R&S®FPC1000/ R&S®FPC1500を使用したスイッチングモード電源のEMIデバッグ

PCB、フィルタリング、グラウンドバウンス、ソフトウェアなど
PCB、フィルタリング、グラウンドバウンス、ソフトウェアなど

課題

研究開発エンジニアには、市場投入までの時間の短縮化という厳しい目標が課せられています。製品の開発スケジュールの延長と製品発売の遅れがもたらす経済的損失は、営業機会の損失と市場シェアの低下といった観点から見ても莫大になる可能性があります。初めは相当数の製品が、EMCコンプライアンスに失敗します。毎日をEMI問題のデバッグ、アイソレーション、修正に費やすと、製品化にかかる時間が長くなります。

代表的なマイクロストリップ伝送ライン上の磁界/電界ライン
代表的なマイクロストリップ伝送ライン上の磁界/電界ライン

ローデ・シュワルツのソリューション

これらの課題に取り組むには、EMIテストを製品デザインサイクル中に実行するのが合理的です。これにより、通常は製品開発サイクルの最後に実行されるEMCコンプライアンステストの合格率が高まります。図に示すように、開発サイクルの後半でEMI問題を解決すると、それ以前に解決するよりもコストがかさむことがあります。プロジェクトの遅延によるコストの増加を回避するには、予防手段をデザインサイクルのチェックポイントに統合するのが有効です。その良い例がスイッチングモード電源です。スイッチング電源が関係するデザインでは、徹底的なテストが必要となります。大電力と高電流の組み合わせを急激に切り替えると、EMIの可能性が高まります。

放射性エミッションのセットアップ
放射性エミッションのセットアップ:放射エミッションテストでは、検出に近磁界プローブを使用します。このセットアップでは、EUTからのEMI放射を測定するため、Hフィールドプローブを使用します。

放射性エミッション

放射性エミッションは、あらゆる電気回路に内在します。放射性エミッションテストでは、製品から発生する意図しないエミッションの電磁界強度を測定します。

簡単なセットアップ
EMIデバッグセッションは、以下のように簡単な手順で行うことができます。

  • 適切なR&S®HZ-17 近磁界プローブをR&S®FPC1000またはR&S®FPC1500 アナライザのRF入力に接続
  • 被試験ボードまたはモジュールの上にプローブを移動
  • R&S®ELEKTRA EMI ソフトウェア(R&S®ELEMI-E)を使用して結果を簡単に文書化

R&S®HZ-17には、2つのプローブが含まれています。大型のリング・タイプ・プローブは、優れた利得を特長としており、概要測定に適しています。小型プローブの先端はピンタイプです。このプローブは良好な利得を持ち、ボード・トレース・レベルまでの空間分解能に優れています。どちらのプローブでも、下の図に示すように偏波を考慮する必要があります。電磁界ラインは、プローブ受け入れ領域に対して垂直でなければなりません。

1 μs未満のスイッチング過渡現象に起因する高周波干渉を測定するための、放射性エミッションの関連周波数レンジは、30 MHz1000 MHzです。

デザイナーは、コンポーネントの選択または以前の電磁界強度の測定値から、被試験ボードまたはモジュールの重要な周波数を既に把握しています。それに基づいて、R&S®FPCに周波数とスパンを設定する必要があります。ディスプレイ上での合否判定指標として、リミットラインを使用することができます。リミットラインによって、EMIデザインを最適化した後の改善状況を簡単にモニターすることができます。

オープンプリント基板を使用したラボベンチでの最終的でないセットアップは、高周波でカップリング問題を引き起こす可能性があります。これは、基板が金属製の筐体内に取り付けられ、最適なグランド接続が行われると減少します。

スイッチングモード電源での緩和対策

EUTがエミッションリミットを超える場合は、PCBレイアウトの最適化(すなわち、トレースの短縮、カップリングの回避)またはアクティブテスト(すなわち、測定されたエミッションに基づくコンポーネントの選択)を検討します。

伝導性エミッションのセットアップ
伝導性エミッションのセットアップ

伝導性エミッション

EMI測定には、放射性エミッションだけでなく、主電源に向かって伝搬する伝導性エミッションも含まれます。伝導性エミッションの場合、RF信号を主電源から分離し、50 Ωに安定化する必要があります。これを実現するには、電源インピーダンス安定化回路を使用します。

ラボは、必然的にノイズの大きな、絶えず変化する電気環境です。再現性がある測定には、基準グランドプレーンが必要です。シールドされた電波暗室の使用は、周囲信号の受信を回避するのに役立ちます。

簡単なセットアップ
ローデ・シュワルツは、伝導性EMI測定用のシンプルなソリューションを提供しています。
R&S®HM6050-2 LISNを以下に接続します。

  • 主電源(絶縁トランス経由)
  • EUT
  • R&S®FPC スペクトラム・アナライザ(BNCケーブル経由)
  • R&S®ELEKTRA EMI(R&S®ELEMI-E)を実行しているPC(電源スイッチにはシリアル/USBアダプターケーブル、リモート制御にはR&S®FPCへのLAN接続を使用)

R&S®ELEKTRA EMIで測定器をセットアップすると、測定器は、シンプルな「プッシュプレイ」方式により、事前設定された測定セットアップを使い、ソフトウェア経由で制御されます。

ピーク検波器とパラレルアベレージ検波器を使って周波数レンジ150 kHz30 MHzで実行される概要測定では、スイッチング周波数の基本波と高調波が生成されます。

測定は、最初はLISNの位相L1または位相Nに設定してのみ行われるため、他の位相の振幅がこれより大きいかどうかを決定する必要があります。場合によっては、テストシーケンスを数回繰り返す必要があります。

スイッチングモード電源での緩和対策
EUTがエミッションリミットを超える場合は、スイッチングPSUのレイアウトの最適化(トレースの短縮、カップリングの回避、GND接続の最適化)を検討します。フェライトも役に立つ可能性がありますが、これにはまず優れたPCBデザインが必要です。もう1つの(通常はコストのかかる)オプションとして、シールドの追加があります。