Wi-Fi 8テストソリューション

IEEE 802.11bnテストによる無線LANの信頼性と性能の再定義

従来のWi-Fiは主にスループットの向上に注力していましたが、新しいIEEE 802.11bn規格では、超高信頼性(UHR)の実現を目的とした大幅な技術的進化が導入されています。この規格は、Wi-Fi Allianceによって定義されるWi-Fi 8の基盤を形成するものです。

UHRへの注力は、さまざまな環境で一貫した高品質の接続への需要が高まっていることを反映しています。

  • 家庭で:IoTセンサから次世代スマートグラスまでのあらゆるデバイスに対応するために、すべての部屋で途切れない高性能カバレッジを提供。
  • 職場で:生産性向上に寄与するスムーズなローミングを実現し、高速かつ安全な接続をどこでも提供。
  • スタジアムやコンサート会場で:広域で高密度な環境でも信頼性の高い大容量の無線アクセスを提供。
  • 産業環境で:過酷な条件やミッションクリティカルな用途でも性能を確保する堅牢で耐久性の高い接続を提供。
  • キャンパスで:多様なデバイスと学習アプリケーションを支える堅牢なカバレッジをキャンパス全域で実現。

このような背景から、超高信頼性には以下のような能力が求められます。

  • 変動する条件下でも持続するスループット
  • より効率的なスペクトラム利用
  • 低遅延
  • アクセスポイント間のシームレスな切り替え
  • 電力効率の最適化
  • 干渉耐性の強化

Wi-Fi 8規格の概要

IEEE 802.11bnでは、IEEE 802.11beで確立された主要な物理層パラメータがそのまま維持されます。これらのパラメータには、1~7.25 GHzの対応周波数範囲、最大320 MHzのチャネル帯域幅最大4096値のQAM変調方式が含まれます。

新しい超高信頼性と性能目標を達成するために、IEEE 802.11bnは以下のようなPHY層の拡張を導入しています。

  • 分散リソースユニット(DRU)長距離強化(ELR)PPDUによる、アップリンク送信パワーの向上と接続信頼性の強化。
  • 変調/コード化方式(MCS)の拡張不均等変調(UEQM)による、S/N比感度ギャップの縮小とビームフォーミング性能の向上。

MAC層には、Wi-Fi 8により、スペクトラム利用の効率化と電力管理の最適化を目的とした新機能と改善が追加されています。

  • 動的サブバンド動作(DSO)非プライマリチャネルアクセス(NPCA)動的帯域幅拡張(DBE)による、を柔軟かつ効率的なスペクトラムリソースの活用。
  • 動的省電力(DPS)による、リンクリスニング時の消費電力の削減。

さらに、協調型アクセスポイント動作シームレスモビリティードメイン(SMD)BSS機能をサポートする高度なMAC機能の導入により、複雑な展開環境でもスムーズな切り替えを実現し、ネットワーク効率を向上させます。

Wi-Fi 8の技術要素

Wi-Fi 8(IEEE 802.11bn)は、Wi-Fi 7を基盤として構築され、信頼性、効率、シームレスなモビリティーを新しい水準に引き上げます。新しいPHY層およびMAC層テクノロジーを連携させることで、通信距離の延長、スペクトラムの効率的な活用、遅延の低減、高密度環境での協調型アクセスの実現を可能にし、超高信頼性(UHR)性能を達成するための基盤を築きます。

これらのテクノロジーには、以下が含まれます。

  • 分散リソースユニット(DRU)は、小型リソースユニット(RU)のアップリンク送信パワーを制約するパワースペクトラム密度(PSD)制限を克服します。DRUはトーンを広い帯域幅に分散させることで、各トーンの送信パワーを高め、アップリンクの通信距離と信頼性を向上させます。
  • 長距離強化(ELR)は、アクセスポイント(AP)とステーション(STA)間のリンクバジェットの不平衡を解消します。2.4 GHzバンドのアップリンク/ダウンリンク伝送に加え、5 GHzおよび6 GHzバンドのアップリンク伝送もサポートします。ELRは20 MHz帯域幅で動作し、単一の空間ストリームを用いながら、周波数領域全体にわたり52トーンRUを4倍に複製することで、到達範囲と堅牢性を拡張します。
  • 変調/コード化方式(MCS)の拡張は、より正確なリンクアダプテーションと高いスループット性能を実現します。Wi-Fi 7は7種類の変調方式と4つのコードレートをサポートしていますが、一部の組み合わせは使用されておらず、特定のMCSレベル間に3 dBを超えるSNR感度ギャップが残されています。Wi-Fi 8では、これらのギャップを埋めるため、4つの新しいMCSレベルが導入されています。
  • 非プライマリチャネルアクセス(NPCA)は、プライマリチャネルが占有されている場合に非プライマリの20 MHzチャネルを一時的に利用できるようにし、チャネルアクセスの柔軟性と全体容量を向上させます。
  • 動的サブバンド動作(DSO)は、APとSTAの帯域幅能力差による不整合を解決します。802.11bnでは、APは現在の帯域幅外で動作しているSTAに対して動的に周波数リソースを割り当てられるようになり、スペクトラム利用率とスループットが最適化されます。
  • シームレスモビリティードメイン(SMD)は、AP間の切り替え時の遅延とパケット損失を最小限に抑えます。STAは同一モビリティードメイン内でAP間を移動する際に接続状態を維持でき、連続した接続と低遅延のハンドオーバーを確保できます。
  • マルチアクセスポイント協調(MAPC)は、AP間のネットワーク協調を強化し、遅延、信頼性、およびスループットを最適化します。サポートされる方式には、以下が含まれます。
    • 協調型ビームフォーミング(Co-BF)
    • 協調型空間再利用(Co-RS)
    • 協調型TDMA(Co-TDMA)
    • 協調型管理送信待機時間(Co-RTWT)
    • 協調型チャネル推奨(Co-CR)

