電気設備の電力品質を測定する

背景

理想的な電源は、周波数が一定で振幅も変化しない正弦電圧波形を供給する電源です。しかし、日常の作業ではシステム負荷が変化し、過渡現象や停電が生じることがあるため、電源はこのような理想的な状況から外れてしまいます。回路の電力品質が良好であれば、システムに接続されている負荷は正常かつ効率的に動作しますが、 電力品質が不十分だと、電源回路に接続されている機械、電気制御システム、コンピューターに障害が生じてしまいます。

このようなことから、電力品質測定では、高調波汚染、無効電力、負荷不平衡に関して、実用的な電源がどの程度、理想に近い状態で動作できるのかを評価しています。

電力品質測定では、周波数、瞬断、フリッカー、高調波/次数間高調波電圧、ディップのような電圧変化、一時的な過電圧または急激な変化、電圧不平衡の測定が必要になります。EN 50160規格ではこのような測定向けに、公共配電系統による電気の電源電圧特性が定義されています。規格にはコンプライアンスリミットも含まれています(表を参照)。

電力品質の測定方法

R&S®Scope Rider RTH ハンドヘルド・デジタル・オシロスコープは、8種類の測定器が1つの堅牢なバッテリー駆動デバイスに統合されていて、このようなアプリケーションに最適なソリューションです。4つの入力チャネルはCAT IV 600 Vの定格によって絶縁されているので、安全性に妥協せずに、また、高価な高圧差動プローブを使用せずに、3相システムを測定できます。長時間のロギング機能と履歴機能も備えているので、EN 50160規格で要求される、変化速度の遅い信号や発生頻度の低いイベントをモニター/捕捉できます。静電容量式タッチスクリーンは設定を容易に調整でき、また、専用のキーによって重要な機能に短時間でアクセスできます。危険な場所での測定に対応するため、内蔵の無線インタフェースによる、タブレットコンピューターやスマートフォンからリモート操作も可能です。

高調波および力率

R&S®RTH-K34 高調波解析オプションにより、最大64次までの高調波を容易に測定でき、全高調波歪み(THDrおよびTHDf)を求めることができます。

AUTOSETを押すと、オシロスコープは自動的に10 Hz1 kHzの範囲内で基本波周波数を検出します。これにより、航空機のような専用電気回路の測定も可能になります。各高調波成分の振幅、位相、周波数の瞬時値を、測定開始以来の最大値とともに表示でき、 結果は、EN 50160またはユーザー定義リミットと比較することができます。

EN 50160コンプライアンスリミット
電源電圧
特性
統計的評価 コンプライアンスリミット
電力周波数 1週間の時間の
95 %
50 Hz±1 %
1週間の時間の
100 %
50 Hz–6 %~50 Hz+4 %
電源電圧変動 1週間の時間の
95 %
Vc± 10 %
電源電圧ディップ 1年 定義なし(指標値は1000ディップ/年
短い停電 1年 定義なし(指標値は数百回/年の短い停電)
長い停電 1年 定義なし(指標値は50回/年の長い停電)
一時的な過電圧 1年 定義なし
電源電圧
不平衡
1週間の時間の
95 %
<2 %
高調波電圧 1週間の時間の
95 %
THD<8 %
主電源信号電圧 1日の時間の
99 %
9 %(100 Hz)、
1 %(100 kHz)
自動リミットテストによる3相システムの高調波解析。
自動リミットテストによる3相システムの高調波解析。
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不要な高調波の要因を特定するには、個々の負荷の力率を測定する必要があります。オシロスコープの自動測定機能には、有効/無効電力の他に、力率の直接測定が含まれています。

自動測定機能による電子負荷の力率測定。
自動測定機能による電子負荷の力率測定。
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電圧の停止、グリッチ、変動

電圧の停止とグリッチは、パルス幅トリガによって簡単に検出できます。これは、測定パルス幅を定義された時間リミットと比較して、与えられたタイムインターバルよりも短時間または長時間のパルスを検出する、というものです。R&S®RTH-K15 ヒストリー/セグメント・メモリ・オプションと組み合わせれば、長期に渡って不要なイベントを捕捉/収集して、後でこれを解析できます。各収集に対してタイムスタンプが自動的に記録されるので、ユーザーは簡単に電気回路の障害と配電回路のイベントの相関をとり、問題の原因を特定することができます。

パルス幅トリガのような専用のトリガ機能により、電源電圧ディップなどの不要なイベントを識別できます。
パルス幅トリガのような専用のトリガ機能により、電源電圧ディップなどの不要なイベントを識別できます。
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効率的に電圧変動をモニターできるロガーモードなどを搭載しています。最大4つのオシロスコープ測定を任意に組み合わせて、最長23日間、結果を自動的にロギングできます。数時間、数日、数週間に渡る電圧や周波数、その他の関連測定の変動を簡単に把握できます。

まとめ

電源設備の電力品質の検証とトラブルシューティングには、さまざまな測定を行う必要があります。8種類の測定器が1台の堅牢なバッテリー駆動デバイスに統合されたR&S®RTH ハンドヘルド・デジタル・オシロスコープは、このようなアプリケーションに対応できる柔軟かつ高度なソリューションです。内蔵機能には自動力率測定や自動電圧測定の他にロギングも含まれおり、瞬間的または長期的な電圧変動を評価でき、 パルス幅のような拡張トリガ機能とR&S®RTH-K15 履歴オプションを組み合わせて、電圧ディップを記録できます。R&S®RTH-K34 ソフトウェアオプションにより、自動高調波解析も可能です。効率的に電圧変動をモニターできるロガーモードなどを搭載しています。最大4つのオシロスコープ測定を任意に組み合わせて、最長23日間、結果を自動的にロギングできます。数時間、数日、数週間に渡る電圧や周波数、その他の関連測定の変動が容易に明らかになります。