R&S®Scope Rider RTHユーザーアプリで鉄道の保線作業を簡素化

オシロスコープは、エンジニアや電気技師が日常的に使用する基本的な測定器です。ただし、メンテナンス作業では極めて特殊な測定が必要になる場面があり、そのような状況では標準的な機能が役に立たない、または手動で設定することが難しい場合があります。R&S®RTH-K38 ユーザースクリプト・オプションを使用すれば、エンジニアは独自の測定機能とシンプルなユーザーインタフェースをデザインすることができます。このアプリケーションカードでは、鉄道の保線作業にこの独自の機能を使用する方法について説明します。

さまざまな周波数で線路のアイソレーションを測定(© Øystein Grue)
さまざまな周波数で線路のアイソレーションを測定(© Øystein Grue)

課題

鉄道技師は、多くの場合、線路上の列車位置特定などに使用される電気通信信号の品質を検証する必要があります。これは通常、線路を複数のセクションに分割し、周波数を交互に変える(通常は95 Hzと105 Hz)ことによって行われます。列車が特定のセクション内に入ると、車輪が信号を短絡し、列車の位置がレシーバーに通知されます。セクション間または他の電気システム(電源分配システムなど)間のアイソレーションが十分でない場合は、不要なノイズ信号が干渉して、列車の検出の信頼性が低下する可能性があります。線路のアイソレーションをさまざまな周波数で検証することは、鉄道の運用に必須のメンテナンス作業です。

Scope Rider RTHオシロスコープ(スペクトラムモード)で測定(© Øystein Grue)
R&S®Scope Rider RTH オシロスコープ(スペクトラムモード)で通信信号のスペクトル成分を測定(© Øystein Grue)
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個別の測定要件

周波数は、R&S®RTH-K18 スペクトラム解析オプションで簡単に測定できます。エンジニアは、オシロスコープのカーソルとロギング機能を使用して、定義された周波数でスペクトル成分を測定および記録できます。この使用例では、4つの異なる周波数(16 2/3 Hz50 Hz95 Hzおよび105 Hz)で信号電流を測定し、これらの周波数における信号振幅をアンペアで表示する必要があります。このような特殊な測定は、ハンドヘルド・オシロスコープの標準的な機能では賄いきれません。また、エンジニアからは、操作をできる限り簡素化するための、デバイスで自動的に実行されるセットアップ、電流の最大値の表示、グラフィカルな表示といった機能の要望も寄せられていました。

ユーザーアプリによる測定

R&S®RTH-K38 ユーザースクリプト・オプションを使用すれば、エンジニアはオシロスコープでユーザー定義のJavaScriptプログラムを直接実行して、独自の非標準の測定作業を実行することができます。このユーザースクリプトにより、機器は標準のSCPIコマンドを介して制御され、オペレーターは直感的なWebベースのユーザーインタフェースを介して機器とやりとりできます。これにより測定手順を自動化できるので、従来のオシロスコープよりもはるかにシンプルなユーザーインタフェースが提供されます。

このユーザースクリプトは、ユーザーインタフェースを提供するHTMLと、SCPIコマンドを介して機器を制御するJavaScriptの組み合わせです。

自動測定スクリプト

線路のアイソレーションを測定するには、R&S®RT-ZC03 電流クランプを線路とR&S®RTHのチャネル1に接続します。これにより、R&S®RTH-K38 ユーザー・スクリプト・オプションが有効になります。このプロセスは非常にシンプルで、機器の起動後に必要な操作は以下の3つだけです。

  • "Mode"を押してモード選択メニューにアクセスする
  • "User"を選択して、使用可能なユーザースクリプトをリストする
  • 関連するユーザースクリプトを選択して開始する

ユーザースクリプトは自動的に機器をスペクトラムモードに設定し、カーソルを定義された周波数に設定し、それぞれの周波数でのスペクトラム振幅を読み取ります。定義された4つの周波数の電流は、スペクトラムモードでdBA値からアンペアに次のように変換されます。

Scope Rider RTHユーザーアプリで鉄道の保線作業を簡素化
使いやすいHTMLのGUIと、簡単にプログラムできるJavaScript。SCPIを介して機器の機能にアクセス
使いやすいHTMLのGUIと、簡単にプログラムできるJavaScript。SCPIを介して機器の機能にアクセス
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電流値は、オシロスコープのHTMLベースのブラウザーウィンドウに、A、mA、またはµAで表示されます。このスクリプトは、測定手順全体を自動化できるだけでなく、シーケンス設定されたカーソル測定を3つ以上の周波数で実施することもできます。JavaScriptプログラムでは、4つの追加の変数を使用して、各周波数の最大電流を追跡し、この情報を表示します。加えて、トレンドプロット機能により、電流値が時系列で表示および記録されます。グラフの垂直スケールは自動調整されます。また、最大値をリセットして測定を再開できるように、カウンターと"Reset Max Values"ボタンも追加されました。さらに、オートレンジ機能により、オシロスコープの垂直スケーリングが電流値と一致するように自動的に設定されるので、オーバーレンジを回避することができます。

"Mode"ボタンで、すべてのRTH解析機能に直接アクセスできます。
"Mode"ボタンで、すべてのR&S®RTH解析機能に直接アクセスできます。"User"メニューを選択すると、使用可能なすべてのユーザースクリプトがリストされます。
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R&S®RTH-K38 オプションのユーザースクリプトを生成する方法、およびデバイスにロードする方法の詳細については、R&S®Scope Rider RTHのユーザ・マニュアルを参照してください。これにはサンプルのユーザースクリプトも含まれています。

この使用例のスクリプトは、次のURLで入手できます。
www.rohde-schwarz.com/software/rth/

注記:R&S®Scope Rider RTHにアップロードする前に.zipファイルを解凍してください。

まとめ

R&S®Scope Rider RTHハンドヘルドオシロスコープは、R&S®RTH-K38 ユーザースクリプト・ソフトウェア・オプションと組み合わせて使用することで、メンテナンス/サービスアプリケーションにおける自動測定またはガイド付きの非標準測定のための強力なツールになります。これによりエンジニアは、組み込みのWebブラウザー、JavaScript、およびSCPIコマンドを介した機器の全機能を使用して、デバイスで独自の測定スクリプトを実行できます。また、簡単にプログラムできる使いやすいHTMLユーザーインタフェースにより、フィールドでの迅速な測定が可能になります。

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