1章:ノイズの発生のメカニズム

まず最初に、話をわかりやすくするために、ノイズ発生のメカニズムについて簡単に触れておきます。

既に述べたように、ノイズは遠方界でのレベルが重要になりますが、その原因を突き止めるには近傍界での測定が必須です。ノイズの発生源を探る際にはノイズが発生するメカニズムを知る必要があります。

ノイズが遠方界で発生する際、被測定物には必ず以下の3つが含まれています。

1) ノイズを放射するアンテナとなる素子
2) ノイズを発生させる素子とアンテナとの結合機構
3) ノイズを発生させる素子

つまり、ノイズを発生させる素子(例えばコンバータやスイッチング電源)などを特定しただけでは、ノイズ対策としては不十分です。

例えるなら、推理小説で実行犯と真犯人が別に存在する、と同じ状況です。探偵は、まず事件現場に残された証拠(遠方界でのノイズ)から実行犯(ノイズを放射するアンテナ)の特定を行います。続いて、実行犯の人間関係を洗い出すことで、真犯人との接点(結合機構)を見出します。そこから真犯人が犯行に及んだ動機(近傍界でのノイズ)を照合させて、真犯人(ノイズの発生源)を捕まえます。

このように、ノイズ測定は推理小説と同じようなステップをたどります。事件現場に何度も赴くこと(遠方界でのノイズ測定)は、真犯人逮捕に繋がるものの、多大な時間と労力を要します。そのため、科捜研や事件本部での証拠品洗い出し作業(近傍界でのノイズ測定)を、いかに効率よく行うかという点が要求されます。だからこそ、科捜研には最新鋭の分析機器(ノイズ測定でのオシロスコープ)が必要になるというわけですね。

次章からはいよいよノイズ測定(犯人捜し)の実際の流れを見ていきましょう。

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