マンチェスターおよびNRZベースのバスのトリガとデコード

多くのシリアルインタフェースは、マンチェスターまたは非リターンゼロ(NRZ)コード化を使用します。オシロスコープには通常、I2C、UART、CANなどの一般的な規格に対して通信インタフェースをデバッグおよびテストするための専用ソフトウェアオプションが用意されています。R&S®RTx-K50オプションを利用して、標準や独自のマンチェスターまたはNRZコード化バスのデコード機能を追加することにより、インタフェース標準の対応可能な範囲を拡張できます。これにより、デコード対象のプロトコル構造の設定のカスタマイズが可能になります。

R&S®RTx-K50オプション

課題

電子回路や電子システムを開発する際、エンジニアはバス通信が正しいかをテストします。テストは通常、2ステップで行われます。最初に、信号品質を目視検査で確認し、シリアル整合性の問題や、グリッチ、ラントなどの散発的な不規則性を特定します。2番目のステップで、データコンテンツが正しいかを開発エンジニアが確認します。CANやSPIなどの標準化されたバスの場合、コンテンツの解析には、通常、オシロスコープで実行されている専用のバス・デコーダー・ソフトウェアを使用します。このソフトウェアは、デコードされたデータを、取得した波形と時間相関させて表示するほか、CRCエラー、不正ヘッダーなどの誤ったプロトコル要素も示します。こうしたソフトウェアにより、通信インタフェースのテストが非常に効率化されます。Profibus PA、MVBなど、デコーダーオプションが利用できない通信規格を使用するインタフェース、または独自のプロトコル実装を使用するインタフェースをテストする場合は、手動でデコードするしかありません。これはエラーが発生しやすく、時間もかかります。

ローデ・シュワルツのソリューション

R&S®RTP、R&S®RTO、およびR&S®RTE オシロスコープ用のR&S®RTx-K50オプションは、任意のマンチェスターおよびNRZ通信プロトコルの自動デコードを提供します。デコードは、ユーザー定義のプロトコル構造に基づきます。自動デコードなので、インタフェースのテストにかかる時間が大幅に短縮されます。下の表に、R&S®RTx-K50オプションでサポートされている通信規格と実装特性の一部を示します。

通信規格と独自の通信特性の一部

コード化 通信規格
マンチェスター MVB、DALI、Profibus PA、
Foundation Fieldbus H1
マンチェスター独自 最大2 Gbit/s、違反ハイおよびロー、二相、3ステート、マンチェスターIおよびII
NRZ Profibus DP
NRZ独自 最大5 Gbit/s、クロック同期、非クロック同期
Profibus PA規格のマンチェスターコード化フォーマット
Profibus PA規格のマンチェスターコード化フォーマット
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アプリケーション

バス構成

デコードを有効にするには、テレグラムフレームを仕様に従って構成する必要があります。この方法については以下で、マンチェスターでコード化されたProfibus PAプロトコルの例に従って説明します。下の図に、この通信規格のテレグラムコード化を示します。

このバスの正しいデコードを、次の2つのステップで最適に構成できます。

  • プロトコルデコード構成:正しいコード化標準、正しいバス極性、およびデコードしきい値とビットレートを設定します。適切に設定すると、テレグラムは記述されていないビットで正しくデコードされます(図1および2)。
  • プロトコルフレームの設定:個々のプロトコルセルを定義します。Profibus PAは、プリアンブルと開始区切り記号で始まります(下の図を参照)。"Frame Format" ダイアログでこれを定義すると、図3に示す結果が得られます。以下の表に、可能なフレームセルの定義を示します。

可能なフレームの定義

説明
固定セル配列
可変セル配列
固定セル配列、例えば固定フレームIDの場合
マンチェスター違反H、L(ハイ、ローのまま)、マンチェスターIIでは反転
図1:プロトコル・デコード・オプションの設定。
図1:プロトコル・デコード・オプションの設定。
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図2:記述されていないビットによるプロトコルデコード。
図2:記述されていないビットによるプロトコルデコード。
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図3:部分的に定義したProfibus PAフレーム(プリアンブル、開始区切り記号)が表示された、プロトコルフレームのダイアログ。テレグラムの残りの部分は、フレームダイアログにまだ記述されていません。
図3:部分的に定義したProfibus PAフレーム(プリアンブル、開始区切り記号)が表示された、プロトコルフレームのダイアログ。テレグラムの残りの部分は、フレームダイアログにまだ記述されていません。
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マンチェスターおよびNRZコード化
マンチェスターおよびNRZコード化
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マンチェスターおよびNRZコード化

マンチェスターコード化は、各データビットのエンコードに少なくとも1つの遷移があるラインコードです。結果として、マンチェスターコード化されたバスにはDC成分がなく、自己クロック方式をとります。対照的に、NRZコード化では、1つの状態は正の電圧などの有意状態で表され、もう1つの状態は負の電圧などの別の状態で表されます。NRZコード化バスには休止状態がないため、追加のクロック方式メカニズムまたは別のクロックが必要になる場合があります。

Profibus PAベースのトリガを設定するには、トリガメニューを開き、チャネルを選択して、特定の状況に適したトリガ条件を選択します。使用可能なトリガイベントは、フレームの開始、および特定のテレグラムパターンでのトリガです(図4)。

すべてのデコード済みテレグラムの完全な概要を示したデコードテーブルを使用すると、デバッグをさらに簡素化できます。R&S®RTx-K50オプションを搭載すると、R&S®RTP、R&S®RTO、およびR&S®RTE オシロスコープを使用して、任意のマンチェスターまたはNRZコード化バスのバス・デコード・セットアップが短時間に効率よく行えます。

図4:シリアル・パターン・トリガ機能が表示されたトリガ設定ダイアログ。Profibus PAテレグラムのデータフィールド内の特定トリガでトリガするように機能を設定。
図4:シリアル・パターン・トリガ機能が表示されたトリガ設定ダイアログ。Profibus PAテレグラムのデータフィールド内の特定トリガでトリガするように機能を設定。
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