R&S®ZNHによるレーダーリモートサイトのメンテナンス測定

レーダーシステムは一般に24時間動作し続け、ダウンタイムはごくわずかです。こうしたシステムを稼働し続けるには、システムコンポーネントの不具合を迅速に特定する必要があります。R&S®ZNH ハンドヘルド・ベクトル・ネットワーク・アナライザを使用すると、レーダーシステムのメンテナンスを迅速かつ確実に行うことができ、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。

R&S®ZNHによるレーダーリモートサイトのメンテナンス測定

課題

リモートサイトのレーダーシステムは、厳しい天候条件下にあることが多く、システムコンポーネントへの物理的損傷は避けられません。時間とともに性能が低下し、不具合が発生します。エンジニアは、ダウンタイムを低減するために、システムコンポーネントの性能に関する所定のメンテナンスチェックを頻繁に行います。レーダーの障害のトラブルシューティングと特定は、迅速かつ正確に行う必要があります。システム性能を最適に保つためにメンテナンス期間に行う測定の一部を右の表に示します。

一般的な測定パラメータ
一般的な測定パラメータ
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複数の機能を搭載したバッテリー駆動のハンドヘルド測定器があれば、こうした測定に対応でき、サイトに複数のツールを装備する必要もありません。さらに、リモート拠点で作業を行うには、高耐久のファンレスデザインであることが不可欠です。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®ZNH 2ポート・ベクトル・ネットワーク・アナライザは、Kuバンドまで対応し、リモートサイトでのメンテナンス作業を簡素化します。軽量で、障害位置検出(DTF)機能を内蔵し、パワーメータ、比/波形測定値、パルス測定の各機能を追加できるため、メンテナンス作業やダウンしたシステムの早期復元に役立ちます。

図1:DTF測定による障害検出
図1:DTF測定による障害検出
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アプリケーション

伝送経路の検証
伝送経路でケーブルの障害、コネクタのゆるみ、フィルターの破損が発生すると、不要な信号反射の原因となります。DTF測定を行うことで、障害の正確な位置を特定できます。この測定を行うために、アナライザのインストールの際、校正済みの基準DTFトレースとして、正常な配線セットアップのトレースがアナライザに保存されます。

セットアップをリコールし、現在のDTF測定値と保存されたトレースを比較すると、異常を検出し、障害の正しい位置を特定することができます。図1は、テストポイントから9.801 mの位置(マーカーM1の位置)で障害らしきものが検出されたことを示します。

図2:S21挿入損失の測定
図2:S21挿入損失の測定
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ロータリージョイントの性能の検証
ネットワーク・アナライザ・モードでは、コンポーネントの性能低下による規格違反の有無を評価できます。レーダーシステムでは、コントローラーと回転式アンテナとのRF接続のために、一般にロータリージョイントを使用します。

  • ロータリージョイントの性能を検証するには、回転中の挿入損失の変動を評価します。
  • 接続ケーブルの損失を補正するには、フル2ポート校正を実行します。
  • ロータリージョイントの入力と出力に校正済みのケーブルを接続します。
  • S21測定値を確認し、ロータリージョイントのすべての回転角で測定値を変更して値が目的の範囲に収まるようにします。

図2は挿入損失の測定を示します。最大損失は0.3 dBで、ロータリージョイントの規格の範囲内です。

図3:ピーク・パワー・センサによるパルス測定
図3:ピーク・パワー・センサによるパルス測定
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パルス測定
パワー・メータ・モードの広帯域パワー・センサを使用すると、レーダーのパルス特性を検証できます。ピークパワー、パルス幅、パルスの立ち上がり/立ち下り時間、送信パルスのパルス繰り返し周波数は、国際団体によって定義されたリミットと比較する際の重要なパラメータです。測定の際は、パワー・センサを、対応するトランスミッター出力の測定用モニタリングポイントに直接接続します。形状の整っていないパルスがある場合、位置と距離の検出が不正確になり、ターゲットの読み値に誤りが生じます。

まとめ

信頼性の高いR&S®ZNHは、リモートサイトに不可欠な数多くのメンテナンス機能を1台のユニットに搭載した最適な解析ツールです。エンジニアは、障害の位置を効率的かつ迅速に特定できるため、リモートサイトでシステムの性能を確実に維持することができます。