EMIコンプライアンスのためのワイドバンドギャップ半導体スイッチの最適化

高度なパワーエレクトロニクスの世界では、スイッチング速度の高速化により、EMIコンプライアンスへの対応が懸念事項となっています。開発の早い段階でゲートドライブを最適化し、電磁エミッションを最小化するには、時間周波数相関測定が役立ちます。

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課題

炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といったワイドバンドギャップ材料を使用すると、高いスイッチング周波数、急峻な立ち上がりエッジ、高電圧といった特性が得られます。このような特性は、スイッチング電源の効率向上に寄与する一方で、EMIコンプライアンスの実現を困難にします。開発段階では、EMI低減のためのデザインガイドラインを考慮することが、EMIコンプライアンスのためのテストや最適化と同様に重要です。

ローデ・シュワルツのソリューション

オシロスコープは、電気エンジニアの日常の作業をサポートする強力なツールです。今日のオシロスコープは、新製品のデザイン段階でのEMI最適化作業に利用できる感度と性能を備えています。ローデ・シュワルツのオシロスコープには、周波数および分解能帯域幅の直接入力や、高速な更新速度といった特長があります。R&S®HZ-15 E/H近磁界測定用コンパクト・プローブ・セットおよびR&S®HZ-17 コンパクト近磁界プローブセット(どちらも帯域幅3 GHz)と組み合わせることで、PCB上の不要なエミッションの発生源と伝送経路を容易に特定できます。

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ゲーティッドFFTを使用することで、タイムドメイン信号のどのセグメントがスペクトラムのどのイベントに対応するかがわかります。

アプリケーション

ゲーティッドFFTによる時間と周波数の相関解析

タイムドメインと周波数ドメインの信号の相関といった高度な解析を行うには、R&S®RTE1000およびR&S®RTO6 オシロスコープのゲーティッドFFT機能が不可欠です。この機能を使えば、スペクトラム解析の対象を、ユーザー定義のタイムドメイン信号の領域に制限できます。

これにより、過剰なスペクトラムエミッションと、連続信号の専用期間の相関を表示できます。EMIテストの際には、タイムドメイン信号の不要な電磁エミッションの発生源を特定するためだけでなく、さまざまな動作シナリオのテストを容易に実行するためにも役立ちます。

ワイドバンドギャップの最適化
ゲートドライブ電圧(緑)の最適化によりMOSFETブリッジのEMI(赤)が大幅に減少します。(1)では方形ゲートドライブ信号が使用され、(2)では修正2レベル・ゲートドライブ信号が印加されています。© IFE Graz University of Technology, Austria

EMIエミッションに関するゲートドライブ電圧の最適化

パワーエレクトロニクス回路のEMIエミッションの発生源の1つは、高速スイッチングMOSFETブリッジです。スイッチングトランジスタのゲートドライブ電圧を変更することで、EMIを簡単に減らすことができます。このためには、ゲートドライブ電圧、出力信号、放射エミッションとそれらのスペクトラムを並列に測定する必要があります。

下の図では、MOSFETブリッジのさまざまなドライブ信号と、放射エミッションに対するその影響を解析しています。(1)では方形ゲートドライブ信号が印加され、(2)ではカスケード2レベル方形ゲートドライブ信号が使用されています(緑)。近磁界プローブによるEMIエミッションの並列モニタリングから、これが効果的な方法であることが明確にわかります。EMI信号の高周波成分(赤)の振幅が効果的に減少しています。

ゲートドライブ電圧(緑)の最適化によりMOSFETブリッジのEMI(赤)が大幅に減少します。(1)では方形ゲートドライブ信号が使用され、(2)では修正2レベル・ゲートドライブ信号が印加されています。© IFE Graz University of Technology, Austria

さらなる最適化の手順

最適なゲートドライブ電圧を求めるには、その他のパラメータを解析する必要があります。スイッチング損失は重要なファクターであり、ゲートドライブ信号の変化によって増加する可能性があります。スイッチング損失を測定するには、電流プローブと高電圧差動プローブが必要であり、プローブの最大電圧/電流と帯域幅が重要な意味を持ちます。スイッチング損失の測定誤差を防ぐため、電流/電圧信号のスキュー補正が必要です。

  • R&S®RT-ZHD 高電圧差動プローブは、高速スイッチング半導体用に最適です。これらのプローブは、最大200 MHzの帯域幅と、750 V6 kVの最大測定可能電圧をサポートし、高いコモンモード除去比を備えています。
  • R&S®RT-ZC 電流プローブは、5 A(RMS、2 MHz帯域幅)~500 A(RMS、120 MHz帯域幅)の電流測定が可能です。
  • R&S®RT-ZF20 パワースキュー補正/校正テストフィクスチャは、電流プローブと電圧プローブの間の遅延の差を補正します。これは、スイッチング損失の正確な測定に不可欠です。

まとめ

ローデ・シュワルツのオシロスコープの高速で柔軟なFFT機能は、最先端の電子機器に用いられるパワーエレクトロニクスの詳細なEMIテストを、初期の開発段階から行うために役立ちます。使いやすいユーザーインタフェースを備えているため、R&S®RTO6オシロスコープの大型タッチスクリーンに数回タッチするだけで、FFT設定をセットアップ/変更できます。近磁界プローブおよび高電圧差動/電流プローブと組み合わせることで、他のテストツールを使用せずに、パワーエレクトロニクス回路を詳細に最適化できます。これにより、デバイスのデザイン段階でのパワーエレクトロニクス開発が高速化され、デバイスをEMC出荷検査に合格させることができます。

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