周波数アジャイルレーダーの解析の簡素化

R&S®FSWシグナル・スペクトラム・アナライザと、R&S®FSW-K160RリアルタイムオプションおよびR&S®FSW-K6パルス測定オプションを組み合わせたものは、最新のレーダーのテストに最適です。

周波数アジャイルレーダーの解析の簡素化

課題

周波数アジリティー技術を採用したレーダーは、パルス単位で動作モードを短時間で変更することができます。これにより、以下のようなシステム動作機能を実現できます。

  • 大気効果、ジャミング、干渉、探知回避に対応するための周波数ホッピング手法
  • ターゲット分解能の向上のためのパルス幅または変調の変更
  • 距離のあいまいさを回避するためのスタッガーパルス繰り返しレート

このような高度なシステム動作に関しては、動的な条件で性能を検証し、不要なエミッションがないことを確認するために、徹底したテストが必要です。意図しないスペクトラムエミッションがあると、レーダーの効率が低下するだけでなく、不要なアーチファクトが生じる可能性もあります。不要なエミッションは、過渡現象や変調誤差、デジタルRF結合、非線形効果、パワーグリッチ、ハードウェア調整やクロック同期によるタイミング誤差によって生じます。このような一時的なスプリアス信号は、信号の高速性のために、従来のテスト機器では検出が困難です。

FSWの残光スペクトラム表示(下)からは、中心周波数イベントに異なるスペクトラムが存在することがすぐにわかる
図1:R&S®FSWの残光スペクトラム表示(下)からは、中心周波数イベントに異なるスペクトラムが存在することがすぐにわかります。これは、周波数掃引表示(上)の最大値ホールドトレースではほとんどわかりません。
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電子計測ソリューション

従来、不要なバンド内/バンド外スプリアス信号の探索には、掃引スペクトラム・アナライザが用いられてきました。R&S®FSWシグナル・スペクトラム・アナライザは、市販のスペクトラム・アナライザの中で最大のダイナミックレンジと最高速の掃引機能を備えていますが、従来の掃引解析のアーキテクチャー上の制約のために、発生確率が低い短いパルスイベントの表示には適していません。

図1の信号条件は、160 MHzスパンの周波数ホッピングシーケンスのスペクトラムを示します。比較のために、2つの表示が示されています。従来の掃引スペクトラム・アナライザと同様に、周波数掃引表示(上)には最大値ホールドトレースが示されています。掃引のパラメータは、50 kHz50 kHzの分解能帯域幅と、50 msの掃引時間に設定されています。5つのホッピング周波数が収集され、バンド内に何らかのスプリアスエミッションが存在するように見えます。

これに対して、R&S®FSW-K160Rのリアルタイム・スペクトラム・モードでは、最高600 000 FFT/sの速度で信号を解析できるので、160 MHz160 MHzのスパン内の最小1.87 μsの信号に対して、100 %の信号捕捉率(POI)を実現できます。図1の下の表示の残光表示スペクトラムは、リアルタイムモードのカラー・グラデーション・スケールを示しています。明らかに、この動作モードでは明確に異なるスペクトラム形状が低い頻度で発生しています。

このイベントのスペクトラムはその他のパルスと異なるため(図2を参照)、周波数マスクトリガ(FMT)機能を使用して信号を分離できます。必要な信号が分離されたら、スペクトログラム表示を使用することにより、このイベントが他の周波数ホップよりもはるかに広い帯域幅を占めていること、すなわち短いパルスであることがわかります。

FSW-K160R リアルタイム解析オプションにより、周波数マスクトリガによる信号分離が可能になる
図2:R&S®FSW-K160Rリアルタイム解析オプションにより、周波数マスクトリガによる信号分離と、スペクトログラムによる解析再生が可能になります。
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R&S®FSW-K6パルス測定オプションを使用すれば、捕捉したパルスをスペクトラム・アナライザの解析帯域幅内で詳細に解析できます。信号のスペクトラム、タイミング、変調、統計的特性の時間相関表示を使用して、100,000個以上のパルスを解析できます。パルス幅トレンド、結果テーブル、パルス位相/周波数など、関連するすべてのパルスパラメータを画面上に表示できます。

図3に示すのは、250 msにわたって捕捉した数百個のパルスに対するパルス測定結果です。左上のパルス幅トレンド表示から、パルス幅20 μsのイベントが128件、パルス幅1.0 μsのイベントが1件存在することがわかります。右上の結果テーブルで1.0 μsのパルスを選択すると、広帯域パルスが自動的に復調され、図3の下にあるパルス位相/パルス周波数表示に表示されます。これにより、1 μsパルスに関して、復調されたパルス波形が、パルスドCW信号から、多相パルス圧縮Barker 13波形に変化したことがわかります。これにより、このレーダーの分解能性能が繰り返しベースでは大きく変化しますが、それはごく短時間しか続きません。

必要な信号を分離するリアルタイムテクノロジーとパルス測定解析を組み合わせることにより、複雑なパルス信号の動作を容易に評価することができます。

FSW-K6 パルス測定オプションを使用することにより、広帯域パルスを完全に分離して解析できます。
図3:R&S®FSW-K6 パルス測定オプションを使用することにより、広帯域パルスを完全に分離して解析できます。
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まとめ

R&S®FSW-K160Rは、ローデ・シュワルツの最新のリアルタイム解析ソリューションです。最高性能のスペクトラム・アナライザ・プラットフォームR&S®FSWと組み合わせることにより、業界最高の表示平均雑音レベル(DANL)、位相雑音、測定帯域幅性能を実現します(最高50 GHzまで320 MHzの解析帯域幅)。

スケーラビリティーを目標に設計された新しいリアルタイム機能は、R&S®FSWシグナル・スペクトラム・アナライザのソフトウェアオプションであり、600 000 FFT/sに近い速度と、160 MHzの解析帯域幅で1.87 μsの信号に対する100 %のPOIは、業界の新しい性能標準になっています。

R&S®FSW-K6パルス測定オプションと組み合わせることにより、R&S®FSW-K160Rリアルタイム・スペクトラム・アナライザは、最先端のアジャイル・レーダー・システムの解析をシンプル化する最高のツールとなります。

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