オシロスコープ本体のスペック以上に気をつけなくてはならないこと

終章:プローブの正しい選び方

オシロスコープで波形を見る際、オシロスコープ本体のスペック以上に気をつけなくてはならないのが、プローブの適切な選択です。プローブは測定ポイントに直に接触する部分であるため、その選択や使用法を誤ると、思わぬ測定結果となる場合があります。

例えば、図1に同じ周波数のパルス波を適切なプローブチップを装着したアクティブ・プローブと、標準クリップを装着したパッシブ・プローブの双方で観察した結果を示します。

この結果から明らかなように、パッシブ・プローブの測定結果では、矩形波に大きなリンギングが観測されるのに対して、アクティブ・プローブでは矩形波のリンギングが大幅に抑えられています。これは、一般的なパッシブ・プローブの周波数帯域が500 MHz程度なのに対し、アクティブ・プローブは数GHz~数十GHzの周波数帯域を持っており、アクティブ・プローブの方が測定信号の持つ高周波の成分も考慮して測定できているためです。このように測定環境に対して適切なプローブを選択することは、正確な測定結果を得る上で大変重要なのです。

図1 アクティブ・プローブとパッシブ・プローブとのパルス波の見え方の違い
図1 アクティブ・プローブとパッシブ・プローブとのパルス波の見え方の違い (図中上:アクティブ・プローブによる測定結果、図中下: パッシブ・プローブによる測定結果)

正しいプローブ選択のポイント

ポイント1:測定器系の持つ寄生容量

デジタル通信の急速な発展に伴い、ギガヘルツ級のクロック信号解析の必要性が増してきています。そのような高周波信号の測定においては、測定系全体の寄生容量に注意する必要があります。オシロスコープとプローブを含む測定系には、取り除くことが不可能な固有の寄生容量が存在します。そのため、信号が高周波になるにつれて、この寄生容量の容量性リアクタンスが低下し、被測定物からの電流がオシロスコープ側へ流れにくくなります。つまり、プローブの測定可能な帯域は、この寄生容量によって決まります。高価な広帯域オシロスコープを使用しても、接続したプローブの寄生容量が大きく、測定可能な周波数がオシロスコープの帯域より低いと、そのオシロスコープ自体の性能を十分に発揮することができなくなってしまいます。

こうした事態を防ぐために、一般的にプローブは、使用するオシロスコープの帯域の1.5倍以上の帯域を持つものを選択する必要があります。プローブの帯域と入力キャパシタンス(寄生容量も含まれる)は、製品仕様に記載されています。

→ ローデ・シュワルツのアクティブ・プローブは入力キャパシタンスを抑えられ、測定帯域に対して余裕を持った設計となっており、高周波信号も高確度で測定することが可能です。

図2 プローブ先端形状
図2 プローブ先端形状

ポイント2:確実なプロービング

信号を正確に測定するには、何よりもまず測定点を確実にプロービングする必要があります。しかしながら実際の回路では、目的の測定端子がとても小さい場合や隣接端子との間隔が大変狭い場合があります。

そのような場合、先端が幅広い形状のプローブを用いると、目的の測定点に物理的にアクセスすることが困難であり、その結果、無理のあるプロービングや誤接触・短絡を引き起こし、最悪の場合、被測定物を壊してしまう原因となります。

→ ローデ・シュワルツのオシロスコープに付属しているパッシブプローブは図2に示すようにフック部分が芯状で細く、またクリップも接触部以外はプラスチックカバーで完全に被覆しています。これにより、隣接端子への誤接触の可能性を回避できます。一番よく使われるプローブだからこそ、安全設計で確実なプロービングが行える製品を提供しています。

図3 マイクロ・ボタンを搭載したアクティブ・プローブ
図3 マイクロ・ボタンを搭載したアクティブ・プローブ

ポイント3:使いやすさ

プローブで回路をあたる際、両手が塞がってしまいオシロスコープの操作が出来ずに歯がゆい経験をされた方も多いと思います。プローブを選択する際には、性能はもちろんのこと、使いやすさも重要なポイントです。

→ ローデ・シュワルツのアクティブ・プローブには、図3に示すようにプローブを握ったままオシロスコープを制御できる「マイクロ・ボタン」と呼ばれるボタンが搭載されています。このボタンには、事前に各種機能を割り当てることができます。例えば「波形取得停止(Stop Acquisition)」という機能を事前に設定しておけば、目的の測定ポイントに確実にプロービングした状態の波形を、指先にあるマイクロ・ボタンを押すことで素早く簡単に取得できます。

図4 RTOとEMC近磁界プローブ(HZ-15プローブセット)
図4 RTOとEMC近磁界プローブ(HZ-15プローブセット)
図5 R&S®RT-ZM モジュラープローブ・システム
図5 R&S®RT-ZM モジュラープローブ・システム

ローデ・シュワルツのプローブのラインナップ

ローデ・シュワルツでは、汎用的なパッシブ・プローブはもとより、シングル・エンドおよび差動のアクティブ・プローブや、高電圧プローブ、電流プローブ、そしてEMC近磁界プローブなど、各種製品を取り揃えています。

たとえば、今回の犯人捜しのプロセスで測定ツールとして利用したRTOオシロスコープの場合、電源解析オプションとアクティブ・プローブと電流プローブを組み合わせた電源解析や、また高速なFFT機能とEMC近磁界プローブを用いた本格的なノイズ測定なども可能です。

特にローデ・シュワルツの近磁界プローブR&S HZ-15(図4)は、30 MHz~3 GHzの周波数をカバーしており、オシロスコープによるEMIの簡易評価には最適なプローブとなっています。

また、アクティブ・プローブとしては、ローデ・シュワルツのモジュール型アクティブプローブR&S®RT-ZM(図5: 画像を右スライドしてください)が推奨できます。帯域幅1.5 GHz~16 GHzのアンプモジュールが使用できるこのプローブのアンプには小型化された高品質の高周波同軸ダブルソケットSMPコネクタが搭載されています。前述の「マイクロ・ボタン」も備えており、さまざまなプローブチップ・モジュールを柔軟に接続できるため、あらゆる場所にプロービングできるのが特徴です。詳しくはオシロスコープ・プローブの製品ページをご覧ください。

以上、お読みいただきありがとうございました。

さらに詳しく知ろう