着実に成果を上げている基礎研究
他の研究機関と同様に、佐賀大学でのダイヤモンド半導体研究はまだ基礎段階ですが、すでにトランジスタの作製を確立しています。作製方法はガリウムナイトライドと同様の T 型短ゲート電極です。バンドギャップが広くなることでドナーやアクセプターのレベルが深くなり、不純物を入れても B 型や N 型の作成が難しくなる傾向にありますが、佐賀大学では NO2 を付着させることで T 型に成形できることを発見しました。佐賀大学で作製されるダイヤモンドトランジスタの特性は約 1.35 A/mm を記録しており、実用のトランジスタとして十分な値を記録しています。
高周 波 の 値 で は、凝 っ た 工 夫 を せ ず に fT=45 GHz、fMAX=120 GHzという、世界最高の値を記録しています。この結果からも、ダイヤモンドが高周波に適した素材であることがわかります。大信号でもガリウムひ素トランジスタに比べ、約 2 倍の性能を記録しています。放熱性の計測では、約 1 W の消費電力動作時で約 0.6 度の上昇しか見られませんでした。ガリウムナイトライドのトランジスタでは放熱が大きく、消費電力や小型化、故障率で問題になることもありますが、材料の中で一番熱伝導率が高く、放熱性に優れているダイヤモンドが有効な対策になると期待されます。
佐賀大学ではダイヤモンドの熱伝導率を活かし、高周波高出力デバイスの RF-DC 変換についても研究しています。ダイヤモンド半導体は変換効率に優れ、高周波の信号を高電圧直流電流に変換しても、電圧が減少することはなく、また壊れることもありませんでした。大電力の送電に適し、道路から電気自動車への給電や、宇宙で発電して電力を地上に届けるなどの試みなど、新たなテクノロジーに関連する領域でも、ダイヤモンド半導体の活用が期待されています。