R&S®Essentials | DC電源の基礎

最も一般的なタイプの電源

著者:R&S Essentials 電源プロダクトマネージャー、Anja Fenske

DC電源を選ぶ際には、最初にそれぞれの用途に最適な電源のタイプを見極める必要があります。DC電源には、3種類の一般的なタイプが存在します。さまざまなデザインを通じて、高度に安定した電圧、低リップルで低ノイズ、および高い効率性を得ることができます。

異なる設計原理に基づいた基本的な電源のタイプ

リニア電源

リニア電源

リニアレギュレーション電源は、ラインおよび負荷過渡現象が大きい場合でも、高度に安定した出力電圧、低リップルで低ノイズ、および高速レギュレーションを提供できます。リニア電源では、スイッチングモード電源と比較して電磁波障害を大幅に抑えることができます。通常の主電源変圧器により、電源ラインと2次回路(出力段)が絶縁されます。それに続く整流器によって、未調整の電圧がシリーズアクチュエーターに供給されます。レギュレーター回路の入力と出力にあるキャパシタは、バッファーとして機能しリップルを低減します。

高精度基準電圧によって、アナログ出力増幅器が制御されます。この増幅器は一般に高速であるため、負荷変動に対して非常に短い時間での回復が可能になります。

R&S Essentialsのリニア電源:R&S®NGA100、R&S®NGL200、R&S®NGM200、R&S®NGU201/401.

 スイッチングモード電源(SMPS)

スイッチングモード電源(SMPS)

SMPS(例:R&S®NGP800)は、リニアレギュレーション電源と比較して効率性が非常に高くなっています。最初に、AC電源ライン電圧を整流します。入力電圧が大きいため、キャパシタンスの小さなバッファーキャパシタが使用されることがあります。次のステップでは、変換対象のDC電圧を高周波でチョッピングします。

これはスイッチングトランジスタで行われ、必要なものは比較的小さく軽量のフェライトチョークや低損失の変圧器のみです。スイッチングトランジスタは完全にオン/オフに切り替えられるため、スイッチング損失は小さくなります。出力電圧は通常、スイッチングトランジスタのデューティーサイクルを変更することで調整されます。整流器とローパスフィルターによって出力品質の向上が図られます。

混在型アーキテクチャーの電源

上記の基本的なデザインをさまざまな形で組み合わせたものが使用されています。例えば、R&S®NGE100B 電源は、入力で主電源変圧器を使用し、その後の整流器とスイッチング回路で出力電圧の調整を行うことで、高い効率を実現しています。リニアステージによって、出力の不要な信号成分が低減されます。混在型アーキテクチャーの製品として、その他にR&S®HMP2000/4000などがあります。

DC電源の象限

電流が正の電圧端子に流れ込む場合、この電源は電子負荷として機能しています。この電源はパワーを供給するのではなく、シンクしています。ソースとシンクの両方で機能する機器では、バッテリーまたは負荷のシミュレーションを行うことができます。これらは、2象限(または4象限)電源と呼ばれます。ローデ・シュワルツのは、2象限および4象限アーキテクチャーを提供しています。ソースモードからシンクモードへの切り替えは、機器によって自動的に行われます。外部から印加された電圧が設定公称電圧を超えると、電流が電源に流れ込みます。これは、電流読み値が負になることでわかります。

電源のアーキテクチャーは、直交座標系を用いて完全に定義できます。4つの象限に正および負の電圧と電流のすべての組み合わせが示されます。下の図は、電圧を縦軸、電流を横軸に取った座標系を表しています。

上述のように、標準的な電源では、0 V~20 Vのような正極性の電圧のみが発生します(第1象限で動作します)。電源の外部配線を切り替えずに出力端子で正または負の電圧を提供できる場合、この電源はバイポーラー電源と呼ばれ、第1象限と第3象限で動作し、–20 V~+20 Vなどの電圧を提供できます。こうした機器は、0 Vポイントをまたいだバイポーラー電圧に対する半導体の特徴的動作をテストする場合などに使用できます。

第1象限と第3象限で動作できる電源は、通常、正および負の電圧と電流に対するシンク機能も備えています。これらの電源は4つのすべての象限で動作でき、ソース・メジャー・ユニット(SMU)と呼ばれます。第1象限と第3象限では、電流が電圧端子から流れ出します(機器がパワーを供給します)。第2象限と第4象限では、電流が電圧端子に流れ込みます(機器がパワーをシンクします)。

電圧範囲が同じチャネル

ローデ・シュワルツの大半の電源は、すべてのチャネルで電圧範囲が同じです。このため、特定のアプリケーションでどのチャネルを選択するかは問題ではありません。各チャネルを別々の電源とみなすことができます。

リップルおよびノイズ

高度な複合電子回路は非常に複雑で、電源ライン上の電圧変動に敏感です。被試験デバイス(DUT)に電源を供給する際の干渉を最小限に抑えるには、非常に安定した出力電圧/電流を提供できる能力が電源に求められます。出力に電圧変動がないことが理想的ですが、 実際には、2種類の変動(周期的変動(リップル)とランダム変動(ノイズ))が回路やデバイスに影響する可能性があります。これは、PaRD(Periodic and Random Deviations)とも呼ばれます。リニア電源は、スイッチング電源と比較して高周波リップルが大幅に小さくなります。

特殊用途向け電源や一部のベーシックな電源(R&S®NGA100)では、リニア電圧レギュレーションを使用して残留リップルや残留ノイズを最小化しています。

出力段をリニアな設計にすることで、複合半導体などの影響を受けやすい設計に干渉の少ない電圧を供給できるようになります。低リップル値と低ノイズ値は、パワーアンプやMMICの開発にも最適です。

可変出力インピーダンス

特殊用途向け電源の出力は、さまざまな方法で設定できます。例えば、出力インピーダンス、スイッチオンディレイ、各種トリガモードなどのパラメータを設定できます。DUTへの負荷の影響を抑えるには、電源の出力インピーダンスをできるだけ小さくする必要があります。ただし、アプリケーションによっては、バッテリーを制御下でシミュレートしたり、バッテリーの放電に伴う内部インピーダンスの増加をシミュレートしたりする必要があります。R&S®NGL200R&S®NGM200およびR&S®NGU201 電源では、出力インピーダンスを調整できるため、こうしたアプリケーションに対応することができます。

まとめ

  • DC電源には、リニア、スイッチングモード、混在型アーキテクチャーという3種類の一般的な方式が存在します。
  • リニア電源は、リップルやノイズが少なく安定した出力電圧を供給できるため、破損しやすい電子機器に最適です。
  • スイッチングモード電源(SMPS)はリニア電源よりも高効率で、電圧レギュレーションに高周波チョッピングを採用しており、より小型のコンポーネントを使用できます。
  • 混在型アーキテクチャーの電源は、リニアとスイッチングモードの特長を兼ね備えることで、効率の向上とノイズの削減を実現しています。
  • 電流が正の電圧端子に流れ込むと、電源は電子負荷として動作し、電力を供給(ソース)するのではなく吸収(シンク)します。
  • 2象限または4象限電源はソースとしてもシンクとしても動作可能で、バッテリーや負荷をシミュレートできます。このような機器は、ソースモードとシンクモードを自動的に切り替えます。
  • ソース・メジャー・ユニット(SMU)はすべての象限で動作可能な電源で、通常、正負両方向の電圧と電流に対するシンク機能も備えています。

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