ローデ・シュワルツのオシロスコープによるUSB電源供給コンプライアンステスト

USB Type-C™コネクタでサポートされているUSB電源供給(USB PD)の主な利点の1つは、最大100 Wのパワーを伝送する機能です。Low Speedシグナリングを使用して、デバイスがUSB PDプロファイルをネゴシエイトします。USB Type-Cコンポーネントのメーカー、およびUSB PD規格を利用するデバイスベンダーは、プロトコルハンドシェークとシグナルインテグリティーの相互運用性を確保する必要があります。

課題

2つのUSB Type-Cインタフェース間の電源ネゴシエーションが適切であるかを、USB電源供給コンプライアンステストで確認します。物理層のコンプライアンスとは別に、すべてのタイプのシステムトポロジーのプロトコルコンプライアンスもテストする必要があります。

USB電源供給トポロジー
USB電源供給トポロジー
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背景

USB電源供給

USB Implementers Forum(USB-IF)は、USB電力供給仕様によってUSB 2.0および USB 3.1を拡張しました。この仕様では、最大100 W(最大20 Vおよび 5 A)の柔軟な電力供給が可能になります。USB電源供給を最も効果的に機能させるには、USB 3.1Gen 2データレート(10 Gbps)まで認定された、USB-IFで定義されたUSB Type-Cコネクタと配線を使用します。新しいデザインでは、プラグの向きを逆にできるため、接続が容易になります。24ピン両面USB Type-Cコネクタには、高速データ伝送レーンと機能拡張された電源供給インタフェースが含まれています。USBホスト、デバイス、アクセサリは、新しく導入されたコンフィギュレーションチャネル(CC)で実行されるUSB PD通信プロトコルを経由して、電源供給機能をネゴシエイトします。このハンドシェークにより、プロバイダーとコンシューマーの関係を確認し、可能な最大電源プロファイルを検証します。以下の図は、電源プロバイダー、電源コンシューマー、またはデュアルロールデバイスでサポートされている、さまざまなUSB PDトポロジーを示したものです。

USB電源供給プロファイル
USB電源供給プロファイル
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USB Type-Cインタフェースは、4つの電源ピンペアを経由して電源を供給します(Vbus)。USB-IFでは、業界で使用する5種類のUSB PDプロファイルを定義しています。

フル機能のUSB Type-Cケーブルとアダプタには、電子マーカー(eマーク)が組み込まれていて、CCインタフェースを経由してアクセス可能なID機能チップが含まれています。eマーク機能のテストは、USB電源供給コンプライアンステスト仕様(CTS)の一部です。

電源供給ネゴシエーションに焦点を当てたUSB接続
電源供給ネゴシエーションに焦点を当てたUSB接続
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BMC物理層の信頼性

CC通信インタフェース上のUSB PDプロトコルは、BMC(Biphase Mark Code)エンコードを使用して、2つのUSB Type-Cインタフェース間で電源プロファイルを交換します。

USBコンポーネントとデバイス間の相互運用性を確保し、過電圧と過電流による損傷を避けるには、規格の仕様に従ってBMC信号の通信を行うことが重要です。そのためには、コンプライアンスマスクを使ってBMC PHYシグナリングをテストします。次のページに示した2つの異なるマスクプロファイルで、ロジック「1」と「0」の変調信号シーケンスを個別に評価します。

「1」(左)と「0」(右)用のUSB PD BMC信号方式とコンプライアンスマスク

ローデ・シュワルツのソリューション

USB PDコンプライアンステストでは、USB Type-CインタフェースのCCリンク上での電源ネゴシエーションが適切であるかを、270 kbps330 kbpsの速度で確認し、Vbusピンで供給される電源の品質を検証します。オシロスコープをUSB PDコンプライアンステストの主な信号収集ツールとして使用する場合の主要な選択パラメータは、ハイ測定ダイナミックレンジ、高速の収集と処理、および電流プローブのネイティブ1 MΩCC入力です。

ローデ・シュワルツは、業界パートナーであるGranite River Labs(GRL)と連携し、R&S®RTEまたはR&S®RTO デジタル・オシロスコープを使用したコンプライアンステストソリューションを提供しています。GRLのGRL-USB-PD解析ソフトウェアによってテスト機器を制御し、電気的テストとプロトコルテストを実施します。

