ローデ・シュワルツのソリューション
R&S®RTOおよびR&S®RTP オシロスコープは、最大6 GHz/8 GHzの周波数のRFパルスを解析できます。パルス解析の最も重要な機能は、デジタルトリガです。デジタルトリガは、アナログトリガと比較してトリガ感度がはるかに高く、アドバンスド・トリガ・タイプに対する帯域幅制限がありません。RFパルスを解析するには、トリガが、常にパルスに対して同じ位置に現れる必要があります。例として、パルスの持続時間が25 µs、PRIが50 µsのパルス列を使用します(下のスクリーンショットを参照)。ズームにより、トリガ位置(t=0 s)の3番目のパルスをより詳細に表示します。
この収集には、パルス幅トリガが使用されています。トリガセットアップ(『オシロスコープを使用したレーダーRFパルスのトリガ』 - アプリケーションカード、PD 3609.2000.92 Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG)とエンベロープ解析(『オシロスコープを使用したRFレーダーパルスの解析』 - アプリケーションカード、PD 5215.4781.92、Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG)については、個別のドキュメントで説明します。変調シーケンスを解析するため、水平スケールを14 µs/divに設定し、3つのパルスを捕捉します。
パルスを復調します。サンプルパルス列は周波数変調されており、復調には、オシロスコープの自動周波数測定の1つを使用します。この測定とトラッキング機能を併用すると、周波数の結果が時間の関数として表示されます。この方法は、車載用レーダーなどの広帯域レーダー信号に適しています。キャリア周波数が占有帯域幅に対して大きい(fC >> fB)ATCレーダーなどの狭帯域信号の場合は、トラッキング機能により、かなり大きなノイズが発生します。このノイズによってチャープレート測定の確度が制限されるため、さらなるノイズリダクションが必要です。
信号のノイズリダクションは簡単ではありません。キャリア周波数が変化するため、単純なバンドパスフィルターは使用できません。フィルター帯域幅をかなり大きくする必要があります。従来のコヒーレント・レーダー・システムでは、1つの安定化局部発振器をRX経路とTX経路で共有しています。オシロスコープの場合、この信号が利用できないため、局部TX発振器を使用したダウンコンバージョンは不可能です。信号を復調するもう1つの方法が、フェーズロックループ(PLL) 1)の利用です。
1) Mark A. Richards、2013年、『Fundamentals of Radar Signal Processing(レーダー信号処理の基礎)』、 第2版、McGraw-Hill Companies
R&S®RTOおよびR&S®RTP オシロスコープには、PLLと同等のソフトウェアベースのクロック・データ・リカバリー(CDR)があります。この自動測定機能を使用すると、データレートは基本的にパルスの瞬間周波数を測定します。データレートのトラッキング機能をオンにした場合、瞬時周波数が経時的に表示されます(最初のスクリーンショットの右側にあるTrack 2を参照)。データレート機能を使用しているため、表示されるトラッキングの垂直軸単位はギガビット/秒(Gbps)です。ビット周期と正弦波周期が同じであるため、これはGHzと等しくなります。
ダイアグラム1(最初のスクリーンショットの上部)の、3パルスのパルス列内に、ダウン-アップ・ダウンチャープの変調シーケンスが表示されています。より詳細な解析のため、ズームウィンドウ内のトラック上のカーソルを使用して、チャープレートを測定することができます。パルスの周波数変化が経時的に測定されます。例のCursor Results 1(最初のスクリーンショットの右下)では、ダウンチャープの場合、25 µsで10 MHzと表示されています。