EMIデバッグ用のオシロスコープによる、パワーエレクトロニクスの開発期間削減

オシロスコープは、パワーエレクトロニクス・エンジニアが頻繁に使用する測定器です。高度で使いやすいFFT機能を使用することで、アプリケーション分野をEMIデバッグまで拡張でき、大幅な時間短縮とコスト削減が可能になります。開発フェーズの早期段階で行う、EMIフィルターの効果検証が良い例です。

EMIデバッグ用のオシロスコープによる、パワーエレクトロニクスの開発期間削減 - RTM3004

課題

伝導性エミッションテストは、スイッチング電源(SMPS)における各設計プロセスの最終段階として欠かせません。開発者は、製品を市場にリリースする前に、該当する規格に準拠していることを検証する必要があります。ただ、完全なコンプライアンステストを実施するには、テストチャンバーと適切なEMIレシーバーを用意しなければなりません。もし製品が規格から外れて不合格になると、電源を改善する必要が生じ、SMPSの多くの要素(EMI、入力フィルター、PCB設計、適切なスイッチング周波数などのコンセプトに関する意思決定)に多大な影響が及ぶ可能性があります。市場投入までの時間にも影響が出ます。製品の部分的な再設計が必要になることもあるでしょう。伝導性エミッションテストを開発サイクルの早い段階でプリコンフォーマンステストとして実行できれば、このようなリスクを大きく軽減できます。プリコンフォーマンステストにはチャンバーやEMIレシーバーは必要ありませんが、電源の入力ラインおよび出力ラインのスペクトラムを比較可能な方法で測定できる測定器が必要になります。これらの測定は、スペクトラム・アナライザでもオシロスコープで実現できます。

EMIデバッグ用のオシロスコープによる、パワーエレクトロニクスの開発期間削減 - オシロスコープ

電子計測ソリューション

ローデ・シュワルツのオシロスコープは、周波数成分の振幅を測定できる高度で使いやすいFFT機能を備えています。ユーザーは、同時にタイムドメインの関連信号を観測できるので、不要なスペクトラムエミッションをタイムドメインのイベントに関連付けることができます。このような特長を備えたオシロスコープを使用すれば、スタンドアロンでパワーエレクトロニクスの設計に対して早期に伝導性エミッションテストを実行することができます。オシロスコープによるプリコンプライアンステストは、設計フェーズでEMIレシーバーのような専用機器を研究開発ラボで使用できない場合に特に効果的です。
早期にEMIコンプライアンスを導入すれば、開発プロセスの最終段階で、EMIが問題になる可能性を抑えることができます。EMIの問題が早期に明らかになれば、かかるコストが減少し、改善も容易になります。オシロスコープは一般的に、ハードウェア開発およびシステムテスト中に使用される主要測定器なので、研究開発でのEMI関連テスト用途にも使用できると、非常に効果的です。

テストセットアップ
電源の伝導性エミッションを測定するためには、外部電源から被試験デバイスを分離する電源インピーダンス安定化回路(LISN)が必要です。オシロスコープで50 Ω入力インピーダンスをオンにして適正な整合を確保し、LISNの同軸出力を、同軸ケーブルでオシロスコープに接続します。オシロスコープでは、以下の手順を実行してスペクトラムを測定します。

  • FFTをオンにして、最小周波数、最大周波数、解析帯域幅を設定します。
  • タイム・ドメイン・ウィンドウで垂直感度を調整して、被試験デバイスの電源がオンになった時に入力チャネルがオーバードライブされないようにします。
  • DUTの電源をオフにして基準測定を実行します。この測定により、セットアップのノイズフロアを把握して、このノイズがDUTから発生しているものではないことを確認します。
  • 電源を再度オンにして、測定を実行します。DUTの既知の伝導性エミッションリミットを基準にして検証します。LISNによって追加されるあらゆる減衰を考慮します。
入力フィルターなしのEMIスペクトラム
入力フィルターなしのEMIスペクトラム

ケーススタディ ‐ EMIフィルターの効果
右の2つのスクリーンショットに、R&S®RTM3000 オシロスコープによる伝導性エミッション測定を示します。上はEMIフィルターなしの場合、下はEMIフィルターありの場合です。

チャネル1は、LISNに接続されたタイムドメイン信号の測定です。LISNにより、信号は10 dBだけ減衰しています。測定値をエミッションリミットと比較する際にはこれを考慮する必要があります。下のウィンドウに表示されているのは、電源の入力端子でのスペクトラム(dBμV)です。EMIフィルターなしの場合は、DC/DCコンバーターの入力で生じるノイズスペクトラムがはっきりと表示されています。一方、EMIフィルターありの場合は、入力ラインの伝導性エミッションが効果的に減衰されています。
一部の周波数に関しては、最大30 dBもの減衰が見られます。

入力フィルターありのEMIスペクトラム
入力フィルターありのEMIスペクトラム

低周波領域のエミッションを検証するには、低周波に絞り込んで測定を繰り返す必要があります。

まとめ

ローデ・シュワルツのオシロスコープが搭載しているFFT機能は、設計者が電源の伝導性エミッションをデバッグできる高度な機能です。オシロスコープは、パワーエレクトロニクス設計用の標準測定器なので、これを使用して開発フェーズの早期EMI検証も実施できれば、多くの時間と費用を節約できます。これらの方法を用いて、コンプライアンステストに不合格して製品の基本的な再設計を行うというリスクを抑え、EMIコンプライアンスをスムーズに達成できる可能性が高くなります。

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