5章:真犯人の犯行の動機をつきとめる

なぜノイズが発生するのかを 差動プローブで特定する

最後に、差動プローブを用いた測定を行います。DC-DCコンバータを近磁界プローブで測定しつつ、差動プローブでSPIインタフェースの出力を測定した結果を図に示します。

新型のオシロスコープは、時間軸上での表示をFFT演算の結果と同時に表示できるという最大の強みがあります。RTOオシロスコープの場合、他メーカーが提供するスペクトラム・アナライザ搭載モデルとは異なり、時間ドメインと周波数ドメインの測定結果の「完全な同期」が可能です。この結果から、SPIインタフェースがアクティブな時、すなわちSPIのクロック信号が観測された時にノイズが発生していることが分かりますね。

図22 差動プローブでのSPIインタフェース測定結果
図22 差動プローブでのSPIインタフェース測定結果

今回の調査結果のまとめ

今回のノイズ源は受話器ケーブルと青のLANRGMIでした。実行犯は受話器ケーブルのDC-DCコンバータであるので、コンバータの位置変更によりSPIモジュールから離せば、ノイズを抑制できると考えられます。もう一方の青のLANケーブルについては、ギガビット・イーサネット物理層LANの接地面変更が必要になります。LAN物理層の パワーバスの設計変更が有効と考えられます。

ノイズを放射するアンテナ
(実行犯)
ノイズ発生源
(真犯人)
考えられる対策
受話器ケーブル DC-DCコンバータ コンバータの位置を変更
(SPIモジュールから離す)
青のLAN RGMI
ギガビット・イーサネット物理層
LANの接地面を変更
LAN物理層の パワーバスの設計変更

EMIテスト・レシーバとオシロスコープは補完関係にある

真犯人探しに役立つ「ツール連携」の考え方

さて、ここまで、ノイズ源の候補割り出しから、原因の特定と対策まで、オシロスコープを使った一連の犯人捜しのプロセスを紹介しました。いかがでしたか?

冒頭でも述べたようにEMIテスト・レシーバを使用したノイズ測定には時間がかかります。特にコンプライアンス・テストなどを行う場合は、テストハウスや暗室などを使った大掛かりな測定が必要になり、お金と時間、深い経験とスキルが必要です。最新オシロスコープの高品質なFFT機能を使えば、EMIテスト・レシーバに近い測定結果が短時間に得られます。特に近傍界での測定には、測定にかかる手間と時間が大幅に削減でき、誰でもより確実にノイズ源を見つけることができます。つまりEMIレシーバとオシロスコープは補完関係にあり、連携して使用することで、迅速で正確なノイズ源の特定ができます。続くコンプライアンス・テストで合格する確率が飛躍的に向上します。

さて、最後にもう1つ、オシロスコープを語る上で本体のスペック以上に注意すべきポイント「プロービング」があります。最終章では適切なプローブの選定についてお話しします。

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オシロスコープは、間違いなく、電子技術者が使用することを目的として作成された最も優れたツールの1つです。現代のアナログオシロスコープの作成から50年以上の間に、オシロスコープ、オシロスコープの動作原理、使用方法、オシロスコープのアプリケーション固有の動作例に関して、何百もの有用な文書や何千もの記事が書かれてきました。