衛星ナビゲーション・ポケットガイド

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GNSSの基礎と高度なテスト技法を習得

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衛星ベースのPNTテクノロジーに関して図表を用いて分かりやすく解説

著者:Dr. Markus Irsigler、Robert Obertreis

この解説書は、衛星ベースのナビゲーションテクノロジーに関する簡潔な図解入りガイドです。位置測定、ナビゲーション、時間測定(PNT)の中心的原理について学ぶことができます。グローバルシステム(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou)、レシーバテクノロジー、およびポジショニング確度改善のための補強方法について理解を深めることができます。また、このガイドではGNSSの脆弱性と、ジャミングやスプーフィングなどの脅威、および基本的な干渉軽減とテスト手順についても解説します。

ポケットガイドの内容は以下のとおりです。

  • GNSSの基礎:GNSSの原理、コンポーネント、アプリケーション
  • システムの種類とポジショニング確度:スタンドアロンシステムと補強システム、衛星位置決め、確度の要因、ポジショニング確度向上のための各種手法(電離層補正など)
  • グローバルシステムおよび信号:GNSS信号の特性とグローバルシステム(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDouなど)
  • レシーバテクノロジーと脆弱性:GNSSレシーバテクノロジー、GPSの脆弱性と脅威、干渉軽減テクノロジー
  • 高度なアプリケーションとテスト:特殊なGNSSアプリケーション、シミュレーションおよびテスト方法(自動テスト、RTKテストなど)

このポケットガイドは、衛星ベースのPNTテクノロジーに関する明確で簡潔な参考図書として役立ちます。

測位衛星システムの概要

測位衛星システムは、正確な航法(ナビゲーション)と測位に重要な役割を果たしています。以下のようなさまざまなアプリケーションのための基本的データの入手に役立ちます。

  • 自動運転
  • 無人自律型システム(UAS)
  • 輸送
  • 航空
  • 農業
  • タイミングサービス
  • 防災
  • セキュリティサービス
  • 科学研究

全球測位システムは、さまざまな軌道面上に配置された複数の衛星から構成され、全世界でのカバレッジと可用性を実現しています。また、ある地域をカバーするように衛星軌道を設計し、最適化することで、特定の範囲に限定した測位サービスを提供することもできます。

図1:測位衛星システムの概要

衛星ベースの測位

衛星ベースの測位は、三辺測量の原理に基づいています。測位衛星レシーバは、複数の衛星から信号を受信します。衛星からの信号には、現在時刻と、その時点での各衛星の位置に関する情報が含まれています。信号は光速で伝搬するので、レシーバは到着時間(ToA)から衛星との間の距離を計算できます。3基の基地の衛星とレシーバの間の距離がわかれば、三辺測量を使用してレシーバの3次元位置(緯度、経度、高度)を判定できます。

図2:衛星ベースの測位の基本原理である三辺測量

これら3基の衛星に加えて、レシーバのクロックと衛星の精密な原子時計の間の時間のずれを補正するために、4基目の衛星が必要です。この基本原理が、すべての無線航行衛星業務(RNSS)システムの基盤となっています。

GNSSの測位手法にはいくつかの種類があります。

  • スタンドアロンGNSS
  • 補強型GNSS
  • 高精度GNSS

図3:スタンドアロンから高精度GNSSまでの測位確度

これらすべての方法は、補正の種類(OSR、SSR)、観測の種類(コード、キャリア)、サービスエリア(ローカル、地域、グローバル)、誤差低減機能、結果の測位確度に関して異なっています。1 m未満の確度が必要な場合、キャリアベースの測位が必須です。高精度GNSSの確度は、方法によって異なります。PPPサービスの確度は数デシメートル程度で、PPP-RTKサービスでは10 cm以下です。RTKでは1センチメートル前後という最高の確度が得られますが、基準局近くでないと利用できません。確度とインフラの複雑さのバランスを考えると、高い確度が得られ、グローバルカバレッジが可能なPPP‑RTKが、多くの場合に最適な方法となります。

全球および地域航法衛星システム

GNSSは「Global Navigation Satellite System」の略です。GNSSにはいくつかの種類があり、多くはさまざまな国の政府機関によって運用されています。

例:

