ローデ・シュワルツとIHP社が、初めて6Gおよび車載レーダー向けOTA試験セットアップでDバンド周波数の 特性を評価

12月 17, 2020

ミリ波周波数をサポートする5Gネットワークやその対応機器と同様に、将来のモバイル通信規格や車載レーダー・アプリケーションに向けたアンテナシステムとRF送受信モジュールは、その試験が難しい課題になるという同じ側面を持ち合わせています。周波数域が広いことや、アンテナの部品数がさらに多くなるうえ、標準として定まった外部用RFコネクタが無いため、シールド環境でのOTA試験を重ねていく必要があります。今回、ワイヤレス通信の試験に高い技術をもつローデ・シュワルツとIHP GmbH（Innovations for HighPerformance Microelectronics）社は、このOTA試験方法をサブTHz帯に適用することに成功しました。これは、Dバンド周波数帯のレーダーモジュールに対するフル2D/3DのOTA（over-the-air）測定を初めて実現したことになります。

試験セットアップは、ローデ・シュワルツのR&S ATS1000アンテナ・テスト・システムとR&S ZNA43ベクトル・ネットワーク・アナライザ、R&S AMS32アンテナ計測ソフトウェアで構成しました。なかでもR&S ATS1000アンテナ・テスト・システムは、OTA測定とアンテナ評価に対するコンパクトな移動式シールド・チャンバであり、5Gのミリ波評価アプリケーションに最適です。今回はDバンド周波数に対応できるようにローデ・シュワルツのグループ企業Radiometer Physics GmbHが拡張したものをセットアップに使用しました。この拡張により、プローブにおいて送信および受信の両方向で直接的な周波数変換が可能となっています。ただし、アンテナ・テスト・システム本体の機械的な改造やRF配線の追加はまったく必要ありません。このセットアップを用いれば、被試験デバイス（DUT）からのDバンド帯における放射の振幅と位相のコヒーレントな応答を測定できます。またR&S AMS32ソフトウェアのNF-FF変換と極めて高精度かつ精密なポジショナ機能によって、ポスト処理を含めて完全に自動化した3Dパターン測定を短時間に実行可能です。

IHP社からは、4つの異なるDUTを提供いただきました。同じDバンドのレーダー送受信チップセットをベースとするものの、それぞれアンテナ構造が異なるDUTです。オンチップのシングルパッチ型やスロット付き多層パッチ型、オンチップのアンテナアレイなどです。今回のOTAによる特性評価によって、シングルパッチよりも、多層パッチの帯域幅がより広いことが実証されました。

2つの異なるセットアップを使いながら空間測定することによって、様々なDUTの性能特性を評価しました。特に角度ステップサイズを1度から5度へと大きくしたことで、1つのDUTに対するトータルの試験時間が、70分から12分に短縮可能となりました。また得られた測定データをもとに、IHP社の研究者がDUTの様々な設計を比較した結果、レーダーセンサのFOV（視野）について、搭載のリフレクタの面積が限定されることによる影響も解析することができました。

IHP社社長のGerhard Kahmen博士は、次のように話しています。「サブTHz周波数帯のシステムは、研究や多数の応用分野でますます注目を集めるようになっています。当社IHPはDバンド対応レーダーチップとして複雑なアンテナ構造を実現していますが、その放射パターンの特性評価に対し、Dバンドに拡張されたローデ・シュワルツのOTA試験システムは、時間的な効率に優れ、精度も高いという素晴らしい方法を提供してくれます。当社にとって、そうした測定結果は、アンテナ構造の物理学的特性を理解し、その性能のさらなる改善ははかるうえでとても貴重です。ワイヤレス通信やミリ波通信の分野で業界をリードするローデ・シュワルツというパートナーとの協力が成果を収めたことで、研究と応用の間の緊密な連携によるメリットも明らかになりました」。

また、ローデ・シュワルツのシステム&プロジェクト担当副社長Alexander Pabstは次のように説明しています。「業界をリードする当社OTA試験ソリューションの発展に向けて、Innovations for High PerformanceMicroelectronics（IHP）社のような優れたパートナーと協力できることに大きな期待を寄せています。こうした共同の取組みは、研究者や産業分野の主要企業にとって、これからの車載レーダー・アプリケーションや、ゆくゆくは６Gと呼ばれるであろうワイヤレス通信規格に対応したアンテナシステムや送受信モジュールのテストと特性評価に貢献することになるでしょう」。

BバンドのO T A測定については、さらなる情報を動画でもご用意しています：https://www.rohde-schwarz.com/_251220-987264.html

5Gの先を見据えたローデ・シュワルツの取組みについて、詳しくはhttps://www.rohde-schwarz.com/wireless/B5Gをご覧ください。

すべてのプレスリリースは、画像のダウンロードを含め、http://www.press.rohde-schwarz.com からインターネットでご提供しています。

IHP GmbH社について

IHP（Innovations for High Performance Microelectronics）社は、大学以外の研究機関としてライプニッツ協会（Leibniz Association）の会員企業となっています。同社の相互に関連し調和のとれた研究プログラムを通じ、マイクロ/ナノ・エレクトロニクス用素材のほか、スマートシステム、高周波回路、システムアーキテクチャ、ワイヤレスシステムなどの技術を研究しており、シリコンベースの高周波マイクロ・エレクトロニクス分野における世界で最も影響力の大きい研究機関の1つです。IHP社は、基礎研究から応用アプリケーションへの移行を担うかたちで、ドイツを含む欧州の革新的な技術力と可能性に多大な貢献を果たしています。

https://www.ihp-microelectronics.com

Rohde & Schwarz について

ローデ・シュワルツは、試験・計測、放送・メディア、航空・宇宙、防衛、セキュリティ、ネットワークおよびサイバーセキュリティの各分野で高度なソリューションを提供するリーディング企業です。技術指向のグループとして、通信・情報・セキュリティ関連製品をもとに、産業界や行政機関のお客様がさらに安全に“つながる”社会を実現できるようご支援しています。2020年6月30日現在、ローデ・シュワルツでは全世界で約12,300名の従業員が活躍しています。2019/2020会計年度（昨年7月から本年6月まで）には独立した企業グループとして25.8億ユーロの売上を達成しました。ドイツ・ミュンヘンの本社を中心に、70カ国以上に子会社を配し、アジアと米国には地域拠点を置いています。

R&S ® は、Rohde & Schwarz GmbH & Co. KGの登録商標です。