R&S®ESMDによるTDOAアプリケーションでのタイムスタンプ精度の向上
R&S®ESMD 広帯域モニタリング受信機での内蔵R&S®ESMD-IGT GPSモジュールと外部GPSアンテナの使用
R&S®ESMD 広帯域モニタリング受信機での内蔵R&S®ESMD-IGT GPSモジュールと外部GPSアンテナの使用
TDOA(到達時間差)ネットワークでは、3つ以上の受信機位置での信号到達の時間差を測定します。時間差を測定することにより、信号発信源の地理的な位置を特定することができます。電磁波は伝搬速度が速いため、高精度なタイムスタンプをI/Qデータストリームに挿入することが受信機の最大の課題です。このため、受信機で時刻を同期するための適切な方法が必要になります。システムの柔軟性を最大限に高めるには、受信機の設定に左右されない絶対タイムスタンプが必要です。
R&S®ESMD-IGTオプションにより、R&S®ESMDに内蔵GPSモジュールを追加します。GPSアンテナを接続すると、このモジュールからGPS時刻と位置がR&S®ESMDに提供されます。
GPSのPPS(Pulse Per Second)信号を使用して、R&S®ESMDの10 MHz内蔵基準周波数を同期します。ソフトウェア制御ループにより、PPS信号の通常のジッタの影響を最小限に抑えることで、R&S®ESMDの周波数安定度と時間精度が大幅に向上します。
このローデ・シュワルツのソリューションでは、追加作業を行うことなくベースバンド・データ・ストリームで高精度の絶対タイムスタンプを利用できます(詳細については、R&S®ESMDのデータシート「PD 5213.9863.22」を参照)。
TDOAアプリケーションでは、タイムスタンプを挿入する際のわずかなミスが間違った位置計算につながる可能性があります。各種設定(中心周波数、帯域幅、スパンなど)の違いが、受信機での信号遅延に影響を及ぼします。これを見過ごすと、タイムスタンプが不正確になり大きなポジショニング誤差が生じる可能性があります。R&S®ESMDでは、処理チェーンのすべての要素の時間的な影響を正確に考慮します。I/Qデータストリームに挿入されたタイムスタンプは、信号がR&S®ESMDのアンテナ入力に到達した瞬間に対応しています。そのため、異なる複数のサイト要件(大信号イミュニティ、感度、リアルタイム帯域幅など)に対応した各種受信機を含む、ヘテロジーニアスTDOAネットワークをセットアップすることができます。従来型のTDOAシステムは、同じ受信機を用いて測定時と同じ設定を使用してセットアップする必要があります。このため実装や実際の測定がかなり複雑なものになり、柔軟性が大きく制限されます。
R&S®ESMD-IGTオプションを備えたR&S®ESMDを4個以上のGPS衛星がクリアに見通せる場所に置いた場合、このGPSモジュールで現在の位置を特定するのに約26秒かかります。動作して約20分経過すると、シンセサイザーのオーブン制御水晶発振器(OCXO)が最適な動作温度に達します。GPSモジュールから提供されるPPSにより、内部基準周波数の精度がさらに高まります。R&S®ESMDは動作中の精度を継続的にモニタリングします。内部基準周波数とPPSとの同期が完了すると、GUI上にメッセージが表示されます。
要件に応じて、以下の3つの異なる動作モードで内部GPSモジュールを使用することができます。
フリーランモード
フリーランモードでは、時間精度が最も低くなります。GPSモジュールによって特定される位置は大きなジッタに左右されます。また、このジッタは時間的な動作にも影響します。アベレージング時間は必要なく、位置がわかっている必要もありません。
アベレージングモード
アベレージングモードでは、ユーザー定義の最小ポジショニング確度および最小アベレージング時間に到達するまで、R&S®ESMDで位置データをアベレージングします。アベレージング位置データが必要な精度になるとすぐに、受信機は自動的に固定モードに切り替えます。
固定モード
固定モードでは、R&S®ESMDで静止位置を基準として使用します。このため、時間的挙動の精度が最も高くなります。座標が正確にわかっている場所に受信機を置く場合は、固定モードでこれらをプリセットできます。位置データが実際の場所に適合しない場合は、R&S®ESMDはフリーランモードに切り替わります。いずれの場合も、正確な位置データと精度の高いタイムスタンプを得るには、衛星受信状況が良好である必要があります。
R&S®ESMD-IGT GPSモジュールと外部GPSアンテナを備えるR&S®ESMDのユーザーインタフェース
グラフィカルインジケーター
内部基準周波数(PPSに同期)を使用、同期完了。このインジケーターは、OCXOのウォームアップが完了し、PPS制御ループがセトリングした後で表示されます。同期が完了すると、固定のGPS位置(固定モード)で最大のタイムスタンプ精度が得られます。