CMP180による、20 MHzの分布帯域幅での26トーンDRU測定

Wi-Fi 8テストの課題の解決

IEEE 802.11bn規格では、802.11be(Wi-Fi 7)で定義された物理層テスト要件が維持されています。そのため、エラーベクトル振幅(EVM)送信パワースペクトラムエミッションレシーバー感度を含む確立済みのテストパラメータは引き続き適用可能です。4096-QAM変調への移行により、(1)最大320 MHzの帯域幅きわめて歪みの少ない信号を生成可能な信号発生器、(2)対象信号に一致する解析帯域幅と超低残留EVM性能を備えたスペクトラム・アナライザが引き続き強く要求されます。

MAC層では、非プライマリチャネルアクセス(NPCA)動的サブバンド動作(DSO)動的帯域幅拡張(DBE)動的省電力(DPS)などの機能が、以前のWi-Fi世代のマルチリンク動作(MLO)プリアンブルパンクチャリングと組み合わされることで、高度なシグナリングテストソリューションへの要求が大幅に増大します。

これらの新しい要件により、テストはより複雑化および多様化し、Wi-Fi 8の製品サイクルにおける初期設計からコンプライアンステスト、さらにフィールド検証に至るまで、さまざま検証ニーズに対応可能な柔軟かつ高性能なテストシステムの導入が不可欠です。

FSW シグナル・スペクトラム・アナライザによるUHR ELR PPDU測定

高性能なWi-Fi 8テストソリューション

ローデ・シュワルツのWi-Fi 8テストソリューションは、RFの特性評価、検証、認証、さらにはエンドツーエンドの性能テストに対応する包括的な機能を提供します。弊社のポートフォリオは、初期のコンポーネント/チップセット設計から最終的な検証およびコンフォーマンステストに至るまでの開発プロセス全体、さらに製造テストをサポートします。

また、RFおよびシグナリングテストからエンドツーエンドのデータ/アプリケーション性能テストに至るまで、すべてのアプリケーション層に対応しています。これらの機能は、以下のような市場をリードするノンシグナリングテストフレームワークによってさらに補完されます。

  • チップセットのフル統合テストおよびサポート
  • クラス最高のテストオートメーション(研究開発から製造にわたるワークフローに対応)

上記のソリューションを組み合わせることで、検証時間の短縮、テスト精度の向上、シームレスな拡張が可能となり、Wi-Fi 8の性能および信頼性の要求を満たすことができます。

Wi-Fi 8テスト用の製品

R&S®CMX500 無線機テスタ

Wi-Fi 7/Wi-Fi 8をシグナリングモードでテストするマルチチャネル、マルチテクノロジーのワンボックステスタ

商品情報

R&S®CMP180 無線機テスタ

無線機器の研究開発、検証、製造で使用できるノンシグナリングテストソリューション

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R&S®SMW200A ベクトル信号発生器

Wi-Fi変調方式を帯域幅全体でサポートし、リアルタイムフェージングによるMIMOテストが可能

商品情報

R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザ

Wi-Fiコンポーネントのテストのイノベーションとユーザビリティーの新しい基準

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R&S®TS8997 無線デバイス用規制テストシステム

ETSIおよびFCCに準拠したISMバンドで動作する無線機器の規制テスト

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R&S®CMW100 通信製造テストセット

製造ライン向けに最適化された超コンパクトなノンシグナリングテスタ

商品情報

R&S®SMBV100B ベクトル信号発生器

最大1 GHzの変調帯域幅と優れたEVMを備えた同クラスの性能基準となる製品

商品情報

R&S®FSVA3000 シグナル・スペクトラム・アナライザ

最大1 GHzの解析帯域幅をサポートし、Wi-Fiスペクトラム/信号解析に最適な1台

商品情報

R&S®PVT360A 高性能ベクトルテスタ

ベクトル信号発生器とベクトル・シグナル・アナライザを1台に統合し、RFコンポーネントのテスト用に最適化した機器。ハイパワー用途向けの専用バリエーションもご用意

商品情報

ローデ・シュワルツのWi-Fi 8テストソリューションの利点

  • 高精度かつ高性能な性能による、信頼性と再現性に優れた結果の提供
  • 豊富なテストオートメーションとチップ統合テストによる、ワークフローの加速
  • グローバルなアプリケーションエンジニアリングをサポートする世界中のエキスパート
  • モバイル統合テストシナリオに対応(Wi-Fiオフロードを含む)
  • 簡素化された干渉テストにより、共存性と堅牢性を評価可能
  • 高度なシグナリングテストソリューションによる、現実的な実環境ネットワーク条件への対応

Wi-Fi 8のテストケースについては、弊社のエキスパートがご質問にお答えいたします。お気軽にお問い合わせください。

WiFi 8テストに関するよくある質問

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