ウルトラワイドバンド(UWB)干渉テスト

UWBアプリケーションが、同一バンドまたは近接バンドの無線サービスが存在する場合も正常に動作することを確認する。

キーレス車両アクセスにおけるUWB技術
キーレス車両アクセスにおけるUWB技術

はじめに

ウルトラワイドバンド(UWB)技術は、短距離での高精度な位置特定および通信を可能にし、高精度測距アプリケーションに多くの利点を提供します。この技術は、500 MHz超の帯域幅を占有する短いバースト状のパルス信号を使用し、通常3.1 GHzから10.6 GHzの範囲の周波数スペクトラムで動作します。UWBは、リアルタイムの資産追跡やナビゲーション、セキュアアクセス制御、非接触型モバイル決済などを可能にします。自動車アプリケーションでは、Car Connectivity Consortium(CCC)で定義されるデジタルキー用途向けに最初に導入されました。高精度、高信頼性、高セキュリティー性を備えたUWBは、キーレスエントリーシステム以外にも、車内置き去り検出(CPD:子どもの存在検知)システムやジェスチャーコントロールなど幅広い自動車アプリケーションに適しています。

UWBは低い送信パワー(例:-41.3 dBm(1 MHz))を特徴としており、他の無線サービスが使用する周波数バンドでも運用可能です。したがって、特にセキュリティー関連において、UWBアプリケーションが他の無線サービスによって妨害されないかどうかをテストすることが重要です。干渉信号の発生源はさまざまですが、最も一般的なのは、UWB周波数バンドの内側または近接で動作する他の無線サービスによる干渉です。そのような干渉源としては例えば、6 GHzバンドのWi-Fi、C-V2x、将来のセルラーネットワークなどが考えられます。

課題

開発および品質保証の過程では、既存および将来の無線サービスがUWBアプリケーションに与える影響を調査する必要があります。これにより、セキュリティー関連のUWBアプリケーションが長期にわたり正常に機能することを確認し、干渉を回避するための適切な対策を講じることができます。

ローデ・シュワルツのソリューション

セキュアな距離測定は、さまざまなUWBアプリケーションに不可欠な機能です。そのため、UWB用のデバイスやチップセットの検証、さらにはアンテナ校正には、正確なTime of Flight(ToF)測定が必要です。さらに、異なる周波数やパワーレベルで干渉信号が存在する条件でのToFを観測することで、ToFを利用して干渉信号の影響を評価することができます。干渉信号は、微弱なUWB信号の受信を著しく劣化させる可能性があります。

正確なToF測定や受信感度測定のため、ローデ・シュワルツは容易に構成可能なテストソリューションを提供しています。R&S®CMP200 無線機テスタとR&S®CM-Z310A UWBリモート無線ヘッド(RFパワースプリッター/コンバイナーと各種アッテネータが付属)を組み合わせることで、追加の校正や経路遅延測定を行うことなく、ToFおよび受信感度を測定できます。

干渉測定は、制御された環境または無線(OTA)で実施できます。R&S®CMQ200は、UWB OTAテストに最適です。0.3 GHzから14 GHzの周波数範囲に対応し、80 dB以上のシールド効果を提供します。チャンバーは、お客様のテスト要件に応じて柔軟に構成可能です。

干渉信号の発生には、R&S®SMM100A ベクトル信号発生器を使用します。この発生器は、100 kHz~44 GHzの周波数レンジ全体で、非常に優れたRF特性を発揮します。本機は、既存の無線規格で用いられる6 GHz未満のバンドや、5G NR FR1およびWi-Fi 7用に新たに定義されたバンドもカバーしています。

Wi-Fi信号の干渉
図2:UWB受信感度に対する、20 MHz帯域幅(青)および320 MHz帯域幅(赤)のWi-Fi信号の干渉
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アプリケーション

図1に、UWB干渉テスト用のテストセットアップを示します。R&S®SMM100Aにより生成された干渉信号は、RFパワーコンバイナー(上の画像)経由でUWB被試験デバイス(DUT)に供給されます。OTAの場合、干渉信号は、R&S®CMQ200 チャンバー内のアンテナ経由でUWB DUTに供給されます。ToFおよび受信感度測定では、R&S®CM-Z310A UWB リモート無線ヘッドをR&S®CMP200 無線機テスタに接続します。両測定は、R&S®WMT 無線製造テストツールと内蔵のUWB PHYテストスイートを用いて実行され、外部PCにより制御されます。

R&S®WMTツールは、Pythonベースのソフトウェアソリューションで、5G NR、Wi-Fi、Bluetooth®、UWB(TX、RX、ToF、AoAを含む)のRFチップセット/モジュールテストに対応しています。量産向けのテストや自動化R&Dアプリケーション向けに最適化されています。さらに、R&S®WMTは、標準FiRa UCIコマンド通信を使用して制御インタフェース(COMポート)経由でDUTを制御します。

ToFまたは受信感度の測定中、干渉信号は特定周波数かつ可変パワーレベルで、パワーカップラー経由またはアンテナを介したOTAを通じて加えられます。DUTに対する干渉信号の影響をテストするため、干渉信号レベルを既定値まで上げます。

オペレーターは、干渉によってToF値が変化するか、またはToF測定が不可能になるかを確認できます。図2に、信号帯域幅の異なるWi-Fi信号(6.245 MHz、20 MHzおよび320 MHz帯域幅)が存在する条件でのCH5(6,489.6 MHz)のUWB受信感度の測定結果を示します。

まとめ

ローデ・シュワルツの包括的なテストソリューションにより、信頼性とセキュリティー性に優れたUWBアプリケーションを確保できます。これにより、正確なToF測定、干渉テスト、UWBデバイス/チップセットの認証が可能になり、長期にわたる動作を保証できます。

UWB干渉テスト用のテストセットアップ
図1:UWB干渉テスト用のテストセットアップ:有線(上)/OTA(下)

Bluetooth®のワードマークとロゴは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する登録商標であり、ローデ・シュワルツはライセンスの許諾を受けて、これらの商標を使用しています。

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