarz.com/oscilloscopes

市販のDC-LISNによるEMIスペクトラム
市販のDC-LISNによるEMIスペクトラム
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自作DC-LISN(Würthデザイン)によるEMIスペクトラム
自作DC-LISN(Würthデザイン)によるEMIスペクトラム
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追加ファイル

デザインファイル

登録すると、回路図、アセンブリー、レイアウト、BOM詳細情報をダウンロードできます。

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