  • GPS:アメリカ政府(具体的にはアメリカ国防省)によって運用されています。当初は軍事用に開発されましたが、後に民間からも利用できるようになりました。
  • Galileo:EUによって運用されています。民生用に設計されており、GPSおよびGLONASSシステムを補完する役割を果たします。
  • GLONASS:ロシア政府によって運用されています。他の測位システムと独立に動作するよう設計されています。
  • BeiDou:中国政府によって運用されています。静止軌道と非静止軌道の衛星が使用されています。
  • NavIC/IRNSS:インド宇宙研究機関によって運用されています。主にインド亜大陸にサービスを提供しています。
  • QZSS:日本政府によって運用されています。これは、GPSを補完し、アジア・オセアニア地域の、特に高いビルがある都市部での可用性と確度を強化するものです。

衛星航法補強システム(SBAS)は、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDouシステムに補正を加えて確度を改善するための地理空間テクノロジーです。地上の基準局を使用して、GNSS衛星に対する差分補正値を導出し、静止衛星を通じてそれらの補正値をブロードキャストします。

GNSSレシーバテクノロジー

GNSSレシーバの基本的アーキテクチャーは、以下の機能ブロックに分けられます。

  • アンテナ:GNSSアンテナは、右旋円偏波(RHCP)で、Lバンド周波数レンジで動作します。主な役割は、大きい仰角での衛星からの信号捕捉を最適化するとともに、小さい角度から来ることが多いマルチパス信号の影響を減らすことです。
  • プリアンプ:このセクションは、アンテナハードウェアに含まれる場合もあり、低雑音増幅器(LNA)、ジャミングおよび干渉排除用のフィルタ、バーンアウト保護から構成されます。
  • フロントエンド:このセクションは、フィルタリング(帯域外干渉の抑圧)、追加の増幅、中間周波数(IF)へのダウンコンバージョンなど、すべてのアナログ信号処理作業を行います。
  • A/D変換:アナログIF信号は、このセクションでデジタル化されます。
  • 信号処理:デジタル信号処理には、ドップラー効果の除去、信号と測距コードのミキシング、補正値作成のためのサンプル蓄積が含まれます。信号処理ユニットからは、GNSSの基本観測値である疑似距離、キャリア位相、デルタレンジが出力されます。
  • PVT処理:GNSSの基本観測値を使用して、位置、速度、時間(PVT)結果が計算されます。これはGNSS観測方程式を解くことによって得られ、最小二乗調整または、カルマン・フィルタリングなどのさらに高度な方法が用いられます。

場合によっては、PNTを計算するため、外部センサやその他のデータソースが用いられることもあります。

図4:一般的なGNSSレシーバのブロック図

GNSSレシーバにはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なるアプリケーション向けに設計されています。

  • サーベイグレードレシーバー:センチメートルレベルの確度が必要な大地測量や建設などのアプリケーション
  • マッピンググレードレシーバ:GISデータ収集、農業、林業
  • 海事GNSSレシーバ:海上航法や漁業アプリケーション専用
  • 航空GNSSレシーバ:航法(ナビゲーション)や着陸などの飛行操作
  • 車載用レシーバ:自動車やその他のビークルの内蔵ナビゲーション
  • パーソナル/ハンドヘルドレシーバ:スマートフォンやフィットネスウォッチなどの携帯デバイス
  • タイミングレシーバ:電気通信や電力網などのインフラ向けの正確な時間基準
  • 宇宙空間レシーバ:衛星の軌道航法や時間測定、科学ミッションのサポート

GNSSレシーバの機能および性能特性は、そのタイプによって決まります。GNSSレシーバの一般的な仕様としては、チャネル数、周波数カバレッジ、感度、確度、更新レート、TTFF(初期捕捉時間)、GNSS互換性が挙げられます。

GNSSの脆弱性と脅威

さまざまな種類の干渉や影響によって、信号が劣化し、PVT情報計算に誤差が生じます。その結果、特定地域でサービスが利用できなくなる場合もあります。

信号劣化の原因は、以下の3つのカテゴリに分けられます。

  • システム固有の信号劣化:衛星、インフラ、アーキテクチャから生じるもの
  • 信号経路上の信号劣化:大気層、ドップラーシフト、宇宙気象現象によって生じるもの
  • ユーザー環境に起因する信号劣化:建物や樹木に加えて、マルチパス伝搬やジャマーなど

図5:GNSS信号劣化の原因

ユーザー環境に起因する信号劣化は、種類、原因、影響に基づいてさらに分類できます。原因には意図的な干渉と非意図的な干渉があり、どちらも信号の劣化やサービスの中断につながります。一方、レシーバの位置を誤認させようとする脅威もあります。これはスプーフィングと呼ばれます。

特殊なGNSSアプリケーション

特殊なGNSSアプリケーションでは、航法(ナビゲーション)と測位(ポジショニング)を強化するための高度な技法が用いられます。

1. マルチ周波数およびマルチコンステレーションアプリケーションは、異なる衛星システムや周波数の信号を使用することで、精度の向上を図ります。

2. マルチビークルアプリケーションでは、協調航法を可能にします。

3. マルチアンテナアプリケーションでは、信号受信が改善されます。

4. 高度な干渉軽減アプリケーションは、信号妨害に対処することで、正確で信頼性の高いGNSS機能をさまざまな環境で実現します。

図6:特殊なGNSSアプリケーションの概要

GNSSシミュレーションとレシーバテスト

GNSSテストは、レシーバの開発や、チップセット/デバイスの製造の際に、最適な性能を実現するために重要です。テストでは、レシーバの性能を評価し、レシーバの特殊機能をテストし、ジャミング、スプーフィング、共存の問題といったGNSSの脅威に対する耐性を評価します。テストは、信頼性の高い正確な測位、航法(ナビゲーション)、タイミング情報を維持するために役立ちます。

図7:GNSSテストケースの一覧

GNSSテストは実環境で行うこともできますが、不明なシステム条件、カスタマイズの制約、再現性があるテストが不可能といった制限が伴います。また、時間と費用もかかります。

そのため、シミュレーションが用いられます。シミュレーションでは、システム条件が明確に定義されており、テストシナリオを必要なだけ繰り返すことができます。また、ユーザー要件に応じてテストパラメータを設定することもできます。

GNSSシミュレーションでは、以下の7つの要素を考慮する必要があります。

図8:GNSSシミュレーションの要件一覧

1. ジャミングと干渉:実際のGNSS環境をエミュレートするには、ジャミングや干渉信号といった外部からの影響を考慮する必要があります。追加の信号の存在をシミュレートし、GNSS信号受信への影響を評価できます。

2. 距離シミュレーション:衛星と受信アンテナの間の距離は、GNSSレシーバが自身の位置を計算するために実行する基本的な測定です。現実的な距離シミュレーションで考慮すべき要因としては、(a)電離層と対流圏の影響、(b)クロック誤差などのシステム固有の誤差、(c)予期しない測距誤差があります。

3. 衛星軌道シミュレーション:現実的なGNSSシミュレーションは、さまざまな種類の衛星軌道(LEO/MEO/GEO/IGSO)について、軌道の誤差や摂動を含めたシミュレーションをサポートする必要があります。

4. システムと信号:今日のGNSSシミュレータは、マルチコンステレーションおよびマルチ周波数シナリオをサポートし、関連するすべてのシステムと信号を、すべてのGNSS周波数バンドで同時にシミュレートできる必要があります。

5. 信号妨害:特に都市環境では、GNSS信号が建物によって遮られる場合があります。多くの場合、信号妨害はマルチパスシミュレーションと組み合わせる必要があります。見通し線信号が完全に妨害され、レシーバがマルチパス成分だけを処理する場合があるからです。

6. ビークルの移動:多くのテストでは、ビークルの姿勢を考慮する移動レシーバをシミュレートする必要があります。信号が大きく変動する条件で移動レシーバをテストする場合、GNSSシミュレータは、シミュレートされるユーザーが大きい速度と加速度にさらされるシナリオをサポートできる必要があります。

7. マルチパスシミュレーション:マルチパスの存在下でのレシーバ性能をテストするために、GNSSシミュレータには、そのような影響をシミュレートするためのさまざまな方法が用意されているのが普通です。例としては、タップ付き遅延または地上マルチパスモデル、統計的チャネルモデル、または決定論的マルチパスモデルが挙げられます。

PNTの信頼性向上のためのGNSSテストソリューション

ローデ・シュワルツは、衛星1台の単純なシナリオから、マルチチャネル、マルチ周波数の干渉シナリオを使ったマルチ衛星コンスタレーションのテストまで、あらゆる条件に対応する信号発生器およびGNSSシミュレーション用ソフトウェアを提供しています。さらに、信号発生器用のGNSSテスト自動化オプションも用意されているので、ラボや製造ラインでの完全自動テストを、制御された再現可能な条件の下で実行できます。

当社のベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)は、GNSSレシーバの開発に不可欠なツールです。VNAは以下の用途に用いられます。

  • アンテナ性能のテストと最適化
  • フィルタや増幅器の周波数応答、利得、リニアリティの評価
  • 正しいインピーダンス整合の検証
  • 雑音指数(重要性能指標の1つ)の測定
  • レシーバシステム内の信号経路の特性評価
  • 干渉防止のためのポート間アイソレーションの測定

開発、品質保証、製造時のテスト用に、さまざまな種類のオシロスコープが用意されています。

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