受信機テスト用の多数のレーダーエミッターをシミュレート
R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアとR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を組み合わせれば、シンプルかつ簡単にマルチエミッター環境をシミュレートできます。これにより、エンジニアはEW受信機の性能の検証と確認が可能です。
R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアとR&S®SMW200A ベクトル信号発生器を組み合わせれば、シンプルかつ簡単にマルチエミッター環境をシミュレートできます。これにより、エンジニアはEW受信機の性能の検証と確認が可能です。
レーダー警戒受信機は、早期警戒(EW)機器の核となる部分です。機器の主要なタスクは、航空機のパイロットに対する保護と警告、または、航空機や航空保安施設のような資産の保護です。機器の目的は、短時間でレーダー信号を検出、特定、識別することです。この目的のために、機器は受信信号とインストール済みのライブラリを比較します。このライブラリには、パルスの変調(MOP)、パルスの持続時間、キャリア周波数、パルスパターンなどの既知のエミッターのパラメータが記録されています。動作している状態では通常、非常に短時間で処理しなければならない多くの信号が存在します。そのため、動作している状態と危険な状態における受信レーダー信号の性質に関する知識が不可欠です。EW受信機の生産性と効率的なエンジニアリングを実現するには、マルチエミッターが存在する現実的かつ代表的なテスト環境をラボで確立して、高密度のマルチ信号環境に隠れている目的の信号をEW受信機が検出できる能力を実証することがきわめて重要になります。
6個のエミッターを用いたシナリオの例 | ||||
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番号 | 周波数(MHz) | PRI(μs) | パルス内/パルス間変調 | PW(ns) |
1 | 3042 ± 40 | 1755 | 9素子RFスタッガー | 353 |
2 | 3300 | 569~608 | 4素子PWスタッガー | 222~252 |
3 | 3150 | 973~1097 | 32素子PRIスタッガー | 400 |
4 | 2950 | 387~411 | 3素子PWスタッガー | 440/450/460 |
5 | 3200/3240 | 630 | 2素子RFオン/オフ: 15 ms/5 ms |
305 |
6 | 2900 | 577~677 | ランダムPRI | 500 |
マルチエミッターシナリオをシミュレートするために、エンジニアは、R&S®SMW200A ベクトル信号発生器とR&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアを組み合わせて使用できます。R&S®SMW200AにR&S®SMW-K306 マルチエミッター・オプションを搭載すれば、EW受信機テスト用の高度な最新レーダー信号シミュレーターを構築できます。エンジニアは、手軽なツールと大規模なシミュレーターのどちらかを選択して、EW受信機の開発サイクル全体に備えることができます。これにより、遅延、設計のリワークを回避することができ、コストと性能の最適なバランスを実現できます。レーダーエンジニアは、R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアを使用して、多くのレーダーエミッターを作成できます(表参照)。R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアはマルチエミッター信号をシミュレートし、それらを結合して信号出力ファイルに保存します。最適化された、優先度に基づく高度なインターリーブアルゴリズムを使用しています。以下のような利点があります。
パルス間変調およびMOPのあるエミッターの作成
レーダーは、スタッガーパルス、ランダムに変化するパルス繰り返し間隔(PRI)、スタッガーRF周波数(周波数ホッピング)などの特徴的なシグネチャーを備えています。パルスは、リニア周波数変調などの変調MOPを伴っている可能性があります。特に、低被探知(LPI: Low Probability of Intercept)レーダーは、MOPのパルス圧縮利得を利用して、パルスごとの放射電力を削減します。エミッターのシグネチャーが複雑、高速、高度になるほど、混在する多様なエミッターの中からEW受信機がそれを検出することがますます困難になります。R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアは、上の表に記載されているマルチエミッターシナリオ用のすべての特性をシミュレートできます。以下で使用されているテストケースの例では、表に記載されている6種類(1~6)のレーダーでシナリオが構成されています。本テストケースでEW受信機は、海岸線近くに配備された地上設置型の早期警戒レーダー(レーダー6)を、アクティブな民生ナビゲーションレーダー(レーダー1~5)と混在した状態で、検出する必要があります。
EW受信機は目的のレーダーエミッターを検出できるでしょうか?
ユーザー優先度に基づくエミッター信号のインターリーブ
エンジニアはRF信号源の数を最小限に抑え、出力されるレーダー信号を最大化する必要があります。個々のレーダー信号をインターリーブして、1つの結合信号を生成するのが適切な手法です。レーダーが高い密度で存在していると、パルスがオーバーラップしてパルスが重なり合った状態が生じるようになります。R&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアは、アルゴリズムを使用して信号をインターリーブし、パルス衝突に備えてパルスをドロップします。これは、最適化されたユーザー定義の優先方式に基づいて行われます。これにより、最小のドロップレートを実現できます。例えば、前述のレーダーエミッターはR&S®パルスシーケンサ・ソフトウェアによってインターリーブされ、その結果としてマルチエミッター信号が生成されます。上の図には、シミュレートされたパワー・レベル・トレースと6種類のシミュレート/インターリーブされたレーダー信号の時間変化が表示されています。複雑なEW受信機の働きを示すために、レベルトレースに示されたタイムインターバル(青い枠)の測定のスクリーンショットを下に示します。
受信機は、レーダーエミッター6を特定する必要がありますが、他のレーダーもすべて表示されています。EWコンピューターは、レーダーエミッター信号を処理する必要があります。レーダー1は、9つの値の中でRF周波数が10 MHzのステップサイズで変化しています。その結果、以下の図の周波数ステップ(緑のドット)が生じます。レーダー4は、パルス幅が3つの値の中で変化しています(3つの青いバー)。レーダー5は、2つの異なるRF周波数の間で、RFのオンとオフが切り替わります(緑の破線)。青い枠内によって、目的のエミッター(レーダー6)が強調されています。アンテナスキャンによって、このエミッターはパワー・レベル・トレースにレベルの異なるピークを持ちます。RF周波数2900 MHz(緑のバー)とパルス幅500 ns(青いバー)は、時間が経過しても一定です。EWコンピューターは、メインローブの外側の影響も考慮する必要があります。パルス幅や周波数が不適正なパルスが、いくつか検出されることがあります。これが生じるのは、受信機の帯域幅が大きく、さらに受信機のS/N比が低下している場合です。