テストセットアップ

テストセットアップは、DUTの役割によって異なります。いずれの場合も、R&S®RTEまたはR&S®RTOオシロスコープによって、コンプライアンス解析およびプロトコル検証用のUSB PD波形を収集します。電圧(Vbus)と電流(IL)をVbus電源で測定するには、パッシブ電圧プローブおよび電流プローブが必要です。別の電圧プローブをCC通信リンクに接続します。USBType-Cケーブルとアダプタのテストは、CC信号リンクのeマークコードの検証にフォーカスしています。

テストセットアップ
テストセットアップ

GRL-USB-PDコンプライアンステストツール

GRLは、GRL-USB-PD(USB PDコンプライアンステストソフトウェア)をUSB Type-CCTSに基づいて開発しました。このツールは、取得した波形を使用してコンプライアンスマスクテスト用のアイダイアグラムを作成し、電気パラメトリックテストの測定を実行します。プロトコルテストのBMCシグナリングもデコードします。USB Type-Cケーブルおよびアダプタの場合、GRL-USB-PDツールによって、USB Type-Ceマークコンプライアンステストがサポートされます。GRL USB Type-CテストコントローラーとGRL-USB-PDソフトウェアを組み合わせると、オールインワンの自動コンプライアンステストソリューションを実現できます。テストの最後に、包括的なテストレポートが自動的に作成されます。

GRL-USB-PDテストUSB PD BMCアイダイアグラム(情報源:GRL)。
GRL-USB-PDテストUSB PD BMCアイダイアグラム(情報源:GRL)。
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GRL-USB-PDソフトウェアは、以下のテストに対応します。

  • 電気的物理層コンプライアンス(BMC-PHY)
    • アイダイアグラム
    • 時間測定(ビットレート、立ち上がり時間など)
    • CRCチェック
  • USB PDプロトコルコンプライアンスおよびデコード(BMC-PROT)
    • CCラインパケットデコード
    • USB Type-CケーブルおよびアダプタのVDMデコード
  • 電源ソース/シンクテスト(BMC-POW)

USB Type-Cテストコントローラー

GRLは、USB Type-Cテストコントローラーハードウェア(GRL-USB-PD-C1)を開発しました。USB PDコントローラー機能(コンシューマーテスト用の電源)を内蔵し、DUTと残りのテスト機器へのインタフェースを提供します。コントローラーには、コンプライアンステストの際に、適切なUSB PD応答を送信するようDUTを設定する機能があります。

電子負荷

テストされた電源プロファイルごとに異なる負荷を印加することにより、USB PDプロバイダーが十分な電源を供給できるようにする必要があります。例えば、Chroma Systems Solutions社の電子負荷は、さまざまな電源シナリオをシミュレートできます。

R&S®RTEおよびR&S®RTO オシロスコープによるUSBの追加テスト機能

R&S®RTO-K21 USBコンプライアンステストソフトウェア。
R&S®RTO-K21 USBコンプライアンステストソフトウェア。
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USB 2.0コンプライアンステスト

R&S®RTO-K21USB 2.0コンプライアンステストオプションを追加し、R&S®RT-ZF1USBコンプライアンステストフィクスチャを取り付けると、R&S®RTOをUSB 2.0/1.1/1.0およびHSICインタフェースのコンプライアンステストに使用できます。R&S®ScopeSuiteを使用すると、コンプライアンステストが完全に自動化され、柔軟性に富むデバッグ、テスト、コンプライアンス認証が可能となります。

R&S®RTE/RTO-K60 USBトリガおよびデコード。
R&S®RTE/RTO-K60 USBトリガおよびデコード。
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USB 2.0トリガおよびデコード

R&S®RTE/RTO用のR&S®RTE-K60/RTO-K60オプションは、USB 2.0/1.1/1.0とHSICのプロトコルデコードおよびトリガをサポートします。高速処理、デコードデータの柔軟な表示機能、包括的なトリガイベントセットを備えたこのオプションは、USBインタフェースを持つエンベディッドデザインのデバッグに不可欠なツールです。