ILS端末の滑走路測定を高速化

信頼できるILS滑走路測定を最大速度で実行するには、測定速度の速いR&S®EVS300レベル/変調アナライザが最適です。

ILS端末の確認用の測定車。
ILS端末の確認用の測定車。

課題

計器着陸システム(ILS)は、特に夜間および悪天候による視界不良時に、航空機のパイロットの着陸進入を支援します。滑走路視距離(RVR)やその他の基準に応じて、さまざまなカテゴリー(CAT I、II、IIIa、IIIb)が仕様化されています。ILS CAT IIIは、最も要件の厳しいカテゴリーで、RVRが46 m(CAT IIIb)までのアプローチと着陸を支援します。CAT III端末は、通常、航空交通量の多い、重要な国際空港に設置されています。

国際民間航空機関(ICAO)では、安全強化策として、地上および飛行検査時に確認する必要がある、ILSシステムの重要なパラメータを標準化しています。プロバイダーおよび飛行検査機関は、正確な操作を保証するため、これらの着陸システムに対するモニター、制御、校正、認証を規則通りに実施します。

ILSは、2つの独立したサブシステムから構成されています。ローカライザ(LLZ)は、水平方向ガイダンスを提供します。グライドスロープ(GSまたはGP)は、垂直方向ガイダンスを提供します。2周波ILSシステム(CAT IIおよびCAT III用)では、コースとクリアランスを分離し、ILSのカバレージと精度を同時に向上させるために、各サブシステムで2つの搬送波を使用します。

継続的なモニタリングシステムに加えて、ILSの設置では、毎月、以下の地上検査が要求されます。

  • LLZ滑走路測定(コース構造)
  • LLZカバレージ(コース/クリアランス測定)
  • LLZリニアリティー(滑走路にわたるコースリニアリティー)
  • GSカバレージ(滑走路のしきい値に対して)

最もクリティカルなのが、LLZの滑走路(または軸)測定です。ILS信号が滑走路の中心線に沿って測定されるため、航空交通の中断につながるからです。こうした中断を最小限に抑えながら、測定によって正確で再現性のある結果を得るには、例えば60 km/hの車速で信頼性の高い滑走路測定を実行できる、ILSテストソリューションが必要です。

2周波ILSシステム:コース信号とクリアランス信号は、通常、公称LLZ周波数の8 kHz上と8 kHz下になります。
2周波ILSシステム:コース信号とクリアランス信号は、通常、公称LLZ周波数の8 kHz上と8 kHz下になります。
R&S®EVS300データロガー(グラフ表示)を使用すると、滑走路測定中の連続モニタリングが可能です。
R&S®EVS300データロガー(グラフ表示)を使用すると、滑走路測定中の連続モニタリングが可能です。

電子計測ソリューション

R&S®EVS300は、バッテリー動作の携帯型レベル/変調アナライザで、ILS、VOR、マーカービーコンなどの航法援助(NavAid)システムの検証と保守用に設計されています。100測定値/sの優れた速度を備えたR&S®EVS300は、航空交通の中断を最小限に抑える最高速度での滑走路測定を含め、信頼できるILS地上検査に最適です。

ILS地上検査の最も簡単な方法は、適切なILSおよびGPSアンテナを装備した専用のILS測定車に、R&S®EVS300を設置する方法です。わずか数ステップで、R&S®EVS-K2 GPSモードオプション(GPSスタンピング用)とR&S®EVS-K3 CRS/CLSモードオプション(2周波ILSシステムのコースおよびクリアランス測定用)を備えた、R&S®EVS300をセットアップできます。GPSレシーバーのデータのほかに設定する必要があるのは、以下に示す基本的なILS測定パラメータのみです。

  • ILSチャネル(または公称RF周波数)
  • 測定モード(2周波ILSのCRS/CLRなど)
  • 測定時間(例えば、フル解像度の場合10 ms)
  • ロギング間隔

R&S®EVS300の統合データロガーは、最高車速で、100データセット/秒で記録することができます。各データセットは、レベル、周波数、変調/歪み値、IDパラメータ、接続されたGPSレシーバーのGPS値(時間と位置)など、50以上の異なる測定パラメータで構成されています。

記録されたデータを測定器にグラフィカルに表示(グラフ表示)し、滑走路測定中でも選択したパラメータをモニターできます。したがって、両方のLLZ IFトーンの測定された変調度差(DDM)がリミット内に収まっているかどうかなどを、ただちに確認することができます。

すべての測定データは、CSVフォーマットでUSBストレージデバイスにエクスポートし、さらなるオフライン解析(後処理)、以前の測定値との比較、アーカイブに使用できます。

測定され、ICAOでフィルタリングされたDDM値:エクスポートされたDDMコース測定値により、代表的なスカロップ効果を持つ「生データ」(薄い青色)が表示され、ICAOでフィルタリングされたDDM値(濃い青色)がICAOリミット(赤色)に適合するかどうかがわかります。
測定され、ICAOでフィルタリングされたDDM値:エクスポートされたDDMコース測定値により、代表的なスカロップ効果を持つ「生データ」(薄い青色)が表示され、ICAOでフィルタリングされたDDM値(濃い青色)がICAOリミット(赤色)に適合するかどうかがわかります。

ICAOフィルタリングされたDDM値

LLZ滑走路測定で最も重要なのは、DDM値(生データ)とそのICAOフィルタリング値の評価です。ICAOフィルタリングは、車速に依存します。Annex 10 Vol.1では、地上検査と飛行検査の時定数(秒単位)は、92.6を車速(V、km/h単位)で除算した値として仕様化されています。60 km/hの代表的な車速の場合、1.5秒未満です。

後処理(例えば、MS Excelを使用)では、測定されたDDM値が、計算された時定数でフィルタリングされます。この方法により、検査対象のILS端末が仕様化されたICAOリミット内で動作するかどうかを簡単に実証できます。

以前の滑走路測定値と比較すれば、代表的なDDMトレース内の、ILSシステムの初期動作不良を示す可能性があるわずかな変化(指紋照合)でさえも明らかになります。

まとめ

包括的な機能と優れた測定速度を備えたR&S®EVS300は、要件の厳しいLLZおよびGS信号の定期的な地上検査、特にCAT IIおよびCAT IIIシステムの車両ベースのILS滑走路測定に最適です。R&S®EVS300は、携帯に便利なバッテリー動作の測定器1台でGBASシステムなどの最新の規格もサポートするので、航空管制官やサービス担当者にとって理想的なツールとなります。