R&S®ZNHを使用した航空航法ILSシステムのアンテナ調整

民間航空においては、計器着陸装置(ILS)トランスミッターは、アンテナアレイを使用して、進入してくる航空機を誘導します。ILSの性能は、アンテナアレイの各エレメントの振幅と位相の正確な調整に大きく依存します。R&S®ZNH ハンドヘルド・ベクトル・ネットワーク・アナライザは信号源を内蔵しているため、ILSアンテナシステムのオンサイト測定をすばやく容易に実行できます。

航空航法ILSシステム

課題

計器着陸装置は、アンテナアレイを使用して送信ビームを目標方向にステアリングします。ビームを目標角度で送信するには、アンテナエレメントの位相と振幅に関する正確な情報が不可欠で、航空機に正確なナビゲーション情報を提供します。システムコンポーネント(アンテナケーブルなどのコンポーネント)に不具合があると、アンテナエレメント間に位相のずれが生じます。エンジニアは、メンテナンス中に位相調整を確認し、交換コンポーネントの位置を調整します。ポータブル・ベクトル・ネットワーク・アナライザは、位相のずれを確認するのに最適なツールです。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®ZNH‑K45 ベクトル電圧計オプションを搭載したR&S®ZNH ハンドヘルド・ベクトル・ネットワーク・アナライザは、エンジニアがアンテナシステムのコンポーネントの絶対位相応答を測定したり、アンテナエレメント間の位相調整を確認するのに最適なツールです。R&S®ZNHを使用すれば、絶対 /相対位相および絶対/相対振幅を非常に正確に測定することができます。アナライザには、信号源、双方向性結合器、4つの独立したレシーバーが内蔵されています。1ポートまたはフル2ポート校正ルーチンと位相調整の組み合わせは、ILSアンテナシステムのメンテナンスを実行するエンジニアにとって非常に便利です。

図1:1ポートセットアップを使用した、ケーブル間の相対S11反射測定
図1:1ポートセットアップを使用した、ケーブル間の相対S11反射測定
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アプリケーション

ILSアンテナシステムの調整は、R&S®ZNH‑K45 ベクトル電圧計オプション搭載のR&S®ZNHを使用して実行することができます。必要なアプリケーションに応じて、1ポートまたは2ポートセットアップを使用する必要があります。

1ポートセットアップ

このセットアップは、一般的に、アンテナアレイに取り付けられたケーブルの電気長を調べるのに用いられます。対応するエレメントパスの各ケーブルの電気長が同じである必要があります。電気長が異なると、生成されるビームが目標角度からずれてしまいます。エンジニアは、システムの中断を最小限に抑える必要があるため、保守点検を行う際には、こうしたセットアップを活用します。R&S®ZNHを使用して、フル1ポート校正を実行します。この場合、校正デバイスをケーブル終端の方向性結合器(校正面)に接続します。被試験ケーブルを最初のアンテナエレメントから取り外し、S11反射測定を実行して、ケーブルの振幅と位相を確かめます(図1を参照)。結果が仕様の範囲内である場合は、"►Ref"ボタンを使用して測定値を基準値として設定します。ゼロに近い振幅/位相のノーマライズ値が表示されます。残りのケーブルに対して、S11測定を繰り返します。2番目以降のすべてのケーブルの基準値に対する相対振幅/位相が測定されます。測定値が目標の許容範囲内であるかどうかを確認します。

図2:2ポートセットアップを使用した、アンテナエレメント間の相対S21伝送測定
図2:2ポートセットアップを使用した、アンテナエレメント間の相対S21伝送測定
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2ポートセットアップ

このセットアップは、アンテナアレイの各エレメントの振幅/位相調整をテストするのに用いられます。校正キットを使用して、2ポートTOSMまたはUOSM校正を実行します。ポート1を方向性結合器のアームに、ポート2を最初のアンテナエレメントのモニターポートに接続します。各ポートの校正面については、図2を参照してください。このアンテナエレメントに対してS21伝送測定を実行し、結果が仕様の範囲内である場合は、"►Ref"ボタンを使用して測定値を基準値として設定します。後続のすべてのアンテナエレメントの基準値に対する相対S21振幅/位相を測定します。ノーマライズされた振幅と位相が表示されます。アンテナエレメント間の振幅/位相のずれが測定され、相対振幅/位相が目標の許容範囲内になるまで調整が実行されます。

まとめ

ILS分野のエンジニアにとっては、ケーブルやアンテナエレメント間の振幅/位相のずれの測定も、R&S®ZNH ハンドヘルド・ベクトル・ネットワーク・アナライザを使用すれば面倒な作業ではありません。R&S®ZNHは、R&S®ZNH-K45 ベクトル電圧計オプションと組み合わせることで、アンテナアレイの測定に最適なツールとなります